【完結】愛する親友とゲーム転生をしたのに捨てられ賢者の俺は元魔王に愛されすぎてつらい

鏑木 うりこ

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ゲームの世界へ転生召喚?

18 まっすぐな朝チュン

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 ぱっちり、俺は目を覚ました。なかなか清々しい朝だ。太陽は明るいし、気持ちの良い風が入ってくる。
 外からは小鳥のチュンチュンという声も聞こえてくる。
 そして俺はベッドに寝ている。首を回せば隣に元魔王。でかいベッドに2人、お行儀良く並んですやすや眠っていたようだ。
 抱きつかれてーとか、腕枕ーとか何もなく。2人仲良くお揃いのパジャマなんか着て、普通に!縦に!並んで!寝ていた!!
 元魔王マジ寝相良すぎ。俺もね。

 ただし、部屋の中はひどい有様で、カーテンは破れほとんど無くなっていたし、窓もあちこち割れて心地よい風というか隙間風がぴゅーんと吹き荒ぶ。
 ベッドのみ無傷だが、飾ってあった調度品はバッキバキ。本棚の本は散らかりまくり、机は傷だらけ。

「一体何が……まさかこいつ寝相の悪さが周囲に飛び散るタイプの魔王なのかなあ?」

 そんなタイプあるかどうか知らないけど。

 隣からやけに可愛い

「うにゅ……」

 と聞こえて来て、半目のフィオールが天井を見てボケーっとしている。あ、朝弱いタイプですね。ちょっと可愛いじゃないか。
 桐生は朝からぱっちりの血圧が高いタイプなので、お布団の中でゴロゴロしない。このお布団の至高を分かち合えないのはとても残念だったっけ。

嫌われちゃったけど……辛い。

 ずーっと天井を見ているので顔の前で手を振ってみる。両手で布団を持ったまま、首だけ捻ってこっちを向いた。

「シュウたんが横にいる。マジかな、夢かな?」

 こいつ思考が俺に似てんな!……嫌いになれないタイプだ……ちくしょう!

「きっと夢だ。寝ようぜ」

「……そうか。はやく嫁になんないかなー」

「なると良いなー」

 スャァって寝てしまった!何こいつ!面白い!

 しばらくまどろんでいると、メイドさんが扉をノックする。

「フィオール様、シュウ様、そろそろ朝食などいかがでしょうか?」

 扉を開けたメイドさんは朝食の入ったワゴンを押して来て……巧みに瓦礫を避け、惨状な部屋の中からテーブルを発掘、椅子も2脚取り出して、テーブルクロスを引いた。テキパキと普通の朝食を並べて

「掃除は後で参ります」

 と、何事も無かったように出て行った。な、なれてるの??

 むくり、と上半身を起こしたフィオールに聞いてみる。

「こういうの、良くあるの?」

「良く、ではないがたまにはあるかな」

 メイドさんが置いて行ったであろう底の厚い靴を履き、セットされた椅子に座った。

「名が売れると面倒事もあるという事だ」

 何でもない風に椅子に腰を下ろしながら言う。魔王も大変なんだなぁ。もしかして桐生もこんな目に合っているんだろうか?寝れないじゃないか?!

「桐生は無事かな……?」

「まだ大丈夫だろう。キュリオにはベルローズが付いているし、しばらくは私の方に煩い奴らは来るだろうし」

 何の肉でなんの卵かわからないが、ベーコンエッグをきれいにナイフで切り分けながら、フィオールは言う。

「どうして?」

「元魔王の私を陣営に引き入れたいからさ。基本、元魔王と現魔王は仲が良くないはずだからね」

 何せ、奪った者と奪われた者だ。仲が良いはずが無い。

「私は別にキュリオの事は嫌いでは無いし、また魔王になりたい訳でも無い。ついでにいうと権力にもあまり興味がない」

 つい、と行儀悪くフォークを振った。

「シュウがキュリオを倒して魔王になりたいのなら喜んで協力するがな?」

「やだよ!」

「魔王シュウも可愛いのではないかな?!むむ!新しい可能性!」

「そんな可能性ない!」

 俺は魔王にはならないよ!ぶすりと分厚いベーコンにフォークを突き刺してガブっと噛み付いた。

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