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218 それも悪くない
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「僕、王様にならないよ」
「ラセル、今なんと?」
「僕は王様にはなりたくないんだ」
私の色々な夢や希望や計画とか、老後の楽しみなんかが音を立てて崩れた。
「うーん……!」
「ど、どうしよう! イアンが倒れちゃった!!」
ラセルの衝撃的な発言を食堂で保存食を齧りながら聞いて、私はぽうん、と狐に戻りながら後ろへひっくりがえって気絶したらしい。
「イアン様?! イアン様ーっ!」
厨房からドタバタとパムが走ってきて、私を拾い上げ、ラセルと一緒にタムの温室まで走り、三人でミニィの屋敷まで帰ってきたらしかった。
「熱が下がりませんね……」
「ぼ、僕が王様にはならないよっていったから……」
「あー……」
「なるほどー」
「そうですか」
私はそのまま高熱を出して意識が戻らないまま唸っていたらしい。私が倒れた理由に全員が納得して、オロオロするラセルを慰めてくれたらしい。
「ぼ、僕が悪いのかな……」
「いいえ、違いますよ。自分の心に嘘をついてはいけない。もし、ラセルが王様になりたくないのに王様になったとしたら……その時、義父上は今以上酷い有様になっていたでしょう、むしろ今知れて良かった」
「ほ、ほんとに?」
「ええ、本当です。能力や資格があっても本人がそうなりたくない、別のことがしたいというのなら、やりたい事をやらねばなりません」
「……うん」
そうなんだ、いくらラセルが最高の王様になれる器があるからといって、ラセルが王様になりたくないなら、なるべきじゃない。
いくら私の夢がラセルが素晴らしい王様になる事だとしても、本人が望まない事を強要することなんてできないし、絶対にしたくない。
「ラセルのしたいことはなんだい?」
「僕はイアンと一緒に冒険をしたい。見守ってくれるんじゃなくて、一緒に隣に並んで冒険するの」
「……なるほど。でも義父上の隣に並ぶのは大変ですよ? あの人、呼吸をするようにとんでもない魔法を非常識に繰り出しますし、そして剣の腕も達人級だし、体術も仙人並みに凄い」
「……それはなんとなく分かってる……でも、僕はイアンと一緒が良いんだ。それが、僕のしたいことなんだ」
私がベッドで丸くなって寝込んでいる間、ラセルは学園へ戻って行ったらしい。目を覚ますと昔から見慣れた連中の顔があってちょっとほっとした。
「あ、イアン様が起きましたよ」
「義父上ぇえええ」
「狐だからなあ、人間用の薬じゃまずかっただろうし、ひとまず目が覚めてよかった」
しばらくぼんやりと横を見ていたけれど、天井を向く。えーと、私はどうして寝ていたんだっけと逡巡して原因人物がいなかったことに気が付いた。
「ラセルは?」
「学園ですよ、きちんと以上に授業を受けているそうです。クレヤボンスが毎日教えてくれます」
「そうか……頑張っているんだな」
「ええ」
皆、それ以上何も言わなかった。大丈夫、分かっているよ。ラセルを立派な王様にしたかったのは私の願いでラセル本人の願いじゃない。最初はラセルも王様になりたいといっていたけれど、夢や願いは途中で変わったり形を変えたりするものだ。だからラセルが王様にならないという選択肢だってラセルは選べるんだ。
「逞しくなったじゃないですか。自分の願いをちゃんといえた……義父上がラセルを王様にしたいと思っていると分かった上でも自分の意見をいえたんですから」
「うん……」
「私なんかは貴方の期待に応えたくてがむしゃらした記憶しかないですけど……それはそれで楽しかったんですけどね」
「ミニィ……」
ミニィは手を伸ばして私を抱き上げる。もう抱き上げられるのも慣れてしまった。そのうち襟巻風にミニィの首に巻き付いてもいいかもしれない。
「もしかしたら義父上が子狐になってしまったのは、ラセルの潜在的な願いがあったからかもしれませんね。だって将軍のままの義父上と出会ったら、どう考えても一緒に冒険なんて出来ませんから。あなたは保護者のままだった」
そういわれて、その言葉がストンと胸の中に落ちてきた。そうか、そういうことなのかなラセル。私は君と一緒に野を駆け、海を渡り、そして見たことがない物を見るためにこんな小さな体になったのかな?
