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虎
24 無事でいて1
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「荷物は?」
「いりません!」
「ではすぐに出発しよう」
私はリリーとリンの背中を押して、馬車へ乗せた。
「まず、街の辻馬車乗り場へ。騎士達に街を探索させています。何か情報が得られると良いのですが」
御者がピシャリと鞭を入れ、馬車は動き出す。がくんと大きく揺れ、リリーは末娘の体をしっかり押さえた。
「おかーさま、みんなは?」
「大丈夫よ、リン。少し先にお爺ちゃまのお家に向かったみたい。エイム様が私達を送ってくださるんですって」
「わーい!ありがとう、エイムさま。早くおにーさまに会いたいなー。ずっとご用で会えなかったのよ。エイムさまもおにーさまに会いたい??」
子供の言葉は素直で時として残酷だ。私は言葉をつまらせかけたが、まだ何も知らないリンに笑いかけた。
「ああ、そうだね。会いたいよ」
会って謝りたいが……それができる可能性は低いだろうと思っている。
剣で斬られて、指輪を奪うためにあの職人の指を切っただと?あり得ない、あり得なさすぎる上に……川に捨てた。そう言った。
なんて事を、なんて事を!あの子が何をしたと言うのだ。リトはただ……とても美しく、とても素晴らしい職人であり、有能な魔法使いであり、さらに頼れる長男であるだけではないか。
出来れば妻に。断られたら専属の職人でも良い。それも断られたら、王宮魔法使いでも良かった。
それも断られてもリリーの後ろ盾に私が成れたら、そう思ったのに。
まさかこんな事になるとは。
「……心労をかける」
リリーは首を振った。
「私は、心のどこかで信じていた……信じていたかっただけなのかも知れません。私が追放されるまでの家族を信じたかったのです。そしてそれは間違いだと……大切なものを失ってから気づかされました」
リンを抱きしめる手に力が入るのが見て取れる。
「あの人達は、私の家族ではなかった。私の家族は子供達とルシリア伯爵なのです……もう2度と間違えません、リトはそれを教えてくれたんです」
「リト兄様は頭が良いからねえ!」
無邪気に笑うリンに微笑みを返しながらリリーは気丈に振る舞い続ける。彼女が泣くのは子供達全員の安否が確認されてからだろう。
街から追われた彼女は、泣いたところで何も解決しないという事を身をもって知っている。そして泣く前にする事があることも。
辻馬車乗り場のそばにつき、情報が入ってくる。
「昨日、男達に追い立てられ、逃げ回るリトを何人も見かけたようです」
「山の方に手がかりがないか探してくれ」
「はっ!」
「カレン嬢と双子の弟は、辻馬車に乗ったようです。乗る前に行商人と話していたのを見ているものがおりました」
「ご苦労、続けてくれ」
騎士達はテキパキと情報を収集してくる。
「どうやら、来た道を辿っているようです。かしこい子達だ。行商人と会話をしていたと聞きました。何か覚えはありますか?」
まずは冷静に子供達を追わなければならない。些細な情報も大切だ。
「……くる途中、辻馬車でパンを配ったんです。そのパンをとても気に入ってくれた行商人がおりました。その方がもしれません。年の頃は……」
記憶を探って髪の色、歳と背格好を伝える。どうも同一人物のようだ。
「間違いなさそうだ。乗った時間を考えると次の次の街で止まっただろう。そこから、今朝には南に向かう辻馬車に乗り込んだと考えられる。何人か馬で追いついてくれ。私達は後から行く」
「分かりました!」
三名ほど馬に飛び乗り駆け出した。
「リリー。私達とカレンは大体1日分くらいカレンが先行している。差を詰めたくても夜通し駆けるわけにもいかない……済まない」
「いいえ。夜中は危険だと言うことはよくよく存じておりますから」
夜の闇は恐ろしい。何が紛れているか分からない。早く追いつきたいが、その為に取り返しのつかない事になってはいけない。
焦る心をそっと押さえつけて眠れない夜を過ごした。
「いりません!」
「ではすぐに出発しよう」
私はリリーとリンの背中を押して、馬車へ乗せた。
「まず、街の辻馬車乗り場へ。騎士達に街を探索させています。何か情報が得られると良いのですが」
御者がピシャリと鞭を入れ、馬車は動き出す。がくんと大きく揺れ、リリーは末娘の体をしっかり押さえた。
「おかーさま、みんなは?」
「大丈夫よ、リン。少し先にお爺ちゃまのお家に向かったみたい。エイム様が私達を送ってくださるんですって」
「わーい!ありがとう、エイムさま。早くおにーさまに会いたいなー。ずっとご用で会えなかったのよ。エイムさまもおにーさまに会いたい??」
子供の言葉は素直で時として残酷だ。私は言葉をつまらせかけたが、まだ何も知らないリンに笑いかけた。
「ああ、そうだね。会いたいよ」
会って謝りたいが……それができる可能性は低いだろうと思っている。
剣で斬られて、指輪を奪うためにあの職人の指を切っただと?あり得ない、あり得なさすぎる上に……川に捨てた。そう言った。
なんて事を、なんて事を!あの子が何をしたと言うのだ。リトはただ……とても美しく、とても素晴らしい職人であり、有能な魔法使いであり、さらに頼れる長男であるだけではないか。
出来れば妻に。断られたら専属の職人でも良い。それも断られたら、王宮魔法使いでも良かった。
それも断られてもリリーの後ろ盾に私が成れたら、そう思ったのに。
まさかこんな事になるとは。
「……心労をかける」
リリーは首を振った。
「私は、心のどこかで信じていた……信じていたかっただけなのかも知れません。私が追放されるまでの家族を信じたかったのです。そしてそれは間違いだと……大切なものを失ってから気づかされました」
リンを抱きしめる手に力が入るのが見て取れる。
「あの人達は、私の家族ではなかった。私の家族は子供達とルシリア伯爵なのです……もう2度と間違えません、リトはそれを教えてくれたんです」
「リト兄様は頭が良いからねえ!」
無邪気に笑うリンに微笑みを返しながらリリーは気丈に振る舞い続ける。彼女が泣くのは子供達全員の安否が確認されてからだろう。
街から追われた彼女は、泣いたところで何も解決しないという事を身をもって知っている。そして泣く前にする事があることも。
辻馬車乗り場のそばにつき、情報が入ってくる。
「昨日、男達に追い立てられ、逃げ回るリトを何人も見かけたようです」
「山の方に手がかりがないか探してくれ」
「はっ!」
「カレン嬢と双子の弟は、辻馬車に乗ったようです。乗る前に行商人と話していたのを見ているものがおりました」
「ご苦労、続けてくれ」
騎士達はテキパキと情報を収集してくる。
「どうやら、来た道を辿っているようです。かしこい子達だ。行商人と会話をしていたと聞きました。何か覚えはありますか?」
まずは冷静に子供達を追わなければならない。些細な情報も大切だ。
「……くる途中、辻馬車でパンを配ったんです。そのパンをとても気に入ってくれた行商人がおりました。その方がもしれません。年の頃は……」
記憶を探って髪の色、歳と背格好を伝える。どうも同一人物のようだ。
「間違いなさそうだ。乗った時間を考えると次の次の街で止まっただろう。そこから、今朝には南に向かう辻馬車に乗り込んだと考えられる。何人か馬で追いついてくれ。私達は後から行く」
「分かりました!」
三名ほど馬に飛び乗り駆け出した。
「リリー。私達とカレンは大体1日分くらいカレンが先行している。差を詰めたくても夜通し駆けるわけにもいかない……済まない」
「いいえ。夜中は危険だと言うことはよくよく存じておりますから」
夜の闇は恐ろしい。何が紛れているか分からない。早く追いつきたいが、その為に取り返しのつかない事になってはいけない。
焦る心をそっと押さえつけて眠れない夜を過ごした。
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