【完結】その壊れた恋愛小説の裏で竜は推し活に巻き込まれ愛を乞う

鏑木 うりこ

文字の大きさ
31 / 83

31 ぎゅってして

しおりを挟む
「ルシ様、ぎゅーってして」
「リンカか」
「うん、ちょっとだけ出てきたの。お願い、ぎゅーってして」

 アリアンの姿のままリンカが現れた。ぎゅーっていうのは抱き締めて欲しいことらしい。正直、アリアンと抱き合うのは遠慮したいがリンカが表面に現れて要求するとは何かあると思って間違いない。
 両手を開いて待つリンカの前に立って、あまり背の高さも変わらないアリアンの体を抱きしめた。細く割に筋肉質でそれなのに少しひんやりした不思議な体。それが不快であれば救いもあるが、悪くないのが嫌になる。

「えへ、えへへ……」

 おずおずと背中に手を回して、緩く抱きついてくる。遠慮など無用なのに。

「ルシ様、絶対誰かと結婚してね……リンカ、ルシ様の子供みたいんだ」
「良い縁があれば」
「大丈夫だよ、ルシ様カッコいいし頭いいし素敵だもん。皆、ほっとかない……ん、元気チャージできたっ」

 そして一瞬でパッと離れてしまう。

「推し様との距離感大事っ」
「リンカ」

 リンカは本当に私のことを一番に考えてくれている。そこまでしなくともと思うくらいに。

「あのね! アカデミーの教授に魔虫の研究をしているギディアン・クライスっていう人がいるの。すぐに支援して、大陸オオトビバッタの研究をさせて。多分三年……ううん、二年は成果が出ないけどいっぱいお金を渡して研究させて」
「大陸オオトビバッタ……まさか」
「うん、大発生があるの。大体五年後かな……早く研究させないとこの国、被害凄いの。これからサンプルのバッタを捕まえてくるから、お願いね。リンカはルシ様の子供も幸せに暮らすこの国を守りたいもん」

 じゃあ行ってきます、とリンカは手を挙げて廊下を走っていった。常識のあるリンカだ、きっと玄関までいき、外に出てから翼を開くんだろう。メイドや執事にも挨拶をして、玄関に現れた。
 短い距離、助走をつけるとゆっくりと背中から黒い大きな翼が開く。そのまま滑るように空へ舞い上がってゆく。同じ体なのにアリアンとまったく違う姿をしばし見送った。

「リンカは元気な方がいい。確かにそうだな、アリアン」

 突然現れた嵐のようなリンカに私はいつも助けられている。

「ギディアン・クライス、南の方の子爵家の次男だったか」

 私もすぐに動かねばならない。蝗害か……恐ろしいものだ。大きな魔物であればアリアンが薙ぎ倒せるだろうが、数が大量になればアリアンでも倒すのは困難だろう。しかも今はまだ効果的な方法が見つかっていない。

「たった三年で効果的な方法が分かるなら安いものだな」

 やはりリンカは素晴らしい。この世にリンカ以上に素晴らしい女性は存在しないのではなかろうか。

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息に転生したので婚約破棄を受け入れます

藍沢真啓/庚あき
BL
BLゲームの世界に転生してしまったキルシェ・セントリア公爵子息は、物語のクライマックスといえる断罪劇で逆転を狙うことにした。 それは長い時間をかけて、隠し攻略対象者や、婚約者だった第二王子ダグラスの兄であるアレクサンドリアを仲間にひきれることにした。 それでバッドエンドは逃れたはずだった。だが、キルシェに訪れたのは物語になかった展開で…… 4/2の春庭にて頒布する「悪役令息溺愛アンソロジー」の告知のために書き下ろした悪役令息ものです。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

転生×召喚

135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。 周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。 これはオマケの子イベント?! 既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。 主人公総受けです、ご注意ください。

雪解けに愛を囁く

ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。 しかしその試験結果は歪められたものだった。 実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。 好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員) 前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。 別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。 小説家になろうでも公開中。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

処理中です...