【完結】スキル「癒し」のみですがまだ生き残っています!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
48 / 71
魔のモノ

48 でも好きにはなれない

しおりを挟む
「へえ。これが玉」

「……はい」

 マロードの王宮の中庭。ずっと降り続いていた雨は止んでいたが、空気はどんよりとくすんでいる。
 そこのテーブルで隣同士で座りティーカップを傾けている俺と魔王様。距離が近い。

「ふぅん?あ、吸い込まれた」

「だ、大丈夫ですか?ダレンさんは死ぬって言ってましたけど……」

 不死者が死ぬ。死ぬじゃなくて昇天するだったか……。

「俺は平気みたいだなぁ。すると俺は今、癒されたのか?」

「た、多分?」

 変わった所がないなー?魔王は吸い込まれた自分の手を見ている。

「一個じゃたいした事ない?」

「怪我とか治すときはこう……ポロポロ出ます」

 ポツン……一つづつこぼれて来るが、どっさり出たりしない。だってこわいんだもん!この人…人じゃないか、この魔族の人、怖い!

「もっと出して」

「が、頑張りマス……」

「無理かーーー!俺が怖い?」

 うっ!素直に言って良いものだろうか!気を悪くしたら困るし!

「えーと、あのぅ」

「顔に怖いって書いてる」

「すいません……」

 玉はどうしても俺の気持ちに左右されるので、俺が怖いとか助けたくないと思うとほとんど出ない。今も踏ん張ってやっと一つ出たくらいだ。

「ふーむ。ヨシュア、お前自身もふわっとしたような、警戒をとかせるような雰囲気があるしな。その辺は玉を作る人間だからだろうけど……お、一つ出たな」

 ころんと転がりでた玉を今度はぱくりと食べてしまう。

「味はないし、痛みもない。魔王でも傷つかぬのだな?味もないが、スーッとした爽快感はあるな。ふむ?これが癒しか?」

「そう……なんでしょうか……?私の自身には効かないので良く分からないのです」

「効かないのか」

「はい……」

 なるほど。魔王はまた考え始めた。

「誰かの為だけなんだな?しかも魔族でも人間でも……不死者にもか。ここまで無差別だと、どうして良いかわからんな!実に興味深いよ」

 俺もどうして良いかわからんよ!

「玉は最高、本人は最弱。利用してくださいと言わんばかりのスキルだ。ヨシュア、お前8歳だっけ?産まれた時から玉を出せるんだってね?いつまで出せるんだろうな?」

 考えた事もなかった!もし俺が玉を出せなくなったら、完全なスキルゼロの役立たずじゃないか!ひぇーーー!

「ちょっと、背、伸ばして見よっか?」

 え、できるの?

「なぁに、その辺の人間から吸い取った生命力をちょちょっと変換して、入れれば2.3歳くらい体が育つだろ」

「ひぃ?!」

 魔族だったーーーー!考え方が魔族だったーー!

「そこら辺の奴……あーアイツで良いか。おーい!お前!」

 辛うじて頭が見えていたくらいの距離から、人が1人、見えない何かにひきづられて来る。なんだ……一体??

「これもスキル「見えざる手」透明で見えない手が使える。実体化するか透過するかは自在だから便利だよ。ホラ俺さ、ずーっと封印されてて暇だったじゃん?手だけ出して暇つぶししてた訳よ」

「そ、そうなんですね….」

 この魔王様の暇つぶしは何かとんでもないことだろう……聞きたくない聞きたくない。
 それよりもひきづられて来る人が気になる。話の内容からすると、生命力を吸い取られるんだろう……大丈夫かな?死なないのかな……?

