【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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89 私の胃君!

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 なんだか医療ドラマで見た事があるような格好だな、と思う。マスクまでは行けたが、あの薄い手袋まではいけなかった。
 だから手をよく洗う。菌の概念も浸透して、なるべく無菌に近い状況を作り出す。

「フラン。これから麻酔をぶち込むから、眠くなる……もし、失敗したら……永遠にそのままだ。俺を目一杯怨んでくれ」

「成功したら、結婚してくれます?」

 良いよとは言えねーな。

「無理だな」

「そこは、患者を元気付ける為に良いよっていう所でしょ?全く!」

「寝てろ」

 いつも通り過ぎて泣きたくなる。どうしてフランは自分の命を賭ける時にもこんなんなんだ……。

「恨みませんよ。ただリーヤの心にずっと残れるだけです」

 ははっ!あまり怖い事を言わないでくれ。先生の助手がプスリと大きな注射を突き刺した。
 いて!とか聞こえたがそのままフランは眠りに落ちる。

「……行きます」

 みんな、無言で頷く。先生のメスが生きているフランの腹を切って行く。

「うっ……」

 気持ち悪い。慣れない経験に目眩を覚える。それでも俺はしっかり見てないと。

「あっ!」

 ばっと赤い血が噴き出す。血管を切ったんだ!

「っ!」

 横から俺は手を突っ込んで、その部分だけを繋ぐ。直し過ぎないよう、血管だけを!

「……続けます」

 頷く。喋る必要はない。慎重に進み、胃にたどり着いた。

「ここです」

 こくり、小さく頷き、俺はフランの胃袋を優しく包み込む。どうだ?お前、ちょっと傷んでるだろ?直して良いか?
 慎重に、慎重に。悪い所が広がるなら駄目だ。悪い所が小さくなって、元の健康な胃袋に……。

「うん、小さくなってます……ああ、でも消えたとは言い難い」

「……切除しよう」

 かなりの部分を残せたかもしれない。早くくっ付くように願い、傷口を塞いで行く。

 切った皮膚を縫って、包帯で縛る。

「おわ、た……」

「はい……」

 手術に参加した俺達はどっと座り込む。フランは静かに寝ていてまだ目を覚ます時間でもない。

「大丈夫、やれたと言いたいです」

「アライグマ先生、流石だよ」

「リーヤ様のそのデタラメなお力のお陰ですよ。血が吹き出た時は焦りました」

 あれな、全員青くなったよな!今日の手術を忘れちゃいけない。この後レントも控えているし、この二人以外も切る可能性は大いにありそうだから。


「生きてた……痛いけど」

「そりゃーざくっ!と切ってぷしゅーとと吹き出たんですから!あ!切り取った内臓みます??今後の為に取ってあるんですよ!標本にして飾っておきます!」

「わ、私の胃君が飾り物に!」

「はいっ!」

 あははは!いてててて!アライグマ先生とフランは笑っている。

「こちらの空いている瓶にはレント様の肺を入れる予定です!」

「あはは!私達並んで飾られちゃうんだ!いててて……」

「そりゃもう!」

 この二人にかかったら、病気も何もかも飛んで行きそうだ。そうだ、病は気からとも言うし。利也だった俺は病と戦おうと言う気も無かった。だからあんなにあっさり死んでしまったのかもしれない。

「かなり時間がかかるけど、胃は元に戻る……はず」
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