【完結】その壊れた恋愛小説の裏で竜は推し活に巻き込まれ愛を乞う

鏑木 うりこ

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37 ここまで後先を考えないのはどうかと思う*

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「うー、むぐ」
「だから無理だ」
「うーーっ」

 ベッドの端に腰を掛け、私を見上げるアリアンを見返すがそんな顔をしても無理なものは無理だ。
 しつこいアリアンに根負けしたが、まず前提条件が何ともならん。

「た、勃たない……」
「当たり前だ、どうやってお前相手に欲情しろというんだ?」
「ううーーっ! 勃たせろよぉ!」
「無理なことを」
「こ、こうなったら」

 アリアンは何を思ったのかアレをぱくりと咥えてしまった。

「アリアンッ」
「うー……ううーっ」

 何もそこまでしなくても、と必死にもごもごしているアリアンを見下ろしてしまう。アリアンはほとんど涙目で今ばかりは生意気そうな金色の目も少し哀れに見えた。

「アリアン……もうやめろ」
「うーっうーっ!」

 それでも頑なにやめようとせず、上目遣いで見てくる。困った奴だとは思うが……そうやって必死になっているアリアンの顔はだいぶ前に気持ちの悪い上目遣いで見てきた聖女に比べたらよっぽど可愛いな、と思ってしまった。

 思ってしまったのが間違いだった。

「っ! アリアン、やめ……」
「む、むぐっ! ムムムっ……! 勃ったぁ!」

 なんてことだ……油断した! 

「へっへっへ、大丈夫ちょーっと天蓋のゴミでも数えてりゃ終わるからな!」
「ほ、本当に本気なのか……」
「良いじゃねえか、別に減るもんじゃねえし」

 減るだろう……? 羞恥心とかそういうものが。意気揚々と上に跨るが、アリアンお前、何にも考えていないだろう?

「う……な、なん、だろ、これぇ」

 アリアンは竜だ。竜は鱗のせいか触ると少しひんやりしている。人型になって鱗も見えないいつものアリアンは常人より少し冷たいくらいだが、中は違うらしい。
 端的にいえば悪くない、むしろ気持ちが良い。

「あ! ひ、ふ……ん、んんっ」

 つらそうに眉を寄せてあのアリアンが声をあげている。一応、いうことは聞かせられるとはいえ、暴虐の体現のようなアリアンがだ。それだけで嗜虐心をそそるというのに、小さく震えながら呟いているのもよろしくない。

「あ、あれ……なんで、こんな……ひっ、あうぅ苦し……っ」

 焦ったような呟き、完全に想定外だったのだろう。それでいてうまい具合に入ったのか、自重でズブズブと埋め込まれて行く。

「ひん、これ、なにこれ……ルシ、これ俺、だ、駄目……ひっ抜いてぇ」
「アリアン、だからやめろと」
「ごめ、俺ぇ……こんななんて、ひっ知らなくてぇ……」

 アリアンはカタカタ震えながら、目にいっぱい涙を溜めている。知らなかった、そうアリアンはいうけれど、そうかも知れない。普段のアリアンならば誰かと性行為に及ぶ、しかも受け手に回るなんてことは考えられないし、受け入れないことだろう。

「ルシ、ルシ……っも、もうやだ、怖い抜いてぇ」
「お前が上に乗ってるんだ、仕方がない」

 このまま続けたらアリアンはどうなるのか? と、少し見てみたい気もする。だが、こんな馬鹿なことに及んだのは、リンカのためだ。リンカの望みを叶えるため、間違った方法を取ってしまったのならば、何とかしてやるより仕方があるまい。

「アリアン、力をいれろ。お前が私の上から退かねば抜くことはできない」
「ひ、ひんっ……むりぃ……!」

 ふるふると震えながら飲み込むのを耐えているが、ゆっくりゆっくりと体は下へ下がっている。

「ひ、う、うぅ……」

 まったく世話のかかる奴だ。下からアリアンの体を持ち上げられるか分からないが、それしか方法はない。かなり細いアリアンの腰を掴んで立ち上がる手助けをしよう。

「ひっ⁈  や、やっ! 痛っーーっ」
「アリアン⁈」

 ギリギリ耐えていたアリアンの体の力が全部抜け、なんとか踏ん張っていた足がズルンと滑った。

「ひ、ぁあんっ‼︎」

 残り全部を一気に飲み込み、アリアンは衝撃のあまり、くたりと放心している。一体どうして、と思ったが、自分が手をかけた腰の場所が悪かったらしい。

「鱗の……」

 以前、鱗を剥いだといっていた場所だ。左手の親指がその治りきらない傷を思いっきり押している。

「あ、あ……う」

 倒れ込んでくるアリアンを受け止める。鱗を失った場所は弱点になるといっていたな、と思い出した。そこを掴まれ驚いた上に拓かれたことのない場所まで一気にこじ開けられて、アリアンは呻くことしかできなくなったようだ。
 今、謝罪したところでアリアンの耳には届くまい。申し訳ないなと思いつつもこんなアリアンを見るのは初めてで戸惑いがある。




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