「うわ!」

 その人をみて俺は流石に嫌そうな声を上げてしまった。

「……?!お、おま、….せ、ブルの」

 切れ切れで擦れて、声が聞き取りづらい。喉がおかしいのかもしれない。

「しゃ……喋れ、ないの?」

 その美しかった金髪は泥と血と汗で汚れて、自信満々だった顔はゾンビくらい顔色も悪く、目も落ち窪んでいた。
 肩から大きな袋を下げ、臭う。元々は最高級の服だったのに、着続けているせいか汚れと傷でぼろぼろになっている。

「ヨシュア、知り合い?この国の元王太子だよ、親友だ」

「え、いや……あの、その……」

 可哀想。そう思うけれど、玉が出なかった。だって全部この人のせいだ……全部じゃないと思うけれども、大体この人のせいで、俺たち家族は大変な目にあった、あっている。
 仲良く暮らしていた王都は追われた。お父様と、お兄様は王宮を追い出され、仕事も地位も無くなった。
 お母様は昔の友達に虐められるし、俺はかなりの貴族からの笑い者で、みんなに肩身の狭い想いをさせた。
 ルルカお姉様だってカレルお兄様だって、将来に影響が出たはず。

「ふぅん?こいつの事、嫌いなの?」

「あ、いえ、そんな……」

 違いますと言えなかった。

「おま、……セブルの、出来損ない、なのに、…な、で……!」

「黙って、親友」

 元王太子アヴリーは床に叩きつけられた。ぐしゃっと音がして、血の匂いが広がる。

「あ……ああ……」

 あまりきれいではない石畳に血が広かった。

「しん、ゆう……?」

 魔王は王太子アヴリーを親友と呼んだ。親友に対する扱い方ではないと思うが、そう呼ぶのがとても不思議で、思わず声が出た。

「ヨシュア、こいつのお陰で俺は封印から出てこられたんだ。な、親友だろ?」

「え……」

 目の前の王子を見ると、痛みで顔を引きつらせながらも、否定はしなかった。まさか、そんな……!

「ふ、やっぱり素直だなオレが出て来たのは嫌だし、親友が俺の封印を解いたのも嫌、そう顔に描いてある」

「……すいません」

「不思議なのは、俺がそれをあまり嫌だと思わない所だ。普段なら、首と体がさようならしているんだがなあ。お前は何かあるよ」

 さようならしたくないです…まだ首と体は仲良くしていたい!あわわわ……。

「ぷ」

「?!」

 笑われた!からかわれた!のか?いやしかし魔王様だ。いつでもさようならできるんだから、気を抜いちゃ駄目だ!

「まあ、こいつから寿命を30年ほど吸い上げて、お前に入れれば2.3歳はデカくなるだろ」

「え、やだ」

 しまったーーーー!ついうっかりーーー!

「あ、あ、あ!あのその!そ、その人の何かを受け取らなきゃ行けないとかちょっと嫌だなーって!だってその人、嫌な人で!あー!いやその、そんなにやじゃなくて、でもその人のせいで家族がみんな困ってあーー!……すいません……」

 気をつけなくちゃって思った瞬間に大失敗してしまった……。この王太子とはホント相性が悪い!なるべく近くにいたくない……。

「き、き、さまっ!い、……げんにっ!!」

 アヴリー王子は俺に飛びかかって来た。うわっやっちゃった!俺は避けようと必死に身を捻るが、上手く動けない。ううっ鈍臭い!

「立って良いとは言ってないぞ、親友」

 びたん!と音が鳴るくらいの勢いで、王子はまた石畳に這いつくばる。

「ふふ、ヨシュア。お前ホントにこいつの事が嫌いなんだね?ガイコツ顔のダレンを見ても平気なのに、こいつの顔を見るときの嫌そうな顔。笑っちゃう。何があった?」

「え、えーと……」

 命が惜しい俺は全て話した。内緒にしてとお願いしたのに、一瞬で噂が広がって、王都に居られなくなったこと。領地で暮らしていたら何故か地位も名誉も剥奪されて、更に帝国の皇帝の嫁にと輸送されている途中にサーたんに捕まったこと。

「魔王の俺が言うのも何だけど、親友。お前は理不尽だね。魔王の友に相応しかったかもしれないね、実力があれば。せっかく芽生えた剣士の芽も枯れている。文才も枯れている。王の資質もスキルになる前に枯れている。お前は枯れ野原だ。たくさんの芽が与えられたのにどうして1つも育てられなかった?」

「え、…そんな、しら、な」

 1つも芽が出ないつるつると、芽は出たけど、育たない枯れ野原。一体どっちがマシなんだろう、俺は思う。芽が出たという実績がある方が良いのかな……。

 俺はこの人以下かと思うとすごくがっかりした。

しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...