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9 レンブラント、最大の危機

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「アイリーン様を拉致してきたと?よくやったシュマイゼル」
「本当にこの子はやってしまったのね……孫……だ、と?」
「まご」
「まご……」
「まご……」
「レ、レンブラントと申します。どうぞよろしく……お、お願い……致し……」

「まご」「まご」
「あ、あの……」

「まご」「まご」
「あ、あの……た、助けて、は、ははうえぇ……」

 あのレンブラントが涙目でこちらに助けを求めております。沈着冷静を絵に描いたような息子になってしまったのに、ゆっくり、ちょっと見開いた目で迫ってくるシュマイゼル様のお父様とお母様の圧に流石に6歳では耐えられなかったのですね。

「父上!母上!レンが怖がっています。初対面でそんな風では嫌われてしまいますよ」

 お二人は「嫌われる」という単語を敏感に聞きつけて、ヒュッと喉を鳴らしたようです。

「ハッ!すまなかった、レンブラント。何せ我が愚息はこの歳でも伴侶がなく、我らは孫と言うものにとても飢えておって」
「そ、そうなのですよ。あのバカ息子が早く孫の顔を見せようとしないのでつい……。レンブラントは何が好きなの?食べ物?本?剣かしら?」

 それでも、じりっ、じりっ、と距離を詰めてくる前王夫妻にレンブラントは涙目で後退りしています。

「お、お待ち、下さい!まだ母上と義父上は結婚しておりません!故に私はまだお二人のま、孫ではありません!」
「おお!既に義父上ちちと呼んでくれるか!流石シュマイゼル、手が早いのう!」
「大丈夫よ、レンブラントちゃん。絶対にアイリーン様は逃しませんから、多少時間が前後するだけのことですわ、ほほほ!さあ、早くおばあさまに欲しい物を言うのです。服かしら?剣かしら?20本位買ってきたら良いかしら??」
「わ、私の腕は2本しかありません!」
「では魔導書はどうじゃ?好きなだけ買い集めよう!良し、すぐ買い物に行くぞ!お忍び用の馬車の支度じゃ!」
「は、母上ぇ~~~!」


「シュマイゼル様、申し訳ございませんがレンブラントを助けていただけませんか?」
「申し訳ない、私が妻を娶らなかったばかりに、父母が少し拗れてしまいまして……」

 少しではない気がしますが、とうとうレンブラントは捕まって、これでもかと頭を撫でられております。
 わあわあと騒いでおりますが、あのレンブラントが口元を緩めて笑いかけています。ナザールで前王夫妻に可愛がられた事がなかったレンブラント。王太子だったとは言え、かなり我慢をさせてしまいました。

「や、やめて下さい!おじいさま、おばあさま」
「うぐっ!ワシをお祖父様と呼んでくれるのか!今日からレンブラントを国王にしよう、シュマイゼルから取り上げて王冠を持ってこい!この子に被せよう」
「そうしましょう!そうしましょう!やっぱり息子より孫が可愛いって言うのは本当なのね!!今日からレンブラントが国王よ!」

 相当拗らせていらっしゃるようでした。



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