【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
50 / 80
動物に異様に好かれる手

50 母と子

しおりを挟む
「ふん」

 ミシェルはそれでも機嫌悪く鼻を鳴らした。ミシェルの命でたくさんの貴族の首を刎ねさせた。
 あの後、ミシェルは沢山の人間に影に日向に文句を言われたし、暗殺者もたくさん送り込まれた。
 だが、ミシェルとレオニー、二人のメイドはそれを全て撃退。差し向けた者達を粛清もした。

「しかし、罪もない者が死んで行くのはあまり気持ちの良いものではない」

 今日も王宮から遺体が運び出されて行く。

「そうですが、私は人間は好きになれません」

 もう王者の風格を漂わせ始めたレオニーはそれをしっかり見つめている。

「そうですね、私も好きにはなれない。どこかで獣の血を持たぬ者が果てるのを祈っていすらいるように感じます」

「……シロウは元気そうですね」

 届いていた手紙をレオニーは思い出す。大好きなシロウの匂いに混じり合う叔父レジールの匂い。
 ああ、シロウは叔父の物になったのか。別れた時、レジールの腕にしっかりと抱かれていたシロウを見た時そうなるんじゃないかと予感はあった。
 仕方がない。人間の庭で飼われていた子供の獅子が、広い野を自在に駆け回る大人の獅子に勝てるわけがない。

「レオニー……」

「大丈夫です、母上。私はすぐに叔父上より強くなります。叔父上に勝てるようになったらシロウに考え直すように伝えるつもりです」

 ミシェルは体より先に心が強くなった息子を誇らしく思う。

「そうね、レオニーは素敵な大人になるわ。レジールよりいい男になれば放っておけるはすがないものね」

 はい、と笑う息子の顔は少し辛そうだったが、そういう心の強さも素晴らしいとミシェルは思う。

「しかし、人間にはかかるが獣人にはかからぬ病。もしやアリルレオン様の御威光かしら?」

 獣人の守護女神たる金獅子の神を思い浮かべて、ミシェルは遠い故郷の地を懐かしんだ。

「どうもジェストにいると人間ですら例の咳病に罹りにくいらしいですよ」

 どこで聞いた噂なのか、レオニーはミシェルに伝える。

「これは本当に我らの神のお力なのかもしれないわね、レオニー」

「そうですね。私もリリーシュア神はあまり好きではありません。信仰するならアリルレオン神が良いです」

 素直な息子の頭を撫で、ミシェルは微笑む。

「獣の子の事をアリルレオン様も愛してくださるわ。あなたは女神の血を引く子、その血に恥じぬよう誇り高く生きましょう」

「はい、母上!」

 割合など些細な事だ。女神の血筋、獅子の誇りを忘れぬ事こそ、我らを我らたらしめる事なのだと深く深く心に刻んで。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

処理中です...