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43 すぽんと抜けた
「うえーん! ルシがエッチしてくんないー!」
「何いってんのよ! もう卵があるんだからする必要ないでしょっ」
「やだやだー! 卵とかじゃなくて、気持ちいーのしたいのー!」
「このエロ馬鹿竜ッ」
「うわーん!」
アリアンが一人で身振り手振りしている。しかしリンカという存在を知る私達ならばアリアンがリンカといい合いをしていると察せられた。それにうっすらリンカの声も聞こえる気がするのだ……いや、聞こえていることが多い。
「こ、こうなったら……ルシ以外と」
「浮気駄目! 絶対許さないよっ! アリアンッ」
「キャウンッ! し、しないしないっ!絶対しないっ」
「分かればいいのよ。でも浮気する相手なんていないじゃない?」
「う、うーん? 青の奴とか?」
「群青色の竜を産むつもり?」
「え、やだ」
「でしょー? それにあいつかっこよくないし、弱いし、私絶対やだ」
「そいえばそうかー……じゃあやっぱルシ! エッチしよー」
「ルシ様に迷惑かけるなーっ!」
「キャウンッ」
ほぼ毎日こんなことをしている。やはりリンカとアリアンはとても仲が良いようで、お互いに気遣いをしている。
「アリアン、寝てていいよ」
「んー……分かった。なんだろうなぁ最近すぐ眠くなるや」
「季節がいいからね。あったかいもん、リンカもうとうとしちゃいそう」
「そかー。あったかいからかー……んじゃ俺寝るー」
「うん、おやすみ」
そして出てきたリンカは、仕事を手伝いながら笑っている。
「アリアンにはいってないんだけどさー。子供ができると凄く眠くなる人っているみたいで、多分それなの。」
手際よく書類を集めて積んで行く。リンカはこの世界に来る前はそういう仕事をしていたそうだ。
「そして味覚が変わったりね。とても分かりやすいよね、アリアンは」
「そうなのか……」
「うん、あのレモモンを丸齧りしてたじゃないですか。暫くレモモン食べますよ。買ってあげて下さいな」
「ああ、そうしよう」
「はい」
リンカの笑う顔に深みが出た気がする。ああ、この子の母は間違いなくリンカなのだ。私の子供を産みたいと夢想したリンカの願いはそれなりに叶ったのだろうか。
「さ! 仕事終わらせちゃいましょ。ルシ様!」
「ああ、そうだな。リンカ」
アリアンの顔だが、笑いながら仕事をするリンカはとても美しいと思った。
しかし、やはりアリアンはアリアンだった。
「う、ううーーっ! ル、ルシは俺んだぁー!」
「そんなことないですぅ~リンカだってルシ様推しですぅ~。アリアンは同担拒否なのぉ?」
「うーうーうーっ」
実にくだらない姉弟喧嘩もよくしている。いつものことだとため息混じりにみていると、今日はとんでもないことが起こった。
「ルシはぁ、ルシは! 俺んだぁーーっ!」
「きゃっ! えっ!」
アリアンが叫ぶと同時に、アリアンの体から少年姿のリンカがスポンと抜け出たのだ。そして驚きの声を上げたのはリンカの方だった。
「アリアンッ! 取れちゃった!!」
「え……あ、あああ‼︎ も、戻れ、戻れリンカ‼︎」
「分かった! あっ戻れない! どうしよう!」
「そんなことない、戻れ、戻れってばっ」
「駄目、何か異物に阻まれて……あっ! 卵だ」
「ひっ!」
二人に別れたアリアンとリンカが慌てふためいている。一体どうしたというのだろうか? 二人に別れられないといっていたのに、簡単に別れたようだ。それは願った通りの状況ではないのか? 何故二人とも慌てふためき、特にアリアンが酷く取り乱している。
「リンカぁ」
「大丈夫よ、アリアン。リンカすぐ側にいるから、大丈夫」
ソファの上に小さなリンカがすわり、その膝の上に大きなアリアンが乗って背中を丸めて震えている。
アリアンは一体どうしたのだ?望んだ姿なのだろう?私は不思議で首を傾げた。
「リンカ、聞いてもいいか?」
「ルシ様……今、私が黒竜の本体なんです」
「どういうことか?」
