【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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184 お弁当さん屋さん

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 一応、なんでも茹でるのはお腹が痛くならないための処置らしい。確かに寮にはたくさんの高位貴族の子女が在籍している。そんな中で食事が原因で病気になったりしたら大変だ。だから何でもしっかり火を通し茹でてしまう。
 そんな調理法だから味が薄くなり……かけるソースが濃くなっていく。そういう事だった。

「だからといって食事の楽しみを奪われるのはとても辛い」
「分かります……」

 なんと寮にはレオン達も在籍している。レオンやセドリックなんかは家から通えばいいと思うのだがその辺はマリアネットの意向と、レオン自身もそれを望んだらしい。

「皆と同じ生活をしてみたい。平民の生活は無理でも少しは城以外の事も知っておきたいんです、陛下」
「そう……だな。うーん……そうだ、イアンも入学してくるしあの男がいれば何とかしてくれるだろう」
「イアン? 狐のイアンですか??」
「ああ、あのふわふわの子狐のイアンだ。何かあったらあの子狐を頼れ、いいな? レオン」
「は、はあ……?」

 そんな会話があったとかなかったとか。私の元にマリアネットから贈答用のチョコレートが一箱届き、その中に手紙が入っていた。レオンとセドリック、フィンを頼む、この三人は帝国の中枢に立つだろう子供達だ。ラセルだけじゃなくてこいつらも教育してやってくれ……だって!

「きゅんきゅんっ! 私はチョコレートは食べないぞ! 狐はチョコ食べちゃ駄目だってミニィがいってたんだから! ちょっとならいいけど、こんなにたっぷりは食べられないんだからっ」
「人間の姿になっているときも駄目なの?」
「姿が変るだけだもの、中身は一緒なんだよ?」

 そうしてそのチョコレートは全部パムに横流しした。

「わあ~これは高級なチョコレートですね。何にしましょう? チョコクッキー、チョコマフィン、チョコケーキでしょうか、チョコプリン?」
「パム~私はどれも食べられないよう~」
「分かってますって。チョコ抜きもご用意しますよ」

 そうして私達は学園の隣に立っている寮から学園の校門までの短い間に立ち売り販売しているパムからお弁当を購入したのだった。

「パム! おおパム!! 救世主パム!! 俺もお前が来るのを心待ちにしていたー!」
「あはは、タムも元気そうでよかった」
「元気じゃねえよ、ホントマジで……大事に食うから!サンキューな!!」
「はぁい」

 ほぼ一緒に学園に入ったはずのタムとはこの時間にしか顔を合わせない。

「あ、ラセルと大将! 久しぶり」
「タム、どう? 学園は」
「すげーーっすよ! 大将! あんなにいっぱい本があって更に温室がいっぱいあるッス!しかも全部放置されてて使っていいか?って聞いたら放置されてるから使っていいっていうんスよ!イヤアア最高ッス!!魔力で温度管理するんですけど、装置はちょちょいと弄ったら直りましてね。もう熱帯から寒帯までどんな植物でも育て放題ッス!はーーたまらんたまらん」
「そ、そか」
「じゃ!朝の水やりがあるんで!!今日は魔力水にしようかなぁ~ハアまたねー!」

 タムは物凄く大きな特製お弁当を三つ受け取って走って消えた、早い。

「もしかして朝昼晩お弁当なの?」
「そうみたいですよ、お弁当があれば食堂に行く必要がないのも最高だって言ってましたし」
「学園の中でまったくタムを見ないと思ったらあんな感じだったんだ」
「楽しそうですね」
「……うん」

 やっぱり来て良かったじゃないか。あんな生き生きを通り越して大興奮のタムを見るのは久しぶりな気がする。

「ほら、ラセルもイアン様も今日のお弁当ですよ。頑張ってお勉強してきてくださいね」
「わ、ありがとうパムさん! これがあれば頑張れる~~」
「授業内容は大体わかるんだけど、細かい最近の動きはやっぱり違うしね」
「ほわぁ……頑張ってるお二人にはミニサンドイッチも上げましょうね~。お昼になる前にお腹すくでしょ」
「うん!途中でお腹がグーグーなるんだよ」
「成長期だね」

 可愛い布にくるまれたお弁当箱の上に更に小さなお弁当箱が乗っている。美味しそう!

「勿論私達にもあるんだろうね? パムさん」
「おお、レオン殿下。おはようございます。ありますが、今日はフィン様の苦手なトマトが挟まっています」
「やだぁ~~パムさんの意地悪ぅ」

 レオンとセドリック、そしてフィンは三人でまとまってやってくる。フィンは心底嫌そうな顔をしたけれど、私達はそれを笑ってみていた。

「パムさん、そのトマトには何か秘密があるんでしょう?」
「勿論ですともラセル、良く聞いてくれました! なんとこのトマトは、海の傍で作っているんです。海のお塩に妨害されて強く小さく育ったこのリアトマトは……物凄く甘いのです! 騙されて食べてみてくださいね」
「ううっパムさんになら騙されて食べてみる……この前のナナスも美味しかったし」
「はい、パムにお任せください」

 ぽよんと、胸を叩いてパムは自信満々。パムの手にかかればどんな食わず嫌いも克服しちゃうからね。

「ささ、お弁当さんですよ。護衛騎士の皆さんにも「毒見用」をご用意しました。召し上がって下さいね」
「ありがとうございます!パムさん。昨日の「毒見用」も凄く美味しかったです!」
「お任せください。毎日「毒見」していただかなければなりませんからね」
「ま、毎日……毎日「毒見」して宜しいのですかっ!」
「勿論ですとも!」

 なんだかちょっと変な会話だけれど、パムにかかればこんなこともあり得るのだ、うん。

「しかし、パムさん。騎士達のお弁当の方が肉が多い、狡くないか?」
「殿下達は色々な物を食べて頂きたいので、色々な素材を詰めるとお肉は減ってしまうんです。それに成人男性と同じ量のお肉を食べると……ぽよぽよになりますよ?」
「そ、そうか……確かにそれはあるな……うん」
「その代わりレオン様達のお肉はとっても美味しい物が入ってますから、食べてみてくださいね」
「おお! それは楽しみだ。パムさん、ありがとう」
「はい~では私も帰りますね~また明日」

 パムのお弁当のお陰で私達は元気いっぱいなのだ。
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