【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ

文字の大きさ
7 / 64

7 騎士団長ヴィッツの「契約」

しおりを挟む
「おお、おおおお!騎士団長ヴィッツ!宰相を、ローランドをとめよ!!」
「その事に関しまして、私からも陛下にお話がございます」
「なんだ、早く言え!ローランドが去っては政治が回らぬではないか!」
「私も騎士団を退団させていただきます。契約に乗っ取りその権利を行使致します」
「なっ!?」

 エルファードはまた壊れたおもちゃのように繰り返す。

「私が騎士団長を拝命したのは、王妃アイリーン様が正妃としてある間だけという契約でございます故。アイリーン様が正妃でなければ私も騎士団長の地位にいるつもりはございません」
「そ、そんな話聞いたことが……ま、まさか」
「ええ、しっかり書面がのこっておりますし、陛下のサインもきちんと入っております」

 エルファードは目を皿のように開いてみるが、確かに書類は正式なものであり、やはりきちんとエルファード自身が書いた署名が入っている。

「ですので、ローランド殿の事は他の誰かにご命令くださいませ。ではこれにて。私も一両日中に城を去らせていただきます」

 立ち上がり、騎士らしく素早く礼をするとヴィッツも踵を返した。

「お、お前が、騎士団長がいなくなって……一体城の守りはどうしたら!?」
「さあ……?皆、陛下の指示を待っているのかと思われますが?」

 振り返ることなく行ってしまうヴィッツを止める言葉を紡ぐことが出来ずに、エルファードは無力にも見送る事しかできなかった。

 一両日、という割にローランドもヴィッツも風のように去ってゆく。まるでこうなるのが事前に予想してあったかと思うほど、荷物はまとめられ、最小限になっていた。今後の軽い指示なども手紙でしたためてあり、いつから準備していたのか分からないほどだった。

「私もやめさせていただきます。私はローランド様が宰相であるならば、という条件でしたので」
「私もやめさせていただきます。私はヴィッツ隊長がいるならば、という条件でしたので」

 宰相府補佐官は二人とも消え、呆然とする新人が残される。騎士団も副団長を含め、隊長クラスがどんどん消えてゆき、ダルク公爵の息のかかった第5隊と民衆の安全を守る平民上がりの第10隊の隊長のみ残った。

「俺はぁ、王宮の事は全然わからんけど、まあ民衆をまとめる役としてアイリーン様とヴィッツ元団長に雇われたようなモンだからなあ」

 と、第10隊の隊長は暢気に欠伸をした……こうなる事は予想済み、と言った態度だったという。

「え?は?あ、明日の建国祭は……い、一体どうしたら!?」
「エ、エルファードさまぁ……ネリーニ怖いですぅ……」

 二人は立ち尽くしたままガタガタと震えるだけで何の指示も解決策も持っていなかった。

しおりを挟む
感想 176

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

「君は大丈夫だろ?」と可哀想な元恋人を選択した夫。~今さら復縁を迫っても、愛は既に錆び付いています~

水上
恋愛
夫と白い結婚をして、傾いた領地を努力と苦労の末に立て直した伯爵令嬢ヴィクトリア。 夫との関係も良好……、のように見えていた。 だが夫は「君は強いから」と、めそめそ泣く元恋人を優先し、ヴィクトリアの献身を踏みにじった。 その瞬間、彼女の恋心は錆び付き始めた。 「私が去ったら、この領地は終わりですが?」 愛想を尽かした彼女は、完璧な微笑みの裏で淡々と離縁の準備を始める。 これは、有能な妻が去り、無能な夫が泥沼に沈むまでを描く、冷徹な断罪劇。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

王妃教育の謎~婚約破棄?大歓迎です!

柚屋志宇
恋愛
王太子の婚約者となった公爵令嬢フェリシアは王妃教育を受けることになった。 厳しい王妃教育にフェリシアはすり減る。 しかしある日、フェリシアは気付いてしまった。 王妃教育の正体に。 真実に気付いたフェリシアは、王子と婚約を解消するために王子妃にふさわしくない行動をとると決めた。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...