「こっちのアリアンにはほとんど竜の力はなくて、不安で仕方がないんです、アリアンは」
リンカが説明してくれたことはこうだ。リンカとアリアン、分離しようとすればできたのだそうだ。しかし、リンカの方に黒竜の力が持っていかれる形なら可能だったそうだ。
アリアンはそれを嫌がったし、リンカもアリアンから力をとりあげたくなかったから、アリアンの方に黒竜の力が残る方法を見つけられなくて、あんな同居の形を取っていたらしい。
「それなのに……アリアンったら、どうしてもルシ様を独り占めしたかったのね、もうっ可愛いんだから!」
「うーっ」
今まで意識せずに使っていた強大な力を失ってアリアンは酷く怯えている。そのせいでリンカにしがみついているのだ。
確かに今まで当たり前に持っていた力を失えば不安なのは理解できる。
「大丈夫よ、アリアン。分かるでしょう?私達の間にはちゃんと線が繋がってて、アリアンもきちんと黒竜の力を使える」
「分かるけど、分かるけど」
「私はこの繋がりを絶対に切らないし、阻害したりしない。アリアンを守るよ」
「でも、怖いんだ」
「そうだね、怖いね。今まで怖いを知らなかったんだもんね。よしよし」
リンカに撫でられながらアリアンは眠ってしまったようだ。アリアンが眠りに落ちた後もリンカは優しく撫で続けている。
「ごめんね、ルシ様。ルシ様もアリアンのことを憎いんじゃなかったら優しくしてあげて」
「ああ……なんというかアリアンは脆いな」
力を失って、小さなリンカにしがみついて震えるしかできない。しかもリンカの話ではアリアンもきちんと力は使えるらしい。二人は体が分かれても深い所で繋がっていて、アリアンが本当に弱くなったわけでもないのだ。
「今までアリアンより強い物はなかったから、経験したことがないんです。知らないことは怖いことだから……」
「さもあらん」
「色んなことを経験してアリアンはもっと強くなりますよ、ルシ様」
にっこり確信的に笑うリンカの良い笑顔。あのアリアンがさらに強く? 恐ろしくも頼もしいことだ。
「何いってんのよ! もう卵があるんだからする必要ないでしょっ」
「やだやだー! 卵とかじゃなくて、気持ちいーのしたいのー!」
「このエロ馬鹿竜ッ」
「うわーん!」
アリアンが一人で身振り手振りしている。しかしリンカという存在を知る私達ならばアリアンがリンカといい合いをしていると察せられた。それにうっすらリンカの声も聞こえる気がするのだ……いや、聞こえていることが多い。
「こ、こうなったら……ルシ以外と」
「浮気駄目! 絶対許さないよっ! アリアンッ」
「キャウンッ! し、しないしないっ!絶対しないっ」
「分かればいいのよ。でも浮気する相手なんていないじゃない?」
「う、うーん? 青の奴とか?」
「群青色の竜を産むつもり?」
「え、やだ」
「でしょー? それにあいつかっこよくないし、弱いし、私絶対やだ」
「そいえばそうかー……じゃあやっぱルシ! エッチしよー」
「ルシ様に迷惑かけるなーっ!」
「キャウンッ」
ほぼ毎日こんなことをしている。やはりリンカとアリアンはとても仲が良いようで、お互いに気遣いをしている。
「アリアン、寝てていいよ」
「んー……分かった。なんだろうなぁ最近すぐ眠くなるや」
「季節がいいからね。あったかいもん、リンカもうとうとしちゃいそう」
「そかー。あったかいからかー……んじゃ俺寝るー」
「うん、おやすみ」
そして出てきたリンカは、仕事を手伝いながら笑っている。
「アリアンにはいってないんだけどさー。子供ができると凄く眠くなる人っているみたいで、多分それなの。」
手際よく書類を集めて積んで行く。リンカはこの世界に来る前はそういう仕事をしていたそうだ。
「そして味覚が変わったりね。とても分かりやすいよね、アリアンは」
「そうなのか……」
「うん、あのレモモンを丸齧りしてたじゃないですか。暫くレモモン食べますよ。買ってあげて下さいな」
「ああ、そうしよう」
「はい」
