【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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61 話のわかる大人

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「で、何か聞きたいことがあってここまで来たのであろう?」
「違いますけど」

 マリアネットの頬が一瞬だけ引き攣ったけれど、そんなことは知らんし。
 
 始めての旅で、目的地に到着してホッとしたのかマリアネットが用意してくれた部屋のベッドが心地良すぎたのかラセルはすっかり夢の中だ。私も隣で丸くなって寝ていたのに、また勝手に連れて来られてた。感じが悪いぎゅ。

「慈悲将軍の配下全てがこの国に入り込むと言われたら警戒をせざるを得ない」
「慈悲将軍と呼ばれた男は死にました。彼の率いた部隊は瓦解、たまたま居合わせた者達が旅行してきただけです」
「それをしんじるとでも?」

 まあ逆の立場なら信じる訳がない。でもね?

「マリアお姉さんは私が何に見えますか? 」

 話の腰を折る。我が国の重鎮ならば顔を真っ赤にして怒る所だろうが、マリアネット皇帝陛下はきちんとこちらの意を読んでくださる。阿呆でない元首は有難い。

「狐だ。真っ白な子狐にしか見えん。だが、お前は喋るし、慈悲将軍と似た魔力を持っている。イアン・ワイマールと全くの無関係という事は出来ない」
「そう、私はとても理解不能な存在になってしまいました。だから、あの国の人達の興味を引く前に逃げたかった……ラセルを彼らに渡してはならない、そう思ったから。使える物は全て使ったに過ぎない」

 マリアネットは無表情だった。硬い皇帝の顔をしている。彼女の中で初めて知った情報を精査し、何かこの国の為になるか考えているんだろう。

「私の望みはただ一つ。ラセルが思うまま素直に明るく生きていける事。何者にも強要されず、脅かされずに彼が幸せだと思える人生を歩むこと、それだけ。死んだ私の魂の最後の残り火が彼の道を照らす手助けが出来たらそれで良い」

 私の部下達はもう立派な大人だから、私がどうこういわなくても自分の道を進めるだろう。でもラセルにはもう少しだけ手助けがいると思う。
 後一年か二年……いや、半年でもラセルの側で手伝えたらそれで良い。

「それだけだよ、本当に。ファーマ皇帝マリアネット陛下」

 私の言葉を聞き終えると、マリアネットは細く息を吐き出した。ふーーっと言いながら、後ろにあった椅子にどっかりと身体を預ける。

「……これだから慈悲将軍は好かん」

 嫌われてしまった。

「あんな真摯な目で真実を話し、自分はどうでも良いから他人を助けろという……タチが悪い」

 えっ……私のどこが悪いんだ?!

「真実には真実で返さねば本当の信を得る事は出来んのに、何の警戒もなく曝け出してくる。お前には恐怖心はないのか?」
「ありますよ。ただそれ以上に人を見る目があると自負しているだけです」
「かーーっ!それだよ、それ!そこまでいうのに何故私と結婚してくれないのだ?!」

 えー……その話は今は全く関係ないでしょう……。
 気配を殺して部屋の隅に隠れていたリゼレン大隊長がブッと吹き出してる。
 後で覚えてろよ、その美形な眉間に肉球パンチを叩き込んでやる。







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