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94 逝く者
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「実につまらん幕切れであった」
それはカリウス父さんとの勝負だったのか、アダライム様の人生だったのか。
父さんと母さんの埋葬を済ませて、落ち着く前に、アダライム様も亡くなってしまった。
昼間、なんでもないようにそうデリウス様に呟いたと思い
「何がつまらないんだ?」
聞き返すと、既に呼吸をしていなかったそうだ。
「カリウス殿とまだ戦い足りなかったのでしょうね。相変わらず、自分勝手な人だ」
諦めたような、呆れたようなそんな顔でデリウス様が言う。はは、確かに自分勝手な人だったな。獣人の王に相応しい人であったと思う。
ハンター達は二台巨頭を一気に失って、がっくり来ているのかと思ったら
「次の獅子頭は俺だーー!」
「いや!狂犬の名前を継ぐのは俺だ!」
元気だった。
「いや、マルグレータさん?メグさん!お、俺はこんな物騒な村に住みませんからね?!俺はリーヤ達がいる王都の方でゆっくりのんびり、余生を……」
「ふふ、何を仰る。帝国の前陛下はフローラ村に住むのが通例であり、前例通りにしてもらわねば」
「いやーー!死ぬー!死んじゃうーーー!」
ルンはフローラ村に居を構えるようだ。頑張れ。
日本の父さんも、店を人に譲り養老マンションに黒猫のリーヤの子供と移り住んだ。本当にのんびりと数年暮らし、亡くなって行った。
俺はますますおじさんに磨きがかかったが、相変わらずもげた物をくっ付けたり生やしたりできた。
もしかしたら、レントの肺を戻せるかもしれないと思った事もあったが
「そのままで良い」
レントが言うのでそのままにしておいた。そしてデリウス様より早く、レントに限界が来た。
「リーヤ」
ひゅーひゅーと鳴る喉で俺の名前を呼ぶ。
「待たせたな」
「何が?」
「……いや、良い。リーヤ、隣にいてくれてありがとう。これからはフランの」
「それは俺が決める」
レントの言葉を途中で遮った。
「リーヤ」
「うるさい!俺を残して行く奴の言うことなんか聞くもんか!ばっかじゃねーの!」
ゴホゴホと咳き込みながら、困った顔してんじゃねーよ!困るのはこっちだっつーの!
「王位はリリージャが継ぐ。もう子供達でしっかり回せる。だからリーヤはフランと一緒に」
「フランにおっさん押し付けるのやめろ!あいつがいくつになってもモテるの知ってるだろ」
俺が汚いおっさんになって行く間にフランは劣化する事なく、爽やかでキラキラしているおじ様になっていた。
ご年配から10代の若々しいお嬢さんまで虜にしている。そんな美オジに使い古しの口の悪いおっさんを充てがってどうするんだ。
「……そのおじ様は、毎日毎日お前を口説きに来てるじゃないか」
「あれは挨拶だろ、もう慣れたよ」
「私の噂話してたでしょ?」
ノックもなしに扉を開けてフランが入って来た。
「リーヤ、今日も可愛いね。歳を重ねてもその美貌羨ましいよ。そろそろ私と結婚しよう」
「あー無理無理。まだ旦那が居るからね」
「あーもー!今日もソレですかー!」
これ、一連の流れ、本当毎日の挨拶だよな。
「もうすぐ居なくなるがな」
「レント!」
縁起でもねーこと言うんじゃない!フランはほんの少しだけ目を見開いてから、また普段通りに戻る。
「そうですか。ではやはり私の勝ちですね、この長生き勝負」
「……そうだな」
何を?!ふざけんな!と返って来ない事に少し悲しい顔をしてから
「帰ります。またねレント、リーヤ」
「うん……」
パタンと扉を閉めて姿を消す事が、俺にはとても辛かった。
「レント、死ぬなよ……」
「粘る所までは粘ってやるさ。あいつにリーヤを渡すなんてやっぱりヤダ!」
