【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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83 ありがたい(マリアネット視点

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 アウレア王太子が慇懃に頭を下げて出て行ってから、影の者に紛れた影を呼んでみる。

「いるんだろ?クレヤボンス」
「怪盗うさこチャンです」

 分厚いカーテンの後ろ側から可愛らしいパペットのウサギがちょこんと顔をのぞかせた。何度も会っているが、いつも印象が違うそんな男。多分、男である事は確定だが、いつも会っていたあの顔は本当のクレヤボンスの顔かどうかも分からない……が、私がイアンの味方である限りクレヤボンスは裏切らないだろう。

「あの王太子はいつもああなのか?」
「あの人の瞳に真実が浮かぶのはウチの大将がいる時だけです」
「ますます気持ち悪いな」
「同意見です。気持ち悪いついでに聞きますか?きっともれなく吐きますよ、あいつの性癖は~」
「いや、やめておこう。まだパムから貰ったおやつが残っているんだ、美味しく食べたい」
「ちぇ」

 こいつ、本気で残念がったな……!

向こうハイランドまで追うとは思えんが、適当に散策させて帰すつもりだ。お前達も適当に切り上げて主の元へ向かえ」
「そうさせて貰います」
「王太子はラセルの存在に気が付いていると思うか?」

 慈悲亡き地より立った多分真なる王に一番近い少年。もし我が甥レオンが次期皇帝となるなら、その友に相応しいラセル……そんな打算もあって、レオン達をラセルに会わせたんだが、イアンは何も言わずに許してくれた。相変わらず懐が広い男だ……今は子狐だが。

「ラセルの家からラセルが王に相応しいと感じ取れる痕跡はすべて消してきましたが……分かりませんね。あの王太子はウチの大将に近づくすべてを嫌悪していましたから。独占欲が異常なんですよ」
「おやつがマズくなる情報はいらんといっただろう、いやがらせか? 」
「御意」
「御意じゃねーよ! クソウサギ!! 」
「キャッキャッ」

 パペット人形が嬉しそうにパタパタ手を振っている、コンチクショー!イアンの部下達はこちらの調子を狂わせて来るのが上手すぎるが……不快ではないのが更に困ったものだ。

「あーあ。本当にイアンが私の夫になったらよかったのにな」
「惜しいことをしましたねぇ」
「本当にな。流石に狐を夫にすることはできんし、ラセルに求愛してはイアンに威嚇されてそうだし参ったなあ」
「ミニィ辺りで手を打っておけば良かったのに。あの子も中々使えますよ」
「年下は好かん!」
「残念」

 過剰にへりくだりもしない、私を騙してやろうという気もない、それでいて馬鹿にするでもない……いや、多少は馬鹿にされているな?年下の女だと思って……。皇帝でもあり、貴族でもあり、女でもあり、年下でもある。私の一面だけではなく全てを見ようとするイアンの部下達はやはり素晴らしい。

「あーやはり私は結婚出来んかもしれんなぁ。イアン・ワイアードよりいい男がいる気がせん! 」
「どんまい」
「クソうさぎー!」

 一瞬でも皇帝の仮面を外せるのは有り難いな。あの仮面は息が詰まってしまう……イアンもこうやって将軍の仮面を少し緩めて息をしていたのかも知れないな。

「良い知らせが聞ける事を期待している」
「了解です」

 そしてうさぎはポトリと床に落ちた。操り、声を当てていたクレヤボンスの気配はきれいに消えている。

「ウチの影達もこれくらいやってくれたら良いのになぁ」
「無茶を言われますな、かの方は伝説ですよ」

 クレヤボンスが消えて我が城の諜報部長が返事を返した。

「まあ、良い刺激になっただろうさ。精進しろ」
「はっ! 」

 イアン達のお陰で我が国の色々なところにカツが入っただろう。ありがたいことだらけの滞在だった。
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