【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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172 私はもうそういうの要らないです

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「どう?」
「難しい……けど、分かる。えっと……この聖者様は、貧しい人を助けたんだよね」
「うん」
「でも一人の貧しい人を助けたら、周りにいっぱいいた貧しい人は全員聖者様に助けてって言ってきた。聖者様派一生懸命助けたけど、人が多すぎて……頑張り過ぎた聖者様は死んじゃった……本当なら聖者様はこの国の神殿に行ってもっとたくさんの人を助けるために修行するはずだった」
「うん……」
「結局、聖者様が死んじゃったからその国は助からなくていっぱい人が死んで滅んでしまった。聖者様が最初の貧しい人を見捨てていたらこんなことにはならなかった……」

 ラセルは今、物語の本を読んでいる。クレヤボンスに頼んで集めて貰った本の中の一冊だ。帝王学とまではいかなくても必要になる知識だから。

「目の前の人を見捨てることをできる人は少ないけれど、結果はもっといっぱいの人が死んじゃった」
「そう、後からになって気づく、でもそれは遅くて……だから勉強しなくちゃいけない、分かった?」
「でも学校なんかやだーー!」
「帝国では貴族の子供の義務だって。ほら、入学許可証も来ちゃったんだから諦めて?」

 そう、学校に行きなくないとラセルがゴネてるんですよ。便宜上ミニィの養子になったラセルは貴族の子息、貴族の義務が発生中な訳だ。

「レオン達にも会えるよ」
「会えないよ! レオン達は上級クラスだってクレヤボンスさんが言ってた! ぼくは新興貴族扱いだから下級クラスだもん!」
「あいつ、余計な事を」

 ちっ! 狐って舌打ち出来たようで、私は上手に悪態をつく事ができたけれど、ラセルは学校には断固行きませんモードを解除してくれない。

「イアンも行くよね?!」
「私はおじさんの時にきちんと卒業してるから今更学ぶことはないよ」
「ずるい!」

 そんな事言われてもなぁ。私も学校は嫌いだった。堅苦しいし、目立つと上位貴族から目をつけられるし、手を抜きすぎると進級が危ういし、何よりお金がかかる。学校に行くくらいなら魔物でも狩って換金してた方が良い。

「今のイアン・ワイアードとしてガッコ行かなきゃならんですよ? 大将ぉ。ミニィ坊に恥かかせるつもりっすか?」

 カーテンの隙間から熊のパペットが顔を出した。この熊、小さなメガネをかけていて、クレヤボンス劇場の中では先生の位置にいる熊さんだ! くっ……。

「イアンが一緒なら頑張れるかもっ」
「いやいや、どちらにしろ私は弟なんだから学年は違うよ、一緒じゃないよ!」
「大将、安心して下さい。帝国には学級スキップ制度とかあります」
「クレヤボンスッ! 余計な事をーー!」

 熊先生は「くまままっ」と変な笑い声を残してサッと身を隠した。なんて事だ……私も学校に行くのー?! またー?!
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