【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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海へ

41 王の工房

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「あの!あの!どこへ行くんですか!ここはどこですか?!」

「工房だ。ここは私の宮殿だよ、リト」

「宮殿……?」

 ついて行くのに必死で、周りを見る余裕があまりないが、建物はとても立派だ。壁はどこも白が基調であちこちにガラスの窓がはまっていて……外はやはり海だ。所々に大きなガラス窓があり、外は魚が泳いでいる!

「も、もしかしてここは海の中なんですか?!」

 俺を引きずるように引っ張っていた男は一瞬足を止めた。

「当たり前だろ」

 当たり前ってなんだよ。なんだか感じの悪い人。それに工房ってなに?何でそんな所に俺が行かなきゃならないんだ。

「あの、俺、帰りますから!」

 あからさまに嫌な顔をされた。

《いいから、工房へ行くんだ》

「はい」

 なんだこれ!足が勝手に動き出す。歩幅の広いこの人の後ろを走って追いかける形になる。どうして、いう事を聞いてしまうんだろう!この人なんなんだ!

 かなり下へと降りて来たと思う。そして両開きの扉を開けて驚いた。

「うわぁ」

 中は確かに工房だった。真っ赤なガラスが焼け、ガラスの塊が作られる。中では何人もの人が働いていた。

「さあ、ガラスを作るんだ」

「え?どうしてです?」

 俺は聞き返す。意味が分からない。

「君はリトだろう?私がそう望んだんだから作るんだ」

「何でですか?」

「私が王だからだ」

 うーん、話の通じないタイプの人だ。困ったな。

 俺が何と言っても断ろうかと考えていると、中でも働いていた人達全員が作業をやめてこっちに向かってきた。

「家に帰してくれ!」

「もうこんな所で働きたくない!」

「もう嫌だ!!」

 えっ?!どう言う事?!これってかなりまずい事になっているんじゃない?!俺!

「黙れ!お前ら。王である私の為に働く事になんの不満があるというのだ。早く元の場所に戻るが良い」

 さも当然と言わんばかり。ああ、この人。駄目な奴だ。

「お前は!俺たちの王様じゃねぇ!」

「魚のくせに!」

「地上に帰せ!こんな所いたくねぇんだよ!」

 工房と呼ばれる場所で働いていたのは6人。人間や獣人だ。対して自分の事を王と言うこの人は1人だけ。
 
「お前を倒して帰る!」

 物騒なことになってきた。

「出来るのか?ただの地上の諸人風情が?海で我らが一族に敵うとでも思っているのか??」

「うるせぇ!!」

 1人が殴りかかった時だった。


《跪け》

 
 かくん、全員の足から力が抜けて床に座り込んだ。何これ?!

《王に逆らうことは出来ぬ。作業に戻れ》

  誰も何も言わずに、工房に戻って行った。ただ、目だけは悔しそうにギラギラしている。間違いない、何かの力で無理やり従わされているんだ!俺も含めて。

「リトもガラスを作るんだ。もっと透明で質の良い物を。私の宮殿を美しく飾るためのガラスを」

「無理です。俺は作れません」

「何故?」

「ここはどうやら海の中なんでしょう?俺の相棒が動きません。だから、俺はガラスは作れません」

 サラやんが顔も出さない。炎の精霊のサラやんは水が苦手だ。こんな場所で出てこない。

「工房があるではないか」

「俺はサラやんと一緒じゃないと作業出来ません」

《良いからやれ》

「はい」

 俺の口は勝手に返事をし、手足は勝手に動き出し、工房の中に入って行った。


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