そうだとしたら……それも悪くない。
「ラセル、今なんと?」
「僕は王様にはなりたくないんだ」
私の色々な夢や希望や計画とか、老後の楽しみなんかが音を立てて崩れた。
「うーん……!」
「ど、どうしよう! イアンが倒れちゃった!!」
ラセルの衝撃的な発言を食堂で保存食を齧りながら聞いて、私はぽうん、と狐に戻りながら後ろへひっくりがえって気絶したらしい。
「イアン様?! イアン様ーっ!」
厨房からドタバタとパムが走ってきて、私を拾い上げ、ラセルと一緒にタムの温室まで走り、三人でミニィの屋敷まで帰ってきたらしかった。
「熱が下がりませんね……」
「ぼ、僕が王様にはならないよっていったから……」
「あー……」
「なるほどー」
「そうですか」
私はそのまま高熱を出して意識が戻らないまま唸っていたらしい。私が倒れた理由に全員が納得して、オロオロするラセルを慰めてくれたらしい。
「ぼ、僕が悪いのかな……」
「いいえ、違いますよ。自分の心に嘘をついてはいけない。もし、ラセルが王様になりたくないのに王様になったとしたら……その時、義父上は今以上酷い有様になっていたでしょう、むしろ今知れて良かった」
「ほ、ほんとに?」
「ええ、本当です。能力や資格があっても本人がそうなりたくない、別のことがしたいというのなら、やりたい事をやらねばなりません」
「……うん」
そうなんだ、いくらラセルが最高の王様になれる器があるからといって、ラセルが王様になりたくないなら、なるべきじゃない。
いくら私の夢がラセルが素晴らしい王様になる事だとしても、本人が望まない事を強要することなんてできないし、絶対にしたくない。
「ラセルのしたいことはなんだい?」
「僕はイアンと一緒に冒険をしたい。見守ってくれるんじゃなくて、一緒に隣に並んで冒険するの」
「……なるほど。でも義父上の隣に並ぶのは大変ですよ? あの人、呼吸をするようにとんでもない魔法を非常識に繰り出しますし、そして剣の腕も達人級だし、体術も仙人並みに凄い」
「……それはなんとなく分かってる……でも、僕はイアンと一緒が良いんだ。それが、僕のしたいことなんだ」
私がベッドで丸くなって寝込んでいる間、ラセルは学園へ戻って行ったらしい。目を覚ますと昔から見慣れた連中の顔があってちょっとほっとした。
「あ、イアン様が起きましたよ」
「義父上ぇえええ」
「狐だからなあ、人間用の薬じゃまずかっただろうし、ひとまず目が覚めてよかった」
しばらくぼんやりと横を見ていたけれど、天井を向く。えーと、私はどうして寝ていたんだっけと逡巡して原因人物がいなかったことに気が付いた。
「ラセルは?」
「学園ですよ、きちんと以上に授業を受けているそうです。クレヤボンスが毎日教えてくれます」
「そうか……頑張っているんだな」
「ええ」
皆、それ以上何も言わなかった。大丈夫、分かっているよ。ラセルを立派な王様にしたかったのは私の願いでラセル本人の願いじゃない。最初はラセルも王様になりたいといっていたけれど、夢や願いは途中で変わったり形を変えたりするものだ。だからラセルが王様にならないという選択肢だってラセルは選べるんだ。
「逞しくなったじゃないですか。自分の願いをちゃんといえた……義父上がラセルを王様にしたいと思っていると分かった上でも自分の意見をいえたんですから」
「うん……」
「私なんかは貴方の期待に応えたくてがむしゃらした記憶しかないですけど……それはそれで楽しかったんですけどね」
「ミニィ……」
ミニィは手を伸ばして私を抱き上げる。もう抱き上げられるのも慣れてしまった。そのうち襟巻風にミニィの首に巻き付いてもいいかもしれない。
「もしかしたら義父上が子狐になってしまったのは、ラセルの潜在的な願いがあったからかもしれませんね。だって将軍のままの義父上と出会ったら、どう考えても一緒に冒険なんて出来ませんから。あなたは保護者のままだった」
そういわれて、その言葉がストンと胸の中に落ちてきた。そうか、そういうことなのかなラセル。私は君と一緒に野を駆け、海を渡り、そして見たことがない物を見るためにこんな小さな体になったのかな?
そうだとしたら……それも悪くない。
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