【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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海へ

40 俺、この人苦手だ

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「あれ……ここは……?」

 俺はベッドの上で目を覚ました。明るい部屋だ。上半身を起こして見回すと、不思議な部屋だった。
 多分、魔力で光るランプが灯されている。その光で部屋は明るい。大きな窓があり、外の様子が見えるけれど

「?!」

 窓の外に魚が泳いでいる!水の中なの?!良く見たくてベッドから降りる。両足を床につけようとして違和感を感じた。

「あ、あれ……?」

 左足に輪っかがはまっている。そして鎖がついている。

「あれ……?何これ……?」

 そう言えば俺ってば、たこ足みたいなのに絡まれて海の何に引っ張り込まれたんだった!

 沈んでいく時に見上げた海面越しの太陽が青くて、キラキラしていて……新しい作品を見せた時のギアナ様の目みたいだな、なんて思ってなかったぞ!

「そう言えば、俺が海に落ちたのギアナ様は見てたかも!心配してる!」

 窓の外が気になるとか言ってる場合じゃなかった!早く帰らないと!

「ねぇ」

 俺は後ろから声をかけられた。振り返ると、半分開いた扉に寄りかかって、背の高い男の人が立っていた。
 
 青い髪に金色の目。何か楽しい事があったのか、口元は笑みの形。

「お前、リト?」

「そ、そうですけど。あの?」

 名前を聞こうとしたが、彼は持ち上げた右手の隙間から、ちゃらり、と紐についた何かをぶら下げた。

「お前がこれのリト?」

 いつの間にか無くなっていた家族でお揃いに作ったガラスのペンダントだ。

「え?あ、それ。多分俺のです」

 川で大分擦れたのか傷がたくさん見える。男の人は近くまで来ると、俺の右手にペンダントを乗せた。紐と留め具は俺がぶら下げていた時のものより数十倍はお高そうな立派なものに替えられていたが、本体の青を溶かし込んで、グラデーションをかけて、名前を掘り込んだこの細工は俺がやった事に違いない。

「うん、間違いなく俺のです。拾ってくださったんですか?結構前に無くしたんです」

「それを作ったのは君?」

「え?え、と」

 そうです、と答えそうになったが、頭の隅で虎が吠えた。

 リトの技術は……もしかしたら、あまり知らせない方がいいのかもしれない。俺の所で売っているアクセサリーは作者を伏せているが……。

 言わない方が良いのかも。

「えーと……」


《ねぇ、それを作ったのは、君?》

「はい、そうです」

?!
言わないつもりだったのに、口が勝手に動いた気がした!なに?!今の??

「あはーっ!やったー!とうとう当たりだ!本物のリトをついに引いたぞー!さあ、こっちだ!《鎖は外れている》」

 男の人は空いている俺の左手を取って走り出す。

「わ!わわ!」

 この人、俺よりかなり背が高い!だから足が長い!だからだから歩幅が広いんだ!
 必死で足を動かさないと、引きずられてしまう!

「待って、待って下さいー!」

 俺、この人苦手だ。



 
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