地味りんご令嬢は婚約破棄だと王子に弄ばれる【完結】

鏑木 うりこ

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「ごめん、君には迷惑をかけっぱなしだ。どうして私はこうなんだろうな、いつも考え足らずで周りに迷惑ばかりかける」

 そんなことないですよ、そう言って差し上げたかったけれど口ごもってしまった。迷惑はかけられていると思う、だってこの人が私を婚約者に据えるなどと言わなければ、今この場にいることもなかったんですから。

 でも、自分の母親を断罪しなければならなかったルイフト様にこれ以上傷つく言葉をかけることなんてできない。

「私は大丈夫ですよ、ルイフト様。最近お元気がなかったのはお母様の事が原因だったのですか?」

「……そうなんだ。嫌いだし、中央に置いておけないとはいえ母親なんだ…‥その人を追い落とすとなると流石に私でも心が沈んでしまって。本当なら子供である自分が諫めて助けてやるべきなのに、それが出来なくて追い出すことになったから……自分が情けないよ」

 がっくりと肩を落とすルイフト様。偉い王子様だとずっと思っていましたし、我がままだし、俺様であまり好きではない所が多い人でした。でもこうして項垂れていると、どうも手を差し伸ばしたくなってしまいます。

「そんなことないですよ、ルイフト様はとっても優しい方です」

 本当に心底母親の事を嫌っているのなら、こんなに思い悩んだりしないだろう。母親を何とかできないのを自分のせいだと嘆く子供。伝わらない想いがとても悲しい。

「アナスタシアは優しいな。あの時みたいに……あの頃の母上は、確かに私の母上であったのに」

「あの時?」

「ああ、6歳の時に辺境視察についていった私は、風邪で寝込んだじゃないか。そして初めて君にあって魔法のりんごを貰ったよ」

「……え?……あ!」

「忘れていたのかい?ふふ、酷い人だ。私の中では忘れられない素敵な思い出だったんだがな」

 そういえば、すっかり忘れていたわ!あの時、お母様お母様と泣く自分と同じ年くらいの男の子の事を!そうだわ、お父様からちゃんとあの子は王様の息子だよ、王子様なんだよ、慰めてやることはできないかい?と聞かれ

「任せてくださいませ!我が家の美味しいりんごを食べたらきっと王子様もお元気になりますわ!」

 と、りんご片手に突撃していったことを!そして最初の内は緊張していたけれどおしゃべりしているとその子も他の子と大して変わらないって気が付いて仲良くなったんだったわ。

「……カエルとか捕まえましたわ」

「私なんてカエルを初めて見たのに、突然投げつけられて驚いたよ」

「違います!あれはカエルがルイフト様の方に飛んだのです!だからカエルはルイフト様に捕まえてもらいたかったんです」

「まさか!私はカエルに好かれていたのかい?」

「たぶん、そうです!」

「カエルに好かれてもなあ……ふふふ」

「嫌われるより良いじゃないですか。うふふ」

 少しだけ元気を取り戻したルイフト様と、昔話をした。今思えば私と遊んだことはこの首都の王宮で育ったルイフト様には刺激が強すぎる事だったろう。

「あの時の約束を果たそうと思ったんだ。君に服を買って、一緒に首都を見て回ろうって。君が学園に来るのをずっと待っていたんだよ」

「あ……約束しましたね」

「忘れていた君もどうかなと思うけれど、そんな子供の口約束を果たそうと躍起になっていた私もどうかしていた……でも、良かったらその約束、守らせてくれないか?」

 服を買って貰い、街を散策する、ですね。あまり良くない思い出がよみがえってきました。私のような田舎娘が都会の素敵な服を買っていただいても着こなすことなんてできないとあの時分かったじゃないですか。

 口を閉じてしまった私に、ルイフト様は必死に言います。

「あ、あの時は本当にすまなかった!ほ、本当はちゃんと何か言おうと思っていたんだ!でも、その、着替えて出てきた君を見たら……あの……可愛すぎて……」

「え」

「こう!ふわってしてるし、きゅっとしてて、その、あの、ごめん……またなんていえばいいか分からない……でもすごく好きだなと……」

「今、なんて……?」

「か、可愛くて、好きだなって……」

 な、何を、何を言っているのかしら?この人は……?す、好き?わ、私の事を?え、どうして?それに可愛い?え、誰が?私??そ、それはないでしょう?わ、私は田舎のりんご娘よ!

「え……?」

「……あ……!ご、ごめんっ!きょ、今日は、も、戻る!ま、また明日!」

「あ、あ、ハイ!わ、わかりま、分かりました!」

「お、おやすみっ!良い夢を!!」

「はいっ!」

 ルイフト様は走って行ってしまった。びっくりした!びっくりした!びっくりした!突然何を言い出すのかしら!?あの人は!

 でもうちで作っているりんごより真っ赤な顔をしていたルイフト様。きっと私も彼に負けないくらい真っ赤なりんごより真っ赤な顔をしていたと思うの。

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