【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

文字の大きさ
69 / 229

69 一級ぅ〜

しおりを挟む
 ラセルは日々学んでいる。マリアネットの考え方、公平を知る心、そしてーー。

「どうするのだ、イアン。ラセルは貴族に関わらせるのか、否か」
「決めかねている所なんだきゅん……」
「そうだな。だがラセルの天稟ではどう少なく見ても一角ひとかどの人物になる。確実に貴族連中や神殿から目をつけられるぞ」
「うん……」

 ラセルの成長は早い。なんでも貪欲に飲み込んで、自分の中で消化する能力も高い。今は大人に囲まれて過ごしているから、ラセルの能力の高さは目立たないが同年代の子供達と並べば頭二つ分は飛び抜けているのがすぐに分かる。いや、もっとかも知れない。

「ラセルをあの汚い世界に連れて行きたくないって思ってしまうきゅん……」
「そうだな。悪意と陰謀だらけの世界に連れて行きたくないな。その道しか用意されていなかった私とは違って」
「きゅぅん……」

 自分が歩まざるを得なかった血みどろの道を振り返るような冷ややかな目でマリアネットは少し遠くを見る。マリアネットは繰り上がった皇帝だった。嫡男であった兄が暗殺され、第一王女はもう国内の貴族に嫁いだ後。お鉢は第二王女だったアリアネットに回って来たのだ。本当は皇帝なんてやりたくなかっただろう。継いだ時は地盤も弱かっただろうし、勉強も足りなかったはずだ。
 生き残る為に必死でやって来た結果が今の彼女を形作っている。

「自由にさせてやりたいな」
「うん……」

 でもそれは我々の希望であって、ラセルが何を選ぶのかは分からない。

「イアーン!あそぼー!」

 窓の外からラセルの元気な声がする。あの笑顔を少しでも長く守りたいものだ。

「行ってくるよ、マリアお姉さん」
「ああ、行ってこい、子狐イアン」

 私は窓をぴょんと飛び越え、庭の芝生の上に降りた。

「ラセルー何してたのー? 」
「えっとね、こっち!レオン、フィン、セドリック。この子がイアンだよ!イアン、僕ね友達が出来たんだ!」
「えっ」

 ラセル、その子達って……!

「うおっ本当に狐だ」
「白くてふさふさだねぇ」
「お前ら、まず狐が喋ることに驚けよ」
「イアンが喋って人間と同じ姿になれることは説明したろ?」
「いやでも、普通驚くし」
「わぁ可愛いねぇ。私はフィンだよぉ~フィン・ウル・アレイジー。いつもは神殿に住んでるんだぁ」

 ラ、ラセル!なんでこんな厄介なお子様達と友達になってるの?!

「白いんだな。手足が黒いぞ。ラセルの家族だって?不思議だなぁ」
「父さんも母さんも死んじゃって残ったのはイアンだけなの」
「……それは辛いな」
「でも皆優しいから、なんとか暮らせてたよ!」

 後ろを振り返るとマリアネットも頭を抱えている。貴族や神殿に関わらないでほしかったのに、なんだかもう仲良くなってるーー!

「まあいいさ、向こうの庭に迷路があるんだ。行こうぜ!イアンもな」

 このリーダーシップをとっているのがレオン。レオン・リース・ファーマ。殺されたマリアネットの兄の忘形見。今の所第一帝位継承権を持っている。

「えー私、あの迷路嫌いなのぉ~イアン、一緒にいてくれる?」

 少し小さいのがフィン。フィン・ウル・アレイジー。この国の中央神殿に住む次期教皇候補。神聖力がずば抜けて高い。

「あれはコツがあるんですよ。植え込みの下を抜けて……」

 小さいのにもうメガネが似合うのはセドリック・バンズトン。現ファーマ宰相の息子。と、ミニィが調べ上げていてくれた。
 物っ凄い貴族と神殿の中枢のお子さん達と仲良くなってるぅ~~。

「迷路だって!楽しみだね、イアン」
「そ、ソウダネェ……ラセルぅ」

 君って子は……でもこれがラセルなのかも知れないなぁ。いつのまにか勝手に権力者のお子さんたちと仲良くなってた……だ、大丈夫、そういうことをフォローしてこその見守り役なんだからな!私はやればできる子、やればできる子なんだから!

「イアンー早く~置いてっちゃうよ~」
「あ!待ってきゅーん!行くきゅーん!」

 まずは子供達について行かなくちゃ!とりあえず駆け出そう、あとはどうとでもなる!






しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

秋風の色

梅川 ノン
BL
兄彰久は、長年の思いを成就させて蒼と結ばれた。 しかし、蒼に思いを抱いていたのは尚久も同じであった。叶わなかった蒼への想い。その空虚な心を抱いたまま尚久は帰国する。 渡米から九年、蒼の結婚から四年半が過ぎていた。外科医として、兄に負けない技術を身に着けての帰国だった。 帰国した尚久は、二人目の患者として尚希と出会う。尚希は十五歳のベータの少年。 どこか寂しげで、おとなしい尚希のことが気にかかり、尚久はプライベートでも会うようになる。 初めは恋ではなかったが…… エリートアルファと、平凡なベータの恋。攻めが十二歳年上のオメガバースです。 「春風の香」の攻め彰久の弟尚久の恋の物語になります。「春風の香」の外伝になります。単独でも読めますが、「春風の香」を読んでいただくと、より楽しんでもらえるのではと思います。

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

処理中です...