リンカの笑う顔に深みが出た気がする。ああ、この子の母は間違いなくリンカなのだ。私の子供を産みたいと夢想したリンカの願いはそれなりに叶ったのだろうか。
「さ! 仕事終わらせちゃいましょ。ルシ様!」
「ああ、そうだな。リンカ」
アリアンの顔だが、笑いながら仕事をするリンカはとても美しいと思った。
しかし、やはりアリアンはアリアンだった。
「う、ううーーっ! ル、ルシは俺んだぁー!」
「そんなことないですぅ~リンカだってルシ様推しですぅ~。アリアンは同担拒否なのぉ?」
「うーうーうーっ」
実にくだらない姉弟喧嘩もよくしている。いつものことだとため息混じりにみていると、今日はとんでもないことが起こった。
「ルシはぁ、ルシは! 俺んだぁーーっ!」
「きゃっ! えっ!」
アリアンが叫ぶと同時に、アリアンの体から少年姿のリンカがスポンと抜け出たのだ。そして驚きの声を上げたのはリンカの方だった。
「アリアンッ! 取れちゃった!!」
「え……あ、あああ‼︎ も、戻れ、戻れリンカ‼︎」
「分かった! あっ戻れない! どうしよう!」
「そんなことない、戻れ、戻れってばっ」
「駄目、何か異物に阻まれて……あっ! 卵だ」
「ひっ!」
二人に別れたアリアンとリンカが慌てふためいている。一体どうしたというのだろうか? 二人に別れられないといっていたのに、簡単に別れたようだ。それは願った通りの状況ではないのか? 何故二人とも慌てふためき、特にアリアンが酷く取り乱している。
「リンカぁ」
「大丈夫よ、アリアン。リンカすぐ側にいるから、大丈夫」
ソファの上に小さなリンカがすわり、その膝の上に大きなアリアンが乗って背中を丸めて震えている。
アリアンは一体どうしたのだ?望んだ姿なのだろう?私は不思議で首を傾げた。
「リンカ、聞いてもいいか?」
「ルシ様……今、私が黒竜の本体なんです」
「どういうことか?」
「こっちのアリアンにはほとんど竜の力はなくて、不安で仕方がないんです、アリアンは」
リンカが説明してくれたことはこうだ。リンカとアリアン、分離しようとすればできたのだそうだ。しかし、リンカの方に黒竜の力が持っていかれる形なら可能だったそうだ。
アリアンはそれを嫌がったし、リンカもアリアンから力をとりあげたくなかったから、アリアンの方に黒竜の力が残る方法を見つけられなくて、あんな同居の形を取っていたらしい。
「それなのに……アリアンったら、どうしてもルシ様を独り占めしたかったのね、もうっ可愛いんだから!」
「うーっ」
今まで意識せずに使っていた強大な力を失ってアリアンは酷く怯えている。そのせいでリンカにしがみついているのだ。
確かに今まで当たり前に持っていた力を失えば不安なのは理解できる。
「大丈夫よ、アリアン。分かるでしょう?私達の間にはちゃんと線が繋がってて、アリアンもきちんと黒竜の力を使える」
「分かるけど、分かるけど」
「私はこの繋がりを絶対に切らないし、阻害したりしない。アリアンを守るよ」
「でも、怖いんだ」
「そうだね、怖いね。今まで怖いを知らなかったんだもんね。よしよし」
リンカに撫でられながらアリアンは眠ってしまったようだ。アリアンが眠りに落ちた後もリンカは優しく撫で続けている。
「ごめんね、ルシ様。ルシ様もアリアンのことを憎いんじゃなかったら優しくしてあげて」
「ああ……なんというかアリアンは脆いな」
力を失って、小さなリンカにしがみついて震えるしかできない。しかもリンカの話ではアリアンもきちんと力は使えるらしい。二人は体が分かれても深い所で繋がっていて、アリアンが本当に弱くなったわけでもないのだ。
「今までアリアンより強い物はなかったから、経験したことがないんです。知らないことは怖いことだから……」
「さもあらん」
「色んなことを経験してアリアンはもっと強くなりますよ、ルシ様」
にっこり確信的に笑うリンカの良い笑顔。あのアリアンがさらに強く? 恐ろしくも頼もしいことだ。
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