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151 だって山くらい動かせるよ
しおりを挟む「じゃ、俺ら行ってきます」
「頼むね~」
私とラセル、リゼレン君とミニィがリア伯爵の屋敷の部屋に通され、泊まる場所が決まるとタム、ヘイズ、パムは市場調査に出かけた。多分この屋敷にはたまにしか戻ってこないと思う。
「早いですね」
リゼレン君が感心したように呟くけど、私達は基本こういう行動なのでいつも通りとしか思っていない。
「そりゃ遊びに来たけど、それ以外の目的もあるでしょ?初めての土地だから細かい下調べは足を使わないと駄目だからね。ミニィもういい?」
「もう少し」
部屋の中をあちこち触ったり叩いたり……ミニィはこの部屋に隠し通路やのぞき穴、魔道具の類が仕掛けられていないか入念に調べている。
「大丈夫だと、思いますが」
「リア伯爵が仕掛けていなくても違う人間が何かしている場合もあるからね、調べておくに越したことはないよ。さて、私達は地図でも見ようか、ラセルこっちきて」
「なあに?イアン」
ちょうど通された部屋……リゼレン君とミニィが泊まる部屋だ。私とラセルは隣の部屋だけど、こちらの方が広いからね。高さの低い応接用のテーブルとソファのセットも置いてあり、ちょうど良くクレヤボンスが手に入れておいてくれた地図が広げやすい。
「これがこの町の地図だ。上に港、下にこのお屋敷。お屋敷は少し高くなっているから……過去に何度か大きな波が来たことがあるのかもね」
「そうなの? じゃあ町の人は波にさらわれちゃわない?」
「でも海や港に近い方が生活もしやすいし漁もしやすいでしょう? 何かあったらこのお屋敷が避難所になるんだろうね。見た所庭も広いし、そういう目的で作られているように見えるよ。代々ここの領主は街の人達のことを考えているみたいに見える……いいひとだね」
「蔵も多く見えますね。保存食の貯蔵もしているのかも」
通された部屋は2階で、中庭が良く見える日当たりのいい場所だ。そこから外をちらっと見ると確かに蔵がいくつも見える。乾燥した魚なんかがいっぱいはいっているのかもしれない……災害があった時に人々に配ったりしてるのかな?
「そして良いのか悪いのか、私達が馬車でやって来た王都方面は道が通しやすい平地だけど、地図でいう右は高台になっていて、凄く儲かっている軍港がある隣の公爵領へ行くには遠回りが必要なくらい切り立った峰がそびえてるねえ……このせいで向こうから人が来ない、ってとこかい?」
「その通りです。公爵領へ抜ける道は遠回りするよりほか在りません。地図でいう左側は農耕地として使える程度ですが、こちらは特に栄えているということもなく……」
「うん、通行しやすいこっちからお金を引っ張って来れれば楽だったんだけどねえ、ラセル、どう思う?」
「えーと……こっちの公爵領はお金もいっぱいあるし、人もいっぱいいるけど、この山が邪魔でこっちに人が来れないんだね?」
地図の上で指を滑らせて、現状を確認する。ラセルが通る指もやっぱり高くて鋭い峰に引っかかってしまう。
「そうなんだ」
「じゃあこのお山を壊しちゃう!」
「壊せるかなあ? 窓から見てみよう」
ちょうど部屋の点検が終わったミニィが窓辺で手招きをしている。多分そこから見えるんだろう。リゼレン君も含め、4人で窓から顔を覗かせるとそれはそれは見事な高い峰が見えている。
「わあ! 急に高くなっているんだね。雲もかかってる……かっこいい!」
「絵に描いたような鋭い峰ですね。仙人でも住んでいそうな気がします」
「これは……趣がありますね。」
なんだか画家がいたら喜んで表題にしてくれそうなほど立派な風景だ。ふむ……?
「……壊しちゃうの、もったいないかも」
「そうですねぇ」
「壊そうという発想が出て、更に実行できそうなあなた達がちょっと怖いですけどね」
リゼレン君のいっていることが良く分からないな。別に移動させるとかじゃないし、壊してしまうだけなら簡単でしょう。
「義父上、アレを馬車が通れる幅くらい横に動かして道を通してはどうです? 動かすだけなら景観もそのままですし、馬車が通れば向こうから人が来ますよ」
「いや、ミニィそれは大変だよ。今の私じゃそこまで魔力はでない。君とタムとラセルに手伝ってもらってもきっと1年くらいはかかりそうだ。1年は長いよ」
「そうですね」
「えっ! 動くの? 足とか生えちゃう!?」
「いえ、丸太か何かに乗せて横にコロコロって動かす感じです。結構簡単に動きますよ」
「わーー! やってみたい!」
だから1年くらいかかるって言ったでしょ?リゼレン君が何か遠い目をして
「これだからこの人達は嫌なんですよね……ホント。こんなんだから帝国の戦力でもあのクソちっちゃい国を亡ぼせなかったんですよ、やってられません」
なんて呟いてた。なんかごめんね?
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