80 / 121
81 よ、妖怪がでたー!
しおりを挟む
「あなたが無能王子ィ?フン、見てくれだけはまともってほんとね。しょうがないから結婚してあげるわ。そうしたら国に帰れるって言うし」
「ヒイッ!怖い無理ッ」
スカーレット王女と対面した私は久しぶりに後ろへひっくり返って気を失った。スカーレット王女、いや赤女、いやいや、妖怪赤オバケがそこにいたんだから、マシェも多分見たらひっくり返るし、大体の人間は逃げるだろうな。
だってそこには赤い髪で真っ赤なドレスを着たなんかブックブクの丸い肥えたモノがいたんだ。ちなみに肉に埋もれて目の色はわからなかった。
「来た当時は普通の女性の体型であったのだが……」
気絶して救護室で目を覚ますと、横にイオリア兄上がいて心底気の毒そうな顔をしていた。
「なにせ、我が国はリュキ達からの入金が止まると即日財政難に見舞われてな。財務官がリュキ達からの振り込みが永遠に続くものと勘違いしておった節があるし、金は泉から湧くんだと思い込んでいたようにすら見えた」
一週間も経たないうちに現金は消えたらしい。何してんだか……。
「城のほとんどの者が金策で走り回り、贅沢な暮らしはすぐにできなくなった。どうも宰相はスカーレット王女に贅沢な暮らしを約束していたそうでな、すぐに困難になった訳だ。買い物も碌にできない王女のストレス発散は食事に向けられた。しかし高級な食品を提供する事も出来ず……料理人やメイド達は苦肉の策としてとにかく甘いお菓子を用意したらしい。甘いものはストレスに効くからと」
「でも限度というものが……」
ちなみにマシェも横で青い顔をしながら話を聞いている。どうやらちらっとあの妖怪を見てしまったらしい……目が合ったら呪い殺されるぞ!あれは間違いなく特級呪物!
「かの王女は非常に……手のかかる方であったらしく、呼び寄せた宰相が最初に見捨てたらしい。私の元に報告が来た時には既に遅かった。かの王女に殴られないために仕方がなくメイド達は甘くて脂っこいお菓子を言われるままにお持ちしていたらしい……そして短期間であんな風に」
「ある意味人体の神秘でござるな……」
「ああ……」
人間ってああなれるんだ……とりあえず遠い目をするしかないけれど、あれをこのまま置いておくことはできないよねえ?まあ向こうの国の王様が早く会いたいって言ってたからお持ち帰り願うのは必要かもしれないなあ。
「いくら女性恐怖症が少し収まったとはいえあれは無理でござるよ、兄上。もう二度を顔を合わせないように取り計らってくだされ!」
「そうでござるよ、兄上。あんな兄者の横幅の5倍はありそうな巨躯。我らなど近寄ったらぺちゃんこにされてしまいますゆえ!」
「そんなことはないぞ、と言えないものなあ……」
あの妖怪を輸送できる馬車はあるのでござろうか……リヤカーなんかに乗せて覆いもなしに運搬したら偶然見てしまった国民が恐怖で石になっちゃうかもしれないでござるよ!?それは可哀想でござる……テロでござろう!
「馬車の床板を限界まで強化して乗せることになりそうだが……持つだろうか」
「多分足掛け台は壊れるでありましょうぞ……」
「4頭立てで引っ張れるんでござろうか……引く動物は牛の方が……?」
運び出すのも困難とか嫌になるでござるな!
「ヒイッ!怖い無理ッ」
スカーレット王女と対面した私は久しぶりに後ろへひっくり返って気を失った。スカーレット王女、いや赤女、いやいや、妖怪赤オバケがそこにいたんだから、マシェも多分見たらひっくり返るし、大体の人間は逃げるだろうな。
だってそこには赤い髪で真っ赤なドレスを着たなんかブックブクの丸い肥えたモノがいたんだ。ちなみに肉に埋もれて目の色はわからなかった。
「来た当時は普通の女性の体型であったのだが……」
気絶して救護室で目を覚ますと、横にイオリア兄上がいて心底気の毒そうな顔をしていた。
「なにせ、我が国はリュキ達からの入金が止まると即日財政難に見舞われてな。財務官がリュキ達からの振り込みが永遠に続くものと勘違いしておった節があるし、金は泉から湧くんだと思い込んでいたようにすら見えた」
一週間も経たないうちに現金は消えたらしい。何してんだか……。
「城のほとんどの者が金策で走り回り、贅沢な暮らしはすぐにできなくなった。どうも宰相はスカーレット王女に贅沢な暮らしを約束していたそうでな、すぐに困難になった訳だ。買い物も碌にできない王女のストレス発散は食事に向けられた。しかし高級な食品を提供する事も出来ず……料理人やメイド達は苦肉の策としてとにかく甘いお菓子を用意したらしい。甘いものはストレスに効くからと」
「でも限度というものが……」
ちなみにマシェも横で青い顔をしながら話を聞いている。どうやらちらっとあの妖怪を見てしまったらしい……目が合ったら呪い殺されるぞ!あれは間違いなく特級呪物!
「かの王女は非常に……手のかかる方であったらしく、呼び寄せた宰相が最初に見捨てたらしい。私の元に報告が来た時には既に遅かった。かの王女に殴られないために仕方がなくメイド達は甘くて脂っこいお菓子を言われるままにお持ちしていたらしい……そして短期間であんな風に」
「ある意味人体の神秘でござるな……」
「ああ……」
人間ってああなれるんだ……とりあえず遠い目をするしかないけれど、あれをこのまま置いておくことはできないよねえ?まあ向こうの国の王様が早く会いたいって言ってたからお持ち帰り願うのは必要かもしれないなあ。
「いくら女性恐怖症が少し収まったとはいえあれは無理でござるよ、兄上。もう二度を顔を合わせないように取り計らってくだされ!」
「そうでござるよ、兄上。あんな兄者の横幅の5倍はありそうな巨躯。我らなど近寄ったらぺちゃんこにされてしまいますゆえ!」
「そんなことはないぞ、と言えないものなあ……」
あの妖怪を輸送できる馬車はあるのでござろうか……リヤカーなんかに乗せて覆いもなしに運搬したら偶然見てしまった国民が恐怖で石になっちゃうかもしれないでござるよ!?それは可哀想でござる……テロでござろう!
「馬車の床板を限界まで強化して乗せることになりそうだが……持つだろうか」
「多分足掛け台は壊れるでありましょうぞ……」
「4頭立てで引っ張れるんでござろうか……引く動物は牛の方が……?」
運び出すのも困難とか嫌になるでござるな!
50
あなたにおすすめの小説
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる