【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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78 思いと願い

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 そんなに頑丈な紐ではなかったのに、外れないことに私は驚いていた。狐の手足は縄抜けに適していないことにやっと気が付いたのだ。これは厄介だぞ、と思っても取れないものは取れない。ちょっと長くなっている鼻先も縛られてしまっては無力だ。
 
 うーむ、このレスネミル伯爵とやらは間抜けだが、動物の扱いには慣れているようだ。狩りなんかは得意な男だったのかもしれない。そういえば私を捕まえる時もやたら手際が良かったな。一瞬で縛り上げられて、麻袋に突っ込まれたからそうやって動物の子供を捕まえて売ったりもしていた輩なのかもしれない。

「ほ、本当に大丈夫だろうな?」
「外で見つけて保護しましたと言えば、陛下はお喜びくださるはず。そうすれば伯爵の覚えもめでたくなりまする」
「う、うむ!そうであるな」

 何度も部下に心配そうに声をかけるレスネミル伯爵はきっと気も小さいんだろう。クレヤボンスから聞いた話ではマリアネットは兄殺しに直接指示をだしたサガラート公爵家はきれいに断罪したが、それに連なる者達の処分はそう厳しくしなかったはずだ。連帯責任として縁故ある貴族を処分しても良かったのだろうけれど、計画に加担した者以外は許したはずだが……?今、処分されていないということはこのレスネミル伯爵は許された貴族のはずなのに、何をいまさら、マリアネットに取り入ろうというんだろう?
 まさかとは思うけれど、空いたサガラート公爵の爵位でも欲しいとかいうんだろうか?まさかね。自らマリアネット皇帝陛下の尻尾を踏みに行くような愚かな者が公爵になって欲しくないなあと思うな、他国ながら。

「い、いつ陛下にお伝えしに行ったらいいだろう」
「すぐの方が良いのではないでしょうか」
「し、しかし日も暮れてからでは無礼にあたらんか?」

 私を捕まえた伯爵達はもう聞いておくべき情報を含んだ話はしていないようだ。彼らの頓珍漢な話を耳に入れつつも、昔のことを思い出す。まだ私の養子になった頃はミニィが良く攫われていた。ミニィは意地でも何も喋らなかったから殴られたりしていたことが多かった。迎えに行っても強がっていて、落ち着いて家に帰ってから泣いていることが多かった。タムやクレヤボンスを引き取りに行ったり、捕虜交換をしたり……脱出を手伝ったりしたこともあったな。ヘイズなんかは武器を渡せば大暴れしたから、帰り際に辺り一面壊して逃げて来たこともあったっけ。
 
 そういえば一二度、王太子を助けた事もあったな。あの頃は普通に会話もしていたし、感謝もされた気がしたけれど、いつからあんなに嫌われていたんだろう……もう忘れようとしてもなかなか忘れられない。思い出してもあまりいい気分なことではないのに、理解はできなかった。

 ゆっくり、心を落ち着かせるのに鼻から息を吐く。こうなっては仕方がない。今度は私が助けを待つ番だし、きっと助けは来るはずだ。ラセルは必ず来るだろうし、ミニィ達が放っておくはずもない。

待ってて!イアン、すぐ行くからね!

 そんなラセルの声が聞こえてくる気がして、目を閉じる。本当なら危ないから来て欲しくないし、ミニィ達に任せて留守番をしていて欲しいのに。
 一番最初に顔を出してもう大丈夫、と両手を広げて抱き上げてくれる人はラセルでいて貰いたいと思うのだった。
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