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43 勝手な旦那
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「グギャアアアアア!」
「グウウウウウッ!」
ひ、ひえ……貧民街とはいえ街に住んでた俺に、どう猛な獣というか魔獣はおっかなすぎた。ぺたんとその場に座り込んでしまったのは許して欲しいし、チビらなかったのを褒めてくれてもいいと思う。そしてそのでかい虎の獲物は一番弱い俺だろうな、黄色いでっかい目玉が俺を見ている……終わった、俺、終わった……。やっぱり短い人生だった。恋人も出来ずに死んでしまうのは悲しいが仕方がない。俺は恐怖で目を閉じたが
「囲め!」
「御意!」
5人の肉食獣の獣人と一人の鳥獣人は剣を手に戦い始めた。す、すごい……。俺には凄いしか分からないが、でかい虎から血が噴き出している。おおおーーこれは助かるのでは!?
「てめえ!邪魔だ!隠れてろ!」
「はひぃ!」
一番偉そうな人に言われて俺はずりずりと後ろへ下がって行く。怖いよ~!少しだけ戦闘から離れてほっと一息つくと
「あぶねえ!!!」
「え」
俺に向ってでっかい虎が飛び掛かってきていた。あ……それ、無理な奴。人生死ぬとき、走馬灯って言うのが走っていろんなものがめちゃくちゃゆっくりに見えるんだって。そうそう、でかい虎がめちゃくちゃゆっくり、俺にとびかかってくるんだ。うわあ怖いやあ……。さようなら母さん、父さんと元気に暮らしてくれよ。この後間違ってもちんこもいだから駄目だからね。もう治してくれるヤツいないんだから。
「グオオオオオオ!!」
「王子ッ!!」
なんだ、なんだよ。ビシャッと血がかかった。意外とあったかいな、コレ。
「死ねえええ!」
王子って言われた人の剣が、虎の額の真ん中に深々と突き刺さって、柄まで埋まった。あれは完全に脳みそ突き刺さってるね。虎は確実に死んだだろう。
「王子ーーー!」
俺が入るべきはずだった、その虎のでっかい口に、なんで王子様が挟まってるのかな?どうして俺を庇ったのかな?王子様、なんだろ?
「は、はは、失敗した、な。おい、お前、無事か」
「あ、うん。どこも痛くねえよ」
「そうか」
虎の牙がこの王子様の腹を突き破って生えている。がっぷり噛みつかれたんだ。部下らしき他の奴らが虎の顎から体を引き抜いてやる。だらだらと血が流れ、貫通した穴はいくつもあった。
「なんてことを、なんてことを王子!貴方まで失ったら、私達は、私達の国はどうしたらいいのですか!」
「へっ。誰かいるだろ。宰相のおっさんが上手くやってくれるさ。それに帝国にゃエリスリーヤ姫がいるんだろ。親父達はなんとか頼め……。なあ、替え玉のアンタ。わりぃんだけど、頼むや、クォンツの森のアダライム王とその家族を治してくれるようにエリスリーヤ姫に頼んじゃくんねえか……?こんなところまで連れて来て悪かったな。しっかり送り届けるからよ、頼むよ」
だらだらと血が流れている。この王子様は死ぬなあ。でも俺にこの人を助ける理由なんかあるかな?頼みなんか聞く必要はあるのかな?
「はあ、でも勝手に攫ってきてそりゃないんじゃないのかぁ……?」
「ちげえねえ……でも頼むわ」
「いやあ……頼まれても、俺になんもいいことねえじゃん」
「貴様ァ!」
王子様とやらの最後の言葉を静かに聞いていた部下たちはとうとう声を上げた。でもなーだってなあ?王子様は少しだけ動く手を挙げて制止する。ふうん、いいとこあるじゃん。
「そうだなァ。お前にやれるもんなんて今なぁんにも持ってなくてなあ……どうだ?俺の嫁にしてやろうか……こう見えても俺は、国では一番モテてたんだぞ……」
「はぁそうなんだ。でも俺の好みじゃないなあ、俺男だし。男の嫁になりたくねえもん」
「俺の国じゃ、別に男の嫁が男なんて普通だから気にすんな……いいぞ、男の嫁は気楽だしなぁ……こう見えても俺は金もあるし……苦労とか不自由とかさせねえぞ……悪くねえ……はな、し だろ……ゴホッ!」
「王子!おやめください!死んで、死んでしまいます!!」
大量に口から血を吐き出して、王子様は笑った。
「いや、いい。どうせ無理だ、分かってるよ。なあ、あんた。名前は?替え玉っつっても名前くらいあるんだろ……?」
「俺は……俺の名前は、リーヤ。ただのリーヤだ」
「へえ、可愛い名前じゃねえか。親に感謝だな……よく見りゃ結構可愛い顔してんじゃねえか……よぉし、お前は今から俺の、嫁な……リーヤ・エルファシド・クォンツな」
「いや、勝手に嫁にされても困るし。ついでに旦那が出来た途端死んでも困るし」
「ははっ……そりゃあ……確かに困るなぁ……でも、頼むよ……」
「やだよ、こっちは失恋したばっかりなんだ。なんでそんなときに結婚しなきゃなんねーんだ」
あー王子様の無理やり作ってた笑った口の形がもたなくなってきたなー。顔色も悪し、もう無理なんだろうな……くそ……。
「頼む……頼むよ、リーヤ。お前の父さんと母さんと、弟と妹たちを助けてやってくれよ……」
えーーーーー!勝手すぎないかああああ!?それにまだ結婚しますとも言ってないのに勝手に俺の家族に入れんの止めろよ!
俺の家族は母さんと父さんだけだぞ!!
「グウウウウウッ!」
ひ、ひえ……貧民街とはいえ街に住んでた俺に、どう猛な獣というか魔獣はおっかなすぎた。ぺたんとその場に座り込んでしまったのは許して欲しいし、チビらなかったのを褒めてくれてもいいと思う。そしてそのでかい虎の獲物は一番弱い俺だろうな、黄色いでっかい目玉が俺を見ている……終わった、俺、終わった……。やっぱり短い人生だった。恋人も出来ずに死んでしまうのは悲しいが仕方がない。俺は恐怖で目を閉じたが
「囲め!」
「御意!」
5人の肉食獣の獣人と一人の鳥獣人は剣を手に戦い始めた。す、すごい……。俺には凄いしか分からないが、でかい虎から血が噴き出している。おおおーーこれは助かるのでは!?
「てめえ!邪魔だ!隠れてろ!」
「はひぃ!」
一番偉そうな人に言われて俺はずりずりと後ろへ下がって行く。怖いよ~!少しだけ戦闘から離れてほっと一息つくと
「あぶねえ!!!」
「え」
俺に向ってでっかい虎が飛び掛かってきていた。あ……それ、無理な奴。人生死ぬとき、走馬灯って言うのが走っていろんなものがめちゃくちゃゆっくりに見えるんだって。そうそう、でかい虎がめちゃくちゃゆっくり、俺にとびかかってくるんだ。うわあ怖いやあ……。さようなら母さん、父さんと元気に暮らしてくれよ。この後間違ってもちんこもいだから駄目だからね。もう治してくれるヤツいないんだから。
「グオオオオオオ!!」
「王子ッ!!」
なんだ、なんだよ。ビシャッと血がかかった。意外とあったかいな、コレ。
「死ねえええ!」
王子って言われた人の剣が、虎の額の真ん中に深々と突き刺さって、柄まで埋まった。あれは完全に脳みそ突き刺さってるね。虎は確実に死んだだろう。
「王子ーーー!」
俺が入るべきはずだった、その虎のでっかい口に、なんで王子様が挟まってるのかな?どうして俺を庇ったのかな?王子様、なんだろ?
「は、はは、失敗した、な。おい、お前、無事か」
「あ、うん。どこも痛くねえよ」
「そうか」
虎の牙がこの王子様の腹を突き破って生えている。がっぷり噛みつかれたんだ。部下らしき他の奴らが虎の顎から体を引き抜いてやる。だらだらと血が流れ、貫通した穴はいくつもあった。
「なんてことを、なんてことを王子!貴方まで失ったら、私達は、私達の国はどうしたらいいのですか!」
「へっ。誰かいるだろ。宰相のおっさんが上手くやってくれるさ。それに帝国にゃエリスリーヤ姫がいるんだろ。親父達はなんとか頼め……。なあ、替え玉のアンタ。わりぃんだけど、頼むや、クォンツの森のアダライム王とその家族を治してくれるようにエリスリーヤ姫に頼んじゃくんねえか……?こんなところまで連れて来て悪かったな。しっかり送り届けるからよ、頼むよ」
だらだらと血が流れている。この王子様は死ぬなあ。でも俺にこの人を助ける理由なんかあるかな?頼みなんか聞く必要はあるのかな?
「はあ、でも勝手に攫ってきてそりゃないんじゃないのかぁ……?」
「ちげえねえ……でも頼むわ」
「いやあ……頼まれても、俺になんもいいことねえじゃん」
「貴様ァ!」
王子様とやらの最後の言葉を静かに聞いていた部下たちはとうとう声を上げた。でもなーだってなあ?王子様は少しだけ動く手を挙げて制止する。ふうん、いいとこあるじゃん。
「そうだなァ。お前にやれるもんなんて今なぁんにも持ってなくてなあ……どうだ?俺の嫁にしてやろうか……こう見えても俺は、国では一番モテてたんだぞ……」
「はぁそうなんだ。でも俺の好みじゃないなあ、俺男だし。男の嫁になりたくねえもん」
「俺の国じゃ、別に男の嫁が男なんて普通だから気にすんな……いいぞ、男の嫁は気楽だしなぁ……こう見えても俺は金もあるし……苦労とか不自由とかさせねえぞ……悪くねえ……はな、し だろ……ゴホッ!」
「王子!おやめください!死んで、死んでしまいます!!」
大量に口から血を吐き出して、王子様は笑った。
「いや、いい。どうせ無理だ、分かってるよ。なあ、あんた。名前は?替え玉っつっても名前くらいあるんだろ……?」
「俺は……俺の名前は、リーヤ。ただのリーヤだ」
「へえ、可愛い名前じゃねえか。親に感謝だな……よく見りゃ結構可愛い顔してんじゃねえか……よぉし、お前は今から俺の、嫁な……リーヤ・エルファシド・クォンツな」
「いや、勝手に嫁にされても困るし。ついでに旦那が出来た途端死んでも困るし」
「ははっ……そりゃあ……確かに困るなぁ……でも、頼むよ……」
「やだよ、こっちは失恋したばっかりなんだ。なんでそんなときに結婚しなきゃなんねーんだ」
あー王子様の無理やり作ってた笑った口の形がもたなくなってきたなー。顔色も悪し、もう無理なんだろうな……くそ……。
「頼む……頼むよ、リーヤ。お前の父さんと母さんと、弟と妹たちを助けてやってくれよ……」
えーーーーー!勝手すぎないかああああ!?それにまだ結婚しますとも言ってないのに勝手に俺の家族に入れんの止めろよ!
俺の家族は母さんと父さんだけだぞ!!
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