【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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25 逃げたカレン達は3

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トントン、トントン、トントン!

 ノックの音で目が覚めた。誰かが
扉を叩いている。反射的に扉に近づこうとして、カレンはハッとした。

 ここは、家じゃない!そしてお母様の実家のお屋敷でもない!

トントン!トントン!ノックの音はまだ響いている。カーテンの隙間から見える空はまだ薄暗く夜が明けたかどうか、その位だ。

 誰?行商人のおじさん?確かに朝に迎えに来るって言っていたけど、今はもう朝なの?

 トントン!トントン!ノックの音は大きく、そして早くなる。苛立っているように聞こえる。

怖い。

 弟達はまだ寝ていた。

どうしよう。行商人のおじさんだったら?起きなかったら置いていかれる?それは嫌だ。でも違ったら??

 悩むカレンの耳に、窓の外から小さい話し声が聞こえて来た。足音を忍ばせて、そっと窓の下に張り付いた。

「起きているか?」

「寝てるだろうよ、踏み込んじまえよ」

「騒ぎは面倒だ……あんな上玉三匹、怪我させたら値が下がるだろ」

「通報もされたくねぇしな」

 ひっ!出そうになった悲鳴を押し殺した。

「親から逸れたガキなんて、誰も探しゃしねーよ」

「あの男は、違うのか?」

「そうだとしても、やっちまえばいい」

 やっちまう……?!もしかして行商人のおじさんを殺しちゃうってこと?!どうしよう!お屋敷から追ってきた人とは違う気がする!怖い!怖いよ!お母様!お兄様!

 扉はイライラと鳴り続けたが、恐怖のあまりカレンは動けなかった。



「おーい、おじさんだよー?」

 トントン、と軽いノックがした。

「カレン?おじさんだよ?」

 間違いない、行商人のおじさんだ。カレンはそっとドアを開ける。

「どうした、ひどい顔だ」

 迷ったが、カレンは今朝あった事を全て話した。ザザとシュルにもだ。こんな事を話したくはないけれど、1人で抱え込んではいられなかった。

「……人攫いかも知れない。お嬢ちゃん達は可愛いから目をつけられたのかも。素早く辻馬車に乗ろう。馬車で逃げてしまえば大丈夫だろう。でも俺もあんまり関わるとやばいか」

「ごめんなさい、私達が頼ったばっかりに」

 行商人は笑った。

「まだ何も起きちゃいないし、俺は最悪逃げる事だって出来る。気にするな。しょうがないだろう!お前のかーちゃんのりんごパンが美味かったんだから!……でも次でお別れしておこうかな?俺も腕が立つ方じゃねぇからな!」

「ありがとう、おじさん」

 朝食もそこそこに、4人は南の街へ向かう馬車に飛び乗った。



「おらぁ!降りろ!」「痛い目見たくなかったらなぁ!」

 行商人は選択を誤ったと思う。でもこうしなければ、一生後悔したかもしれない。

 飛び乗った馬車は確かに南行きだった。

 だが、客は自分たちしかおらず。乗った瞬間に走り出したのもおかしかった。

ほんの少しだけ街道を走ったと思うとすぐに逸れ、4人の男に取り囲まれた。

「簡単に引っかかってくれてありがとうよ!」

 辻馬車の御者を脅して入れ替わっていたらしい。そんなの俺達にわかる訳がない!

「なかなか高値で売れそうなガキだ」

「どれも金持ち貴族が可愛いがってくれるだろうよ!」

 俺達は全員ガタガタと震えるしかなかった。

「おじ、おじさん、おじさんはにににげて、わた、私たちが目的み、みたい、だから」

 歯の根が合っていない。勿論そうしたいが

「お、俺も、腰抜けて、だ、だめだ」

 情けないがこんな事長いこと行商やってるけど初めてだ。帰りたかったな……家に。年取ったかーちゃんが待ってるんだよな。

 諦めて目を閉じて時、遠くから馬の蹄の音が聞こえて来た。

「お前ら!そこで何をしている!!」

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