【本編完結】オマケ転移だった俺が異世界で愛された訳

鏑木 うりこ

文字の大きさ
29 / 42
その他の話

6 帰るか6

しおりを挟む
「頼む!リオウ!私の負け……」

「つべこべ言わずに戦え、ハイラム。カイリにいい所を見せるチャンスだ。王太子になってから全力を出せる機会なんてねぇんだから!」

「私相手だって全力なんて出せないだろう!」

 二人の会話が俺にまで聞こえて来る。これ、さっさと止めてよ。もう勝敗決まってるじゃないか……。

「そこそこ、出せる」

 ぐるる……と喉から威嚇音が出て、リオウが元々の姿より一回り大きく見え始める。そして今まで毛がなかった場所にもあの特徴的な虎の模様がうっすらと見えてくる。

「だからイヤなんだよ、リオウは!それと周りの見えない母上も。俺は獅子の血が濃いんだ、単騎で戦う決闘でリオウに勝てるわけがないだろう!」

「喋ってねーで行くぞッ」

「うわあああああっ」

 あー……これは一方的な試合?なのかな。俺は良く分からないがまあ始終ハイラムが押されている。というか防戦一方で俺が見てもハイラムに勝ち目はまったくなさそうだ。こんな苛めみたいなの見て何が楽しいのか、と思ったけれど獣人の皆さんはそんなことないらしい。

「良いぞ、やれぇ!リオウ様ァ」

「やっちまええええ!」

 血気盛んだったし

「見たかい?キーチェ。ああやって尻尾でバランスを取るんだ。大振りしても次につなげろ」

「うん!父さんは強いね!」

「本気になったらもっと強いぞ、リオウは。強いから王太子になったんだ」

「そっか……」

 俺は喧嘩が強い=凄いとは思わないけれど、キーチェの目にはそう映るようだ。今までより敬意を込めた目で父親を見上げるキーチェ。良かったな、リオウ。こんな茶番みたいな決闘でも父の権威は相当上昇したぞ。

「カイリ!カイリ!どうだっ!」

「へ?あ、ごめんごめん見てなかった」

「そんなぁ~~~」

 リオウの尻尾がへにょっと下がったけれど、俺はキーチェばっかりみてたんだよなあ。ごめん、て言うかハイラムが可哀想で見てらんないよ。

「もう俺の負け!リオウの勝ちで良いっ。審判止めろ!これ以上怪我はごめんだ!!あと母上もヒルデもなんでリオウとカイリを目の敵にする!意味が分からんっこの場で謝れッ」

 隙をついてハイラムが吠えた。話したことはあまりなかったけれど、ハイラムは結構常識人だったんだ……。

「リオウと喧嘩するなら自分でしてくれ!俺はリオウと喧嘩したいなんて一度も言ってないからな!あとナーチ!ニール!ネネイ!自分で売った喧嘩ならきっちり責任取れ。キーチェは強いぞ、リオウよりな」

「ひっ!ちっ父上、キーチェはそんなに強いんですか……!」

 この後、キーチェとハイラムの長男のナーチとの決闘が予定されているけど、え?キーチェってそんなに強いの??
 長男のナーチが分かりやすく青くなって尻尾を股に隠した。

「リオウがキーチェくらいの歳の頃より強い。だからキーチェの方が強い、単純なことだ」

「ひっ!」

 あーあ、戦う前からもう戦意喪失じゃないか。大丈夫かなぁ?一方我が家のお兄ちゃんはいつの間にかランシャ様が用意した戦闘服を来てやる気満足だ。

「心臓と脛、腕だけに魔猪の皮を使っている。これなら戦闘爪も通さないからここで流す、分かるな?」

「うん!」

 わかるんだ……。戦いなんてちょっと危険かな?と思うけれどキーチェ自身も自分がどれ程の力を持っているか知っておいたほうがいいだろう。
 その大きな力に振り回されないように指導して行くのが俺たちの役目だろうし。

「全然、全然駄目だった!こんなんじゃカイリに連れて行ってもらえない!」

 決闘場から全てのパーツを垂れ下がらせてリオウが戻って来た。なんて情けない勝者なんだろう。

「そんな顔すんな、ハイラムに失礼だろ?」

「じゃあ俺を置いてくな!」

「王太子の件が何とかなったらな」

 まあ、実際は居てくれたほうが俺も嬉しいんだけどなぁ……それでもしょんぼりとヒゲまで垂れ下げて俺にくっ付いてくる大虎の背中を撫でてやった。

 



しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

処理中です...