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29 じーちゃんの様子が……?

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「朝比奈武蔵、行ってきます」

「え?あ、はい」

 土曜日、武蔵じーちゃんはばーちゃんとかーちゃんととーちゃんとたくさん話したと言っていた。
 日曜日にどこかへ出かけたかと思うと、月曜日にも元気に出かけて行き

「明日から清掃の仕事をするんじゃ……いや、するんだ」

「じーちゃん働くの?!歳はどうすんだ!」

 そう言ったら

「誤魔化したわい」

 と、言いながらニヤッと笑った。

「待って!じーちゃん貧乏神だろ!じーちゃんが入ったら……」

「大丈夫じゃ、何とかなるじゃろ。わしは朝比奈の家を買い戻したいんじゃ。見たらまだ売り出し中じゃったぞ?誰も住んで無い家は荒れる故、早く住んでやらねば!」

「え?あ、うん……頑張って……?」

 任せるんじゃよー!としっかりした足取りで仕事に行ってしまった。土曜日に見たじーちゃんより、若くなっている気がするんだよなぁ?

「大福、大丈夫かな?」

「大丈夫だ、誠子。何せあの方は神だ」

 うんうん、と頷く大福だが

「神っつてもメロン食い過ぎて腹を壊す神も居るし……」

「何か言ったか?」

 何でもなーい!私も会社に行かねばな!

 会社に行くとすぐ異変が起こった。

「朝比奈さーん!これ貰ってー!」

「海野さん?どうしたの?」

 私の机の上に大振りなアップルマンゴーが三つ乗っている。

「私、マンゴー嫌いなんだけど、貰っちゃって!お願い!貰って!」

「あ、ああ。ありがとう」

「あと、社長が余ったからって焼き肉のただ券くれたよ」

「ほう?」


「誠子!見てくれ!ロースンのおにぎが当たったんだ!」

「大福!昼間何してたんだ?!」


「誠子ー!ホームのジジイから牛の肉貰ったんだがくわねぇ?俺あんま好きじゃねー。後、どんぶりいる?」

「クロ、牛肉はありがとうだけど、どんぶりは……ってそれ、ものっすごい高いワインじゃ?」

「しらねー。俺、日本酒以外知らねーもん」


「なんかおかしい」



「清掃の仕事だったんじゃが、管理人が足りんってなっての。今日から手伝う事になったんじゃよ」

「へー……」

 武蔵じーちゃんはまた若くなった気がする。

「朝比奈さん!臨時ボーナスだって!」

「凄いね!」


「誠子ー俺もボーナス出たからにゃおにゅ~るパーティしょうぜ!」

「しない!因みにボーナスっていくら?」

「30万円ー」

「ぶっ!クロ!お前ホストか!」

「なんでバレた!?」


「やっぱりおかしくない?」


「管理人だったはずなんだが、その管理会社の方でとお願いされてな?今日からそっちなんだ」

「そ、そうなんだ。頑張って、じーちゃん」

「ああ、任せろ」

 武蔵じーちゃんは……

「じーちゃんって言うよりおじさん、だよね?」

「若返ってみえるな、そして気づいたとは思うが……」

「じーちゃん、ジョブチェンジしたよな……」

「そうだな……」

 聞いた事がある。貧乏神と福の神は表裏一体の存在で、対となるもの。返れば変わるもの。

「じーちゃん、張り切って体を壊さなきゃ良いけどなぁ……」

「そ、そんな事より、あの不思議で蠱惑的な香りの洋風柿みたいな果物?はいつ食べるのだ!?早く食してみたいのだが?!」

「アップルマンゴーな……切るか」

「そうしよう!!」

 大福は来たるべき宮崎県からの刺客を迎え撃つべく、頬袋の体操を始めていた。
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