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虎
15 アライグマが拾って来た
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美しい顔の少年であった。死にかけていたが、ギリギリ持ち直した。あの怪我で生きているとは、神の采配だろうか?
質の良い服を着ているが、貴族の子供のようにひょろひょろでもない、平民として働いて来た手をしていた。
「あ……」
何日も寝込んで起きた時は、やはりここが何処だか分からない様子でキョロキョロしている。
それはそうだろう!この人攫いのギアナ様のベッドの上だったんだから!
「ふん、起きたか」
近づくと、ブルブル震えていた。そりゃそうだろうな!よく見ると髪の毛は少し金が混じったような茶色だが、瞳の色は緑だ。悪くない。
「オレはギアナ。お前は?」
「り、リト……」
答えた。声も悪くない。しかし
「生き延びたは良いが、欠損は高く売れないな」
リトの左手は薬指と小指が無かった。
「あ、あああ……」
思い出したかのように、泣き出す。
左手を押さえて、ポロポロと涙をこぼす顔は哀れだった。
「痛い……痛いよう……」
斬られた後も酷かったが、失った指の方が……きっと心が悲鳴を上げたんだろう。
茶色頭を撫でてやる。緑の目がくしゃりと歪んで大きな声で泣き始めた。
「うわああーーーーん!」
泣くがいい。今は。泣いて泣いて、痛みが少しでも外に流れ出すと良い。
リトはしばらくすると、泣きながら眠ってしまった。心配そうに女達が覗いていたが、手を振って戻らせた。
俺の膝の上で丸まって眠る人間のリトはとても可愛らしかった。
早く良くなるといいな。
次の日の朝早くリトは目を覚ました。朝日は登っていたので、辺りを見回してびっくりした。
自分の横に大きな白い虎が眠っていたんだからな。
うわ!
声には出さなかったが、酷く驚いていた。こんな大きな動物のそばで寝ていた事は1度もなかったらしい。
そっと覗き込むと、鼻がひくひく動いたりしているので、生きている事がわかったと言った。
すっと大虎の目が開いて青い色が見えた。
「ひ!」
声を詰まらせるリト。俺は首を傾げてから、ぶるりと身を震わせた。はは!誰だか分からないんだな?
すると虎の体はどんどん細くなり、人と同じ姿に変わる。
「うわ……!」
「リトは獣人は見た事ないのか?」
「じゅう、じん?」
俺が暮らしていた所にはいなかったと言う。
「人の姿と獣の姿、両方になれる。人になった時でも耳や尻尾は残るがな?」
ぶんぶんと太い尻尾を振り回してみる。虎の尻尾だ。
「リト、大丈夫か?」
「え?あ、はい……」
「川から流れて来たお前をアライグマが拾って帰って来たんだ。一応手当はしたが、生死の境を彷徨った」
心配そうに俺の顔を覗き込む。
「もう死なないとは思うが、人間は獣人に比べて死にやすい。痛い所は?」
「胸と……手が痛いです……」
欠けた左手。指輪を奪う為だと斬られた。思い出して来て震えが来ている。よっぽど怖かったんだろう。
「怖い目にあったんだな……可哀想に」
俺は、優しくリトを抱き寄せた。
質の良い服を着ているが、貴族の子供のようにひょろひょろでもない、平民として働いて来た手をしていた。
「あ……」
何日も寝込んで起きた時は、やはりここが何処だか分からない様子でキョロキョロしている。
それはそうだろう!この人攫いのギアナ様のベッドの上だったんだから!
「ふん、起きたか」
近づくと、ブルブル震えていた。そりゃそうだろうな!よく見ると髪の毛は少し金が混じったような茶色だが、瞳の色は緑だ。悪くない。
「オレはギアナ。お前は?」
「り、リト……」
答えた。声も悪くない。しかし
「生き延びたは良いが、欠損は高く売れないな」
リトの左手は薬指と小指が無かった。
「あ、あああ……」
思い出したかのように、泣き出す。
左手を押さえて、ポロポロと涙をこぼす顔は哀れだった。
「痛い……痛いよう……」
斬られた後も酷かったが、失った指の方が……きっと心が悲鳴を上げたんだろう。
茶色頭を撫でてやる。緑の目がくしゃりと歪んで大きな声で泣き始めた。
「うわああーーーーん!」
泣くがいい。今は。泣いて泣いて、痛みが少しでも外に流れ出すと良い。
リトはしばらくすると、泣きながら眠ってしまった。心配そうに女達が覗いていたが、手を振って戻らせた。
俺の膝の上で丸まって眠る人間のリトはとても可愛らしかった。
早く良くなるといいな。
次の日の朝早くリトは目を覚ました。朝日は登っていたので、辺りを見回してびっくりした。
自分の横に大きな白い虎が眠っていたんだからな。
うわ!
声には出さなかったが、酷く驚いていた。こんな大きな動物のそばで寝ていた事は1度もなかったらしい。
そっと覗き込むと、鼻がひくひく動いたりしているので、生きている事がわかったと言った。
すっと大虎の目が開いて青い色が見えた。
「ひ!」
声を詰まらせるリト。俺は首を傾げてから、ぶるりと身を震わせた。はは!誰だか分からないんだな?
すると虎の体はどんどん細くなり、人と同じ姿に変わる。
「うわ……!」
「リトは獣人は見た事ないのか?」
「じゅう、じん?」
俺が暮らしていた所にはいなかったと言う。
「人の姿と獣の姿、両方になれる。人になった時でも耳や尻尾は残るがな?」
ぶんぶんと太い尻尾を振り回してみる。虎の尻尾だ。
「リト、大丈夫か?」
「え?あ、はい……」
「川から流れて来たお前をアライグマが拾って帰って来たんだ。一応手当はしたが、生死の境を彷徨った」
心配そうに俺の顔を覗き込む。
「もう死なないとは思うが、人間は獣人に比べて死にやすい。痛い所は?」
「胸と……手が痛いです……」
欠けた左手。指輪を奪う為だと斬られた。思い出して来て震えが来ている。よっぽど怖かったんだろう。
「怖い目にあったんだな……可哀想に」
俺は、優しくリトを抱き寄せた。
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