猫鍛冶屋(にゃんスミス)の猫武器(にゃんアームズ)なしの快適異世界生活

鏑木 うりこ

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27 親分カッケー

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「胸いっぱいの潮の香り~」
「胸いっぱいの地元猫の香り~」
「浮気かにゃ?」
「滅相もない」

 近くにいた地元猫を吸おうとして俺はやめた。何故なら俺にはとんかちがいるからさ。

「というわけでとんかちを吸う」
「やめろにゃ、アキラ。くすぐったいにゃ~」

 とかいいながらまんざらじゃなさそうなとんかちが最高に可愛い。やっぱりとんかちが一番だな。

「吸い終わったらちょっと相談に乗って欲しいにゃ」
「吸いながらでも相談に乗れるぞ、とんかち」
「さっき、この街の猫に色々お話を聞いたら大変なことが起こってるみたいなんだにゃ。アキラ、港に向かって欲しいにゃ」
「分かった。こっちか?」
「違うにゃ~、そっちは大通りだにゃ~」

 とんかちを吸いながらでは前が見えなかった、それだけだ。


 そして港町で俺ととんかちはここら辺一体のボスの前に座っていた。

「にゃ」
「ここの港を仕切っているボスのサヴァラス親分だよ、アキラ」
「おやつにお目にかかります。ワタクシ、とんかちの忠実なる僕の矮小なる人間のアキラでございます、以後お見知りおきを!」
「にゃ」
「アキラ~なにいってるの~? 僕達は友達で仲良しじゃないか~」
「とんかちぃ~ありがと~」
「にゃ」

 とんかちに紹介して貰ったボスのサヴァラス親分は体格が素晴らしくよいサバトラの強そうな猫だった。しかも左目のところに凄い傷がある! 強そう、かっこいい!

「親分が人間にしては見所のあるやつだって」
「ありがたき幸せー!」

 とんかちのお陰で俺は親分に認めてもらった……ありがてぇありがてぇ!

「にゃ」
「魚が欲しいなら親分の家の人間、トレバーに話をするのがいいって。でも今はちょっと無理かもしれないって」
「紹介まで! ありがとうございます!」

 しかし、無理かもしれないってどういうことなんだろう? とにかく俺ととんかちはサヴァラスの親分にお礼をいって親分の手下であるトレバー氏に会う事にしようと思った。

「にゃ」
「ついてこいって」
「道案内まで! ありがとうございます!」

 堂々と道の真ん中をいくサヴァラス親分の後ろをついて歩く、高々と上げたしっぽをみて、他の猫達が親分に頭を下げている……ようにみえる。そして新参者のとんかちと、そのおまけの俺を認識して貰っている……流石親分、分かってる!

「にゃ」

 一軒の平屋の大きなお屋敷の前につくと、親分は一度立ち止まる。そこには大きな門と門番がいて、親分はそいつに挨拶をしたようだった。

「おや、親分。客人をつれてきたのかい?」
「にゃ」
「そうなんだな、初めてお目にかかる。ここはこの港を束ねる網元の一家、ジン家の屋敷だ。何の用かは知らないが、親分に認められ奴なら歓迎するよ……っていってもちょっと揉めてるけどね」

 門番の青年は俺ととんかちをみて日焼けした顔で大きな笑顔を作った。なんか凄くいい奴っぽい顔だった。
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