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1 子爵令嬢、婚約破棄の上に当主交代を命じられる
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「も、もう一度仰っていただけますか? ダニエル様」
「パトリシア、君は本当に気が利かない奴だとは思っていたが耳まで悪いとは流石の僕も驚いたよ。もう一度いう、君との婚約は破棄だ」
自分はとても正しいという顔で堂々と言い切るダニエル様に戸惑いながら私は尋ねた。
「し、しかしそれではダニエル様がお困りになるのではありませんか……? ダニエル様が我がレーゼン子爵家に婿入りする為の婚約でございましたでしょう……? いくら伯爵家のご令息でも、三男ではとの事での私との婚約ではございませんでしたか?」
私が忙しく仕事をしていると、いつもならば絶対に近づいてこない執務室にダニエル・クロムウェル伯爵子息がやって来ていつも通りの小馬鹿にした態度でそう言い放った。
ダニエルからは顔を合わせるたびに、嫌味や文句を言われたが、今回の言葉に対しては聞き流すことはできなかった。
何せこの婚約は10年以上も前にお父様がクロムウェル伯爵から無理やり押し付けられた婚約だったからだ。我が家の都合……私の気持ちなどまったく考慮されずに、初めて顔を合わせた時はもう婚約が決まっていた。しかし弱小子爵家であるレーゼン家に拒否など許される訳もなく、更にお父様が失踪してから長年クロムウェル家の後援を受けていては断ることなど出来るはずもないものだった。
そしてこのレーゼン家の跡取りは長女の私。その私との婚約を破棄するなんて、ダニエル様は一体何を考えているのか……だけれどもその答えはダニエル様の後ろをついてきた妹のユリシアと、義母であるサリーさんの嫌らしいニヤニヤした顔で更に気持ち悪くなった。
「あらぁ~何の問題もないわよ、お姉様。だってダニエル様は私と結婚するんですもの」
「……え?」
「だからー! お姉様との婚約は破棄して私の婚約者になってくださるのよ、ね! ダニエル様ぁ」
語尾を上げた媚びる口調で妹のユリシアがダニエル様の腕にしなだれかかる。なんて品のない破廉恥な振る舞いだろうと思ったが、ダニエル様は満更でもない様子で鼻の下を伸ばしている。
「ああ、ユリシアは可愛らしいなぁ! パトリシアにもこういう可愛らしい所があれば僕に捨てられずに済んだのに。きちんと反省してもらいたいな」
「何をいってらっしゃるの……?」
私との婚約を破棄し、妹のユリシアと婚約を結ぶ……? 私が死んだ訳でもないのにそんなことをすれば、社交界のいい笑い者になるし、我が家も後ろ指をさされることになる。そんなこと普通の貴族なら絶対にやらないのに、どうしてそんなことを。
「何の問題もないわよぉ?だってこの家の跡継ぎはユリシアになるんだもの。旦那様が失踪して10年になる、そうしたら正式に認められるのよねぇ、家督相続。この家はユリシアが継げばいいの」
「そんな……」
義母であるサリーさんは一層嫌らしい笑顔で目元の皺を深くする。一体誰にそんなことを吹き込まれたのかしら……。サリーさんが貴族法なんて知っているとも思えない……ダニエル様の入れ知恵に違いないわ。
「パトリシア、君は本当に気が利かない奴だとは思っていたが耳まで悪いとは流石の僕も驚いたよ。もう一度いう、君との婚約は破棄だ」
自分はとても正しいという顔で堂々と言い切るダニエル様に戸惑いながら私は尋ねた。
「し、しかしそれではダニエル様がお