昔みたいに笑うから、俺も釣られて笑ってしまう。レント、お前だけが俺の旦那だ。俺は二人も旦那は要らんよ。
それはカリウス父さんとの勝負だったのか、アダライム様の人生だったのか。
父さんと母さんの埋葬を済ませて、落ち着く前に、アダライム様も亡くなってしまった。
昼間、なんでもないようにそうデリウス様に呟いたと思い
「何がつまらないんだ?」
聞き返すと、既に呼吸をしていなかったそうだ。
「カリウス殿とまだ戦い足りなかったのでしょうね。相変わらず、自分勝手な人だ」
諦めたような、呆れたようなそんな顔でデリウス様が言う。はは、確かに自分勝手な人だったな。獣人の王に相応しい人であったと思う。
ハンター達は二台巨頭を一気に失って、がっくり来ているのかと思ったら
「次の獅子頭は俺だーー!」
「いや!狂犬の名前を継ぐのは俺だ!」
元気だった。
「いや、マルグレータさん?メグさん!お、俺はこんな物騒な村に住みませんからね?!俺はリーヤ達がいる王都の方でゆっくりのんびり、余生を……」
「ふふ、何を仰る。帝国の前陛下はフローラ村に住むのが通例であり、前例通りにしてもらわねば」
「いやーー!死ぬー!死んじゃうーーー!」
ルンはフローラ村に居を構えるようだ。頑張れ。
日本の父さんも、店を人に譲り養老マンションに黒猫のリーヤの子供と移り住んだ。本当にのんびりと数年暮らし、亡くなって行った。
俺はますますおじさんに磨きがかかったが、相変わらずもげた物をくっ付けたり生やしたりできた。
もしかしたら、レントの肺を戻せるかもしれないと思った事もあったが
「そのままで良い」
レントが言うのでそのままにしておいた。そしてデリウス様より早く、レントに限界が来た。
「リーヤ」
ひゅーひゅーと鳴る喉で俺の名前を呼ぶ。
「待たせたな」
「何が?」
「……いや、良い。リーヤ、隣にいてくれてありがとう。これからはフランの」
「それは俺が決める」
レントの言葉を途中で遮った。
「リーヤ」
「うるさい!俺を残して行く奴の言うことなんか聞くもんか!ばっかじゃねーの!」
ゴホゴホと咳き込みながら、困った顔してんじゃねーよ!困るのはこっちだっつーの!
「王位はリリージャが継ぐ。もう子供達でしっかり回せる。だからリーヤはフランと一緒に」
「フランにおっさん押し付けるのやめろ!あいつがいくつになってもモテるの知ってるだろ」
俺が汚いおっさんになって行く間にフランは劣化する事なく、爽やかでキラキラしているおじ様になっていた。
ご年配から10代の若々しいお嬢さんまで虜にしている。そんな美オジに使い古しの口の悪いおっさんを充てがってどうするんだ。
「……そのおじ様は、毎日毎日お前を口説きに来てるじゃないか」
「あれは挨拶だろ、もう慣れたよ」
「私の噂話してたでしょ?」
ノックもなしに扉を開けてフランが入って来た。
「リーヤ、今日も可愛いね。歳を重ねてもその美貌羨ましいよ。そろそろ私と結婚しよう」
「あー無理無理。まだ旦那が居るからね」
「あーもー!今日もソレですかー!」
これ、一連の流れ、本当毎日の挨拶だよな。
「もうすぐ居なくなるがな」
「レント!」
縁起でもねーこと言うんじゃない!フランはほんの少しだけ目を見開いてから、また普段通りに戻る。
「そうですか。ではやはり私の勝ちですね、この長生き勝負」
「……そうだな」
何を?!ふざけんな!と返って来ない事に少し悲しい顔をしてから
「帰ります。またねレント、リーヤ」
「うん……」
パタンと扉を閉めて姿を消す事が、俺にはとても辛かった。
「レント、死ぬなよ……」
「粘る所までは粘ってやるさ。あいつにリーヤを渡すなんてやっぱりヤダ!」
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