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10 お芋ときゅうりが飛んで行った。
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「ふえっ!」
変な声も出るよ!? 誰も近寄って来ないはずの扉がノックされたんだから! しかもベッドの上でもらって来たきゅうりをポリポリ齧っていた最中だったんだもの。
「ど、どうしよう……!」
部屋は汚れ放題だし、貰って来た食べ物もある。そしてベランダから畑に出入りしているから、土汚れもある。
「そ、そうだ。寝てるフリをしよう!」
ふかし芋やきゅうりと一緒に布団をかぶった。
「ぐ、ぐうぐう……」
寝息の真似なんてしなくて良いのに、余計な事をしつつ息をひそめる。私は睡眠中です、扉は開けないで下さい、と祈りつつ。
しかし、私の願いは叶わず扉は開いたようで、私は更に息をひそめた。
「お疲れのようです、出直しては如何でしょう?」
執事さんの声が聞こえる。是非、そうしてください、と心の中で同意しながら規則正しい寝息を作る。すーはー、すーはー。
「そんな事はない」
聞いたことがない声が聞こえた。何で分かるのか、なんて思ったけれど、誰の声なのか少し興味が湧いたのがいけなかったようだ。扉が少し乱暴に空いたと思うと早足で近づいてくる音が聞こえ、身構える間もなかった。
「あっ」
ぱっと布団を捲られ、つい目を開けてしまった。そこには綺麗な男の人がいた。
「……」
綺麗な人。それが第一印象だった。真っ黒い髪は少しだけ長めで、髪の毛の色に負けないほど、煌めく赤の瞳は宝石みたいだな、と思う。
それでいて弱いとか儚いとかそう言う印象を全く受けない力強さと、アルファ特有の威圧感がさわりと空気を揺らす。
ど、どうしよう、一体誰なんだろう。初めて会う人だ。私は混乱したが、執事さんが横に控えている事、この屋敷に住んでいるアルファである事、目の輝きが強い事……ああ、理解出来た。この人が私の「旦那様」なんだ。
「旦那様」は私の事は名前と存在だけあれば良いはずだったのに、なぜここに現れたんだろう? よく分からない。
お芋ときゅうりが飛んで行った。とても美味しいのに。食べ物を守るように丸くなっていた私の背中にいきなり乗られたから、ベッドから食べ物が飛んだんだ。恐怖で身がすくむが全く動けない。
「やっ!」
「お前がアクアで間違いないな」
背中に馬乗り状態で顎だけ少し上を向かされる。なんとか旦那様の顔は見えるが、有無を言わせない断定のような質問に答えるしかない。
「そ、そう……です」
嘘をついてはいけない、何をされるか分からない恐怖に近い何かを全身で感じ取っていた。
「私の「妻」はお前で間違いないな?」
「あ、あなたがこのお屋敷の主人であるなら、間違いないと、思います。私は「旦那様」の顔も名前も、知りません
……」
その人は少しだけ目を閉じ、開いてから
「私の名前はノエレージュ・タングストンと言う。アクアと言うオメガを妻を得たこの屋敷の主人だ。お前の夫で間違いないな?」
「そ、それならば間違いないと思います……」
無理な格好に、私よりかなり体重のある旦那様が上に乗っている状態は息が苦しいし、不穏な空気も感じてざわざわと全身に寒気が走っていた。
旦那様は執事さんをチラリと見る。なんの異論も挟まず、執事さんは深く礼をして静かに部屋を出て行ってしまった。
ぱたん、と閉まる扉の音に私の混乱は加速した。
変な声も出るよ!? 誰も近寄って来ないはずの扉がノックされたんだから! しかもベッドの上でもらって来たきゅうりをポリポリ齧っていた最中だったんだもの。
「ど、どうしよう……!」
部屋は汚れ放題だし、貰って来た食べ物もある。そしてベランダから畑に出入りしているから、土汚れもある。
「そ、そうだ。寝てるフリをしよう!」
ふかし芋やきゅうりと一緒に布団をかぶった。
「ぐ、ぐうぐう……」
寝息の真似なんてしなくて良いのに、余計な事をしつつ息をひそめる。私は睡眠中です、扉は開けないで下さい、と祈りつつ。
しかし、私の願いは叶わず扉は開いたようで、私は更に息をひそめた。
「お疲れのようです、出直しては如何でしょう?」
執事さんの声が聞こえる。是非、そうしてください、と心の中で同意しながら規則正しい寝息を作る。すーはー、すーはー。
「そんな事はない」
聞いたことがない声が聞こえた。何で分かるのか、なんて思ったけれど、誰の声なのか少し興味が湧いたのがいけなかったようだ。扉が少し乱暴に空いたと思うと早足で近づいてくる音が聞こえ、身構える間もなかった。
「あっ」
ぱっと布団を捲られ、つい目を開けてしまった。そこには綺麗な男の人がいた。
「……」
綺麗な人。それが第一印象だった。真っ黒い髪は少しだけ長めで、髪の毛の色に負けないほど、煌めく赤の瞳は宝石みたいだな、と思う。
それでいて弱いとか儚いとかそう言う印象を全く受けない力強さと、アルファ特有の威圧感がさわりと空気を揺らす。
ど、どうしよう、一体誰なんだろう。初めて会う人だ。私は混乱したが、執事さんが横に控えている事、この屋敷に住んでいるアルファである事、目の輝きが強い事……ああ、理解出来た。この人が私の「旦那様」なんだ。
「旦那様」は私の事は名前と存在だけあれば良いはずだったのに、なぜここに現れたんだろう? よく分からない。
お芋ときゅうりが飛んで行った。とても美味しいのに。食べ物を守るように丸くなっていた私の背中にいきなり乗られたから、ベッドから食べ物が飛んだんだ。恐怖で身がすくむが全く動けない。
「やっ!」
「お前がアクアで間違いないな」
背中に馬乗り状態で顎だけ少し上を向かされる。なんとか旦那様の顔は見えるが、有無を言わせない断定のような質問に答えるしかない。
「そ、そう……です」
嘘をついてはいけない、何をされるか分からない恐怖に近い何かを全身で感じ取っていた。
「私の「妻」はお前で間違いないな?」
「あ、あなたがこのお屋敷の主人であるなら、間違いないと、思います。私は「旦那様」の顔も名前も、知りません
……」
その人は少しだけ目を閉じ、開いてから
「私の名前はノエレージュ・タングストンと言う。アクアと言うオメガを妻を得たこの屋敷の主人だ。お前の夫で間違いないな?」
「そ、それならば間違いないと思います……」
無理な格好に、私よりかなり体重のある旦那様が上に乗っている状態は息が苦しいし、不穏な空気も感じてざわざわと全身に寒気が走っていた。
旦那様は執事さんをチラリと見る。なんの異論も挟まず、執事さんは深く礼をして静かに部屋を出て行ってしまった。
ぱたん、と閉まる扉の音に私の混乱は加速した。
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