【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜

鏑木 うりこ

文字の大きさ
30 / 71
キノコ神の使徒達

30 イニシャルK(キノコ)

しおりを挟む
 ネズミの体はどんどん、どんどん神殿の奥へ吸い込まれる。

「どどどうなってええええ!」

あっー!アッーー!そんなに吸引されたら!されたら!!!

「ぬ、抜け!抜けちゃうううう!」

 いやーーー!キノコが!キノコが!!!

ポン!と良い音が俺の中で弾けて、ネズミの頭から本体が取れてしまった。
 アッーーー!キノコだけになり、更に軽量化された俺は、奥へ奥へと吸い込まれる。

「ひぃええええ!」

 高速でコーナーを攻め、S字カーブをぶっちぎり、キノコの端を溝に引っ掛けながら、信じられない速度で慣性ドリフトする。

 廃棄寸前のポンコツキノコが神殿最速だぜ!インベタのインを攻めてキノコが絶叫する。

「たーすけてーーー!」

 それどころじゃなかった。



 どんどん吸い込まれてきた奥の部屋から声が聞こえてきた。それは祈りなのか詠唱なのか。

 部屋には巨大な魔法陣が描かれていて、中央に大量のウスベニ裏毒茸が山盛りに盛られていた。

 あれは。古い記憶で覚えている、アルトの記憶だ。アルトが作ったのはもっともっと小さいものだったし、使った素材も少なかった。
 アルトの研究に金をかけて、大掛かりにしたような。これは、このままでは!
 ジタバタしても、キノコでは手も足も出せない!ああ!せめてネズミの体があれば、その辺にしがみついて、魔法陣に入るのを阻止できたかもしれないのに。


あああーーー!

 ウスベニ裏毒茸の山の中にスポンと埋もれてしまった。





 何度も何度も王命で繰り返される「降臨の儀式」素材も術式もとても特殊で、全て王と宰相が用意した。

「森に隠してあった錬金術の秘儀の書き写し」

「最初に成功したのはこれだった」

「素体と、核となるおじ様が」

「片っ端からウスベニを集めればそのうち引っかかるかも」

 意味が分からないやり取りを聴いた事があるが、とにかく

「この通りにやってほしい」

 王からの依頼なら素材が送られてくる度にやらねばならない。

 そして、とうとう今日

「魔法陣が光った!」

「風が!」

 使われなかったと思われる大量のウスベニ裏毒茸の真ん中に素っ裸の男がうずくまっている。

 その顔、その姿は正に毎日奉っている神そのものだった。

「おお……!神よ!」

「神が降臨なされた!」

「連絡を!王宮に連絡を!」

 
神が降臨なされた!!!!


「嘘だろ……どうしよう……」

 神も困惑されているようであった。早く王の判断を仰がねば!

 神は立ち上がり、歩き出そうとする。流石に何もお召しになられておられぬと、神々しすぎますぞ!女性神官もおります故に!!

「お、お待ち下さい!お待ち下さい!王がいらっしゃるまで!」

「そ、その王が来る前に逃げないと!嫌な予感がする!」

 神たろうものが逃げるなど!そんな必要はないではないですか!

「あなたは様は神なのではないのですか!」

「違う!」

な、なんだって……?!

「俺は神じゃない!ただのキノコだ!!!」

 キノコならば神ですよ!!

「どちらにせよ、王が来るまでしばし!しばしお待ちを!」

「だから!その王はあの子達なんだろう!逃げないと!!」

「早くー!王をお呼びしろー!」

「やめてー!森に帰りたいいいいーー!」

 現場は大混乱だった。
 
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

処理中です...