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12 婚約破棄には賠償金を
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「ザザーランの……ちょうど良いわ、マルセル。貴方は本当にアンゼリカと婚約を破棄し、あの娘と新たに婚約を結ぶというのね?」
「そ、それは……」
王妃に強い口調で言われ、マルセルは俯いた。気が弱いを通り越してみていてイライラするレベルだ。
「当たり前ですわ!アンゼリカはもういません!マルセル殿下は私と婚約をして幸せに暮らすんです!」
「お黙り、お前には聞いておりません。口を挟むな!」
かなり強い口調で王妃に言われ、さしものリルファも口を閉じる。
「答えよ、マルセル」
「そ、それは……」
王太子マルセルの視線は自分の母親である王妃の顔と、突然現れたリルファの顔を行ったり来たりしていたが、ついには
「ア、アンゼリカは……もう、いないと……」
「はっきりお言い!」
「ひいいっ……ア、アンゼリカとは……婚約を……破棄、し、しました。皆の前で……そう、言いましたから……」
「……そう……」
王妃は深く深くため息をつき、隣にいた王もがっくりと項垂れた。
「そして、そこにいるリルファ・ザザーランと婚約をしたと発表したのでしたね。我々がいない間に」
「そうです!!」
答えたのはリルファであったが、王妃の一睨みでその後は黙った。
「愚かな、あまりに愚かなことを……もう庇いだては出来ません、マルセル。お前は廃嫡後に謹慎を申し渡します」
「な、何故……!?」
「どうして!?」
「無論その娘との婚約も認められません。当たり前です、何故その娘と婚約出来ると思ったのですか?まさかアンゼリカと姉妹だから取り替えようなどと思ったなど、馬鹿な事は流石に言いませんよね?」
そうだ、と言おうと思ったのをぐっとリルファはひっこめた。
「長年、王太子の婚約者として学び、支え、仕事をしてきたアンゼリカと平民出の娘を一緒にする方が間違えているのです。はぁ……アンゼリカに払う賠償金……考えただけで頭が痛いわ」
「ば、賠償金……?母上それは一体」
マルセルはここに似つかわしくない単語に驚いた。賠償金とは??
「元々お前とアンゼリカの婚約はお前の立場を強固にし、王の器に足りないお前を次代の王に据えるべく、私達がザザーラン家……いえ、アンゼリカとその母に無理を通して結んだ婚約だったのを忘れたのですか?マルセル」
「え……」
顔に完全に忘れていたと書いてある息子をみて、王妃はまた深いため息をつく。
「当然ながらアンゼリカと母には断られました。しかしと何度も頼み……契約と、それを破った時の多額の賠償金を約束できるのならと結んだものだったのです……。あのあり得ない契約がまさか、まさか本当に成立するとは……」
王妃は目頭を揉みながら、痛む頭を何とかしようとしたが上手くはいかない。
「あ、あり得ない……契約……とは……?」
「それはアンゼリカではなく、マルセル、お前の方から婚約を破棄し、更に新しい婚約者にアンゼリカの妹を据える事を宣言することです。まずこちらから頭を下げて無理を通した婚約なのに、何故こちらから破棄することがあるというのでしょう……そして、挙句の果てにその妹と婚約を宣言?あり得ない、あり得ない事です……。しかし、それは現実に起こってしまった。なかったなどとは言えぬほど証人がいるんですものね……」
「は……そ、そんな……契約、あ、あるはずが」
「きっちり書面に残っていますよ。アンゼリカは契約の類は必ず残る書面にするしっかりした令嬢です……しっかりしすぎて驚きましたが、これならばマルセルが王となってもなんとかこの国はやっていけると思ったのに……」
「う、嘘ですよね……母上」
王妃の目はとても冷たい。嘘などついているはずもない目をしている。
「第二王子のモーリッツを呼んでちょうだい。今日からモーリッツが王太子よ。モーリッツの婚約者のラジェットも。あの子はアンゼリカを慕っていたから色々学んでいるでしょう。王太子妃としてやっていけるわ」
「そ、それは……」
王妃に強い口調で言われ、マルセルは俯いた。気が弱いを通り越してみていてイライラするレベルだ。
「当たり前ですわ!アンゼリカはもういません!マルセル殿下は私と婚約をして幸せに暮らすんです!」
「お黙り、お前には聞いておりません。口を挟むな!」
かなり強い口調で王妃に言われ、さしものリルファも口を閉じる。
「答えよ、マルセル」
「そ、それは……」
王太子マルセルの視線は自分の母親である王妃の顔と、突然現れたリルファの顔を行ったり来たりしていたが、ついには
「ア、アンゼリカは……もう、いないと……」
「はっきりお言い!」
「ひいいっ……ア、アンゼリカとは……婚約を……破棄、し、しました。皆の前で……そう、言いましたから……」
「……そう……」
王妃は深く深くため息をつき、隣にいた王もがっくりと項垂れた。
「そして、そこにいるリルファ・ザザーランと婚約をしたと発表したのでしたね。我々がいない間に」
「そうです!!」
答えたのはリルファであったが、王妃の一睨みでその後は黙った。
「愚かな、あまりに愚かなことを……もう庇いだては出来ません、マルセル。お前は廃嫡後に謹慎を申し渡します」
「な、何故……!?」
「どうして!?」
「無論その娘との婚約も認められません。当たり前です、何故その娘と婚約出来ると思ったのですか?まさかアンゼリカと姉妹だから取り替えようなどと思ったなど、馬鹿な事は流石に言いませんよね?」
そうだ、と言おうと思ったのをぐっとリルファはひっこめた。
「長年、王太子の婚約者として学び、支え、仕事をしてきたアンゼリカと平民出の娘を一緒にする方が間違えているのです。はぁ……アンゼリカに払う賠償金……考えただけで頭が痛いわ」
「ば、賠償金……?母上それは一体」
マルセルはここに似つかわしくない単語に驚いた。賠償金とは??
「元々お前とアンゼリカの婚約はお前の立場を強固にし、王の器に足りないお前を次代の王に据えるべく、私達がザザーラン家……いえ、アンゼリカとその母に無理を通して結んだ婚約だったのを忘れたのですか?マルセル」
「え……」
顔に完全に忘れていたと書いてある息子をみて、王妃はまた深いため息をつく。
「当然ながらアンゼリカと母には断られました。しかしと何度も頼み……契約と、それを破った時の多額の賠償金を約束できるのならと結んだものだったのです……。あのあり得ない契約がまさか、まさか本当に成立するとは……」
王妃は目頭を揉みながら、痛む頭を何とかしようとしたが上手くはいかない。
「あ、あり得ない……契約……とは……?」
「それはアンゼリカではなく、マルセル、お前の方から婚約を破棄し、更に新しい婚約者にアンゼリカの妹を据える事を宣言することです。まずこちらから頭を下げて無理を通した婚約なのに、何故こちらから破棄することがあるというのでしょう……そして、挙句の果てにその妹と婚約を宣言?あり得ない、あり得ない事です……。しかし、それは現実に起こってしまった。なかったなどとは言えぬほど証人がいるんですものね……」
「は……そ、そんな……契約、あ、あるはずが」
「きっちり書面に残っていますよ。アンゼリカは契約の類は必ず残る書面にするしっかりした令嬢です……しっかりしすぎて驚きましたが、これならばマルセルが王となってもなんとかこの国はやっていけると思ったのに……」
「う、嘘ですよね……母上」
王妃の目はとても冷たい。嘘などついているはずもない目をしている。
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