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31 男性って皆こうなのかしら?
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時は遡り……。私はマークに呼び出されている。何の話かは分かっていて、それは私もしっかり覚えている小説の内容通りの事だった。
少し恥ずかしそうにマークは主題を切り出した。
「ダリアに婚約を申し込みたいと思っているんだ」
「勿論大賛成よ、末永く友人としてやっていきたいからね」
「それで……」
このマーク・アドレンと言う男は冷静な判断力があるのだが、ダリアの事になると少しだけ阿呆になる。そのおかげで私が読んでいた小説では話が拗れて長くなってしまうのだけれど、それを私は阻止しようと思う。
「マーク。まさかと思うけど、土地の権利書を持って来て「これで私の婚約者になってください」なんて申し込むようなロマンの欠片もない事をしようと思ってはいないわよね?婚約ならば指輪なのは当然、分かっているわよね?」
「えっ!?指輪なんかよりこの街道沿いの一等地の方が価値があるじゃないか……」
やっぱりか……。私はため息と共に頭を振った。
「ダリアと私にビンタされたいのかしら?」
「そんなの私が死んでしまう」
はあ、呆れるわ。やっぱりやろうとしてたのね?後ろ手に赤い可愛いリボンを巻いた権利書を持ってたのね?
「早く走って行って宝石商からあなたの瞳の色と同じ大きな緑色の宝石が付いた指輪を買ってきなさい!」
「は、はいっ!!」
「売ってる中で一番大きい物を買うのよ!」
「はいっーーーー!」
マークはドタバタと走って行ったわ。これで拗れる事なく、マークとダリアの婚約はなされると思う。そして私は二人にプレゼントをしなくては。
「侯爵家の三男と侯爵家の次女なんですものね……」
マークもダリアも長子ではない。しかも長子の次のスペアでもない……。二人はそれぞれの家から良い嫁ぎ先を捜すようにきつく言われて学園にやってきたのである。正確に言えばマークは婿養子先ね。それが二人とも良縁を捜すより事業に夢中になってしまいアドレン家とミルドレッド家からうるさく言われているはずなのだ。
小説では両家に婚約を反対された二人は貴族を辞め、平民として事業を拡げ成功してゆく……けれど、私は二人に貴族として残っていて貰いたい。まだ助けて貰いたいことが色々あるのだ。
「まあ……マークは上手くやってくれると思うけれど……」
問題は私。
「はぁ……セルドアかあ……」
ラグージ家で私の執務室として借り受けている部屋に設置された執務机でため息をついてしまう。小説のラストでアンゼリカはセルドア・ルーアンと結婚することになっている。
「私についてこい。必ず幸せにしてやるから」
「……ありがとう、セルドア……私なんかの為に……」
気に入らないのよ、セルドアの俺様加減も、小説のアンゼリカの自分を蔑んだ発言も。しかし、他の嫁ぎ先がないのも事実。このラグージ家に世話になり続けたくもない。
「セルドアかあ……」
「なんだ?呼んだか、アンゼリカ」
「……呼んでないわよ」
ノックもなしに扉をあけて、セルドアが入ってきた。用もないのにラグージ家に良く遊びに来るのよね。タウンハウスが隣だった頃は良く来るのも仕方がないと思っていたけれど、少し離れたラグージ家にまでこうたびたび突然来られては、伯父様やお祖父様にも迷惑だわ。
「マークが慌てて指輪を買いに行ったけれど……私はそんなへまはしないよ」
「……どうしたの?セルドア」
いつになく真剣な声。セルドアは真っ直ぐに見つめてくる。
「私と結婚しよう、婚約者になってくれ、アンゼリカ」
「……突然ね、しかも執務室でなんて雰囲気が台無しだわ」
それでもセルドアは自信ありげに笑っている。
「これを、君に」
すっと差し出したのは……何かの権利書……はあ、男性って皆、こうなのかしら?セルドアは権利書を丸めて止めてある所を指差した。
「あ……」
大きなセルドアの目の色と同じ青いサファイアがついた指輪が嵌っている。
「中も見てくれ。アンゼリアが欲しがってた……」
「もしかして、レイスの宝石鉱脈採掘権!?」
「正解。その封を解いて指輪を嵌めてくれるよな?」
レイスの宝石鉱脈はこれから魔道鉱石がざっくざっくでてルーアン家の財産の半分以上は魔道鉱石で稼いだと言われるほど大儲けできるのだ。セ、セルドアのくせに……小説よりやるじゃない……。小説の内容を私が変えたツケが回ってきたのかしら……。
「う……わ、分かったわ……」
「よろしくな、アンゼリカ。一緒にルーアン家の財産を増やしていこうぜ!」
……一緒に、ですって。俺様だったセルドアとは思えない台詞だわ。セルドアも変わったのかしら……だとしたらとても嬉しいし、うまくやっていけそうな気がする。
「実はな、父上と母上にアンゼリカに結婚を申し込もうとしてるって話したら、早くしろ!一秒でも早く捕まえてこい!ってどやされまくってな!ははは!油断してたら王太子に横から持っていかれた事をずっと恨んでたからな!」
「……もう、ほんとロマンの欠片もないわね」
「大丈夫、外では上手くやるよ。任せておけ、アンゼリカ!」
本当に大丈夫なのかとても不安だ。でもこれでマークとダリアの力をまだまだ借りる事が出来る。何よりの友人を頼れる安心感に胸を撫で下ろした。
少し恥ずかしそうにマークは主題を切り出した。
「ダリアに婚約を申し込みたいと思っているんだ」
「勿論大賛成よ、末永く友人としてやっていきたいからね」
「それで……」
このマーク・アドレンと言う男は冷静な判断力があるのだが、ダリアの事になると少しだけ阿呆になる。そのおかげで私が読んでいた小説では話が拗れて長くなってしまうのだけれど、それを私は阻止しようと思う。
「マーク。まさかと思うけど、土地の権利書を持って来て「これで私の婚約者になってください」なんて申し込むようなロマンの欠片もない事をしようと思ってはいないわよね?婚約ならば指輪なのは当然、分かっているわよね?」
「えっ!?指輪なんかよりこの街道沿いの一等地の方が価値があるじゃないか……」
やっぱりか……。私はため息と共に頭を振った。
「ダリアと私にビンタされたいのかしら?」
「そんなの私が死んでしまう」
はあ、呆れるわ。やっぱりやろうとしてたのね?後ろ手に赤い可愛いリボンを巻いた権利書を持ってたのね?
「早く走って行って宝石商からあなたの瞳の色と同じ大きな緑色の宝石が付いた指輪を買ってきなさい!」
「は、はいっ!!」
「売ってる中で一番大きい物を買うのよ!」
「はいっーーーー!」
マークはドタバタと走って行ったわ。これで拗れる事なく、マークとダリアの婚約はなされると思う。そして私は二人にプレゼントをしなくては。
「侯爵家の三男と侯爵家の次女なんですものね……」
マークもダリアも長子ではない。しかも長子の次のスペアでもない……。二人はそれぞれの家から良い嫁ぎ先を捜すようにきつく言われて学園にやってきたのである。正確に言えばマークは婿養子先ね。それが二人とも良縁を捜すより事業に夢中になってしまいアドレン家とミルドレッド家からうるさく言われているはずなのだ。
小説では両家に婚約を反対された二人は貴族を辞め、平民として事業を拡げ成功してゆく……けれど、私は二人に貴族として残っていて貰いたい。まだ助けて貰いたいことが色々あるのだ。
「まあ……マークは上手くやってくれると思うけれど……」
問題は私。
「はぁ……セルドアかあ……」
ラグージ家で私の執務室として借り受けている部屋に設置された執務机でため息をついてしまう。小説のラストでアンゼリカはセルドア・ルーアンと結婚することになっている。
「私についてこい。必ず幸せにしてやるから」
「……ありがとう、セルドア……私なんかの為に……」
気に入らないのよ、セルドアの俺様加減も、小説のアンゼリカの自分を蔑んだ発言も。しかし、他の嫁ぎ先がないのも事実。このラグージ家に世話になり続けたくもない。
「セルドアかあ……」
「なんだ?呼んだか、アンゼリカ」
「……呼んでないわよ」
ノックもなしに扉をあけて、セルドアが入ってきた。用もないのにラグージ家に良く遊びに来るのよね。タウンハウスが隣だった頃は良く来るのも仕方がないと思っていたけれど、少し離れたラグージ家にまでこうたびたび突然来られては、伯父様やお祖父様にも迷惑だわ。
「マークが慌てて指輪を買いに行ったけれど……私はそんなへまはしないよ」
「……どうしたの?セルドア」
いつになく真剣な声。セルドアは真っ直ぐに見つめてくる。
「私と結婚しよう、婚約者になってくれ、アンゼリカ」
「……突然ね、しかも執務室でなんて雰囲気が台無しだわ」
それでもセルドアは自信ありげに笑っている。
「これを、君に」
すっと差し出したのは……何かの権利書……はあ、男性って皆、こうなのかしら?セルドアは権利書を丸めて止めてある所を指差した。
「あ……」
大きなセルドアの目の色と同じ青いサファイアがついた指輪が嵌っている。
「中も見てくれ。アンゼリアが欲しがってた……」
「もしかして、レイスの宝石鉱脈採掘権!?」
「正解。その封を解いて指輪を嵌めてくれるよな?」
レイスの宝石鉱脈はこれから魔道鉱石がざっくざっくでてルーアン家の財産の半分以上は魔道鉱石で稼いだと言われるほど大儲けできるのだ。セ、セルドアのくせに……小説よりやるじゃない……。小説の内容を私が変えたツケが回ってきたのかしら……。
「う……わ、分かったわ……」
「よろしくな、アンゼリカ。一緒にルーアン家の財産を増やしていこうぜ!」
……一緒に、ですって。俺様だったセルドアとは思えない台詞だわ。セルドアも変わったのかしら……だとしたらとても嬉しいし、うまくやっていけそうな気がする。
「実はな、父上と母上にアンゼリカに結婚を申し込もうとしてるって話したら、早くしろ!一秒でも早く捕まえてこい!ってどやされまくってな!ははは!油断してたら王太子に横から持っていかれた事をずっと恨んでたからな!」
「……もう、ほんとロマンの欠片もないわね」
「大丈夫、外では上手くやるよ。任せておけ、アンゼリカ!」
本当に大丈夫なのかとても不安だ。でもこれでマークとダリアの力をまだまだ借りる事が出来る。何よりの友人を頼れる安心感に胸を撫で下ろした。
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