【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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157 美声かもしれないヘイズ

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「リア伯爵のやることはお隣の公爵家と交渉して道路の通行税を安く取り纏めることです!」
「だそうです!」
「はあ……」

 リゼレン君が手抜きをし始めた。最初は私のいうこときちんとリゼレン君自身の言葉に直してリア伯爵に伝えてくれていたのに、最近は直に私を連れて行ってこの調子である。色々包み隠すのが面倒になったのか何なのか。
 リア伯爵自身も子供の私が指摘することを最初は訝しんでいたけれど、ちゃんとやってくれている。

「ねえねえ、イアン……」
「どうしたの?ラセル」
「海……」
「行こう!」

 そういえば陛下の課題の事ばっかりで私達の目的が後回しになっていた。

「岩場の方に行きたいので、長めの水着を用意しました」
「わーい! ミニィありがとう!」
「ミニィさん、ありがとう!」

 思ったら即行動の私達、午後には海に来ていた。

「では、ヘイズ頼んだ」
「良し、
「おー!」

 ヘイズが思いっきり息を吸い込んで大声で歌い始めた。

「うわっ!」
「あはは、ヘイズの声は大きいからね」

 あまりの大きさと、音程の外れっぷりに私たちは耳を塞ぐ。

「イアン!どうしてヘイズさんが歌を歌うの?」
「そりゃ海の精霊に挨拶してるんだよ」

 ちゃぷん、ちゃぷんと揺れる波間から珍しい物を聞きつけて水の精霊が顔を出す。

「可愛らしい水のお嬢様方~遊ばせてくださいねぇ」

 その水面にクレヤボンスが地上の花やきれいなレース、リボンなんかを投げ込んで行く。相変わらず乙女心がわかってるおっさんだ。
 海に棲む水の乙女達は非常に機嫌を良くしてくれたので私達は今後この海で溺れることはないだろう。

「うっす! 終わるっス!」
「お疲れ様ーヘイズ」
「何度やってもしんどいなぁー! 変わってくれよ、大将」

 戦闘で弱音なんて吐いたことがないが、歌ともなると途端に嫌がる。でもヘイズが適任なんだよ。

「どうして?」

 ラセルが不思議そうに首を傾げる。まあ声ならヘイズよりミニィの方が美声だし、上手さでいったらヘイズはダントツに下手くそだ。

「思いを乗せて歌うのはヘイズが一番届くんだ。精霊は素直な心を愛するからね。私やミニィなんかだと上手に歌おう、よく見せようと邪念が混じってしまう。それは精霊にとっては汚い物に感じられる……」
「そうなんだ……」
「うん、あと単純に声が大きいから遠くまで聞こえる!」
「それはすぐわかった!」
「じゃ、遊ぼう!」
「うん!」

 岩場からぴょんと海に飛び込む。少しだけ深くなっているから、足をぶつけることもなかった。

「しょっぱーい!」
「ほんとだきゅん!塩辛いきゅっ」

 つい遊びに夢中になって狐の耳と尻尾が飛び出てしまった。でもこの辺には私達しかいないから問題ない。

「むっ!この海藻は……新種! いや、ここだけの特殊変異種かな?」

 タムは辞典を片手に海藻の採取に精を出している。

「うおーー! シマシマの魚、取ったぞー!」

 ざぱーんと水面をかき分けてヘイズはモリの先に大きな魚を突き刺して現れる。

「美味しそうです! 早く下さい!」

 陸でパムが焼く準備万全といった格好で待ち構えている。

「この先の地形はどうなんですか」
「どうやら海からも来る事は出来ないらしい。岩礁が多いらしいね」

 ミニィとリゼレン君は地図を見ながら辺りを再調査している。

「大将、ラセル。こういうピンクのきれいな貝を拾って来て下さいよ」
「わかった! クレヤボンス」
「うん、任せてー!あ、この巻貝もツルツルで可愛いよ」
「おおっこれは可愛らしい!流石ラセル、センスありますね」
「わーい」

 それぞれがそれぞれで楽しんでいる。そしてパムの号令で皆集まって来て美味しい料理を食べるのだ。

「海って楽しいね!」
「今度は南の方にある砂浜に行こうきゅん!」
「良いですね、砂地に生える海藻はきっと様相が違うはず」
「砂んとこにいる魚って美味いかな?」
「砂だしが必要でしょうか?」
「どのくらいまで船が寄れるか確認しないとね」
「古くなっている地図もありそうです。あと砂浜で走ると足腰の鍛錬になりますよ」

 海って凄く楽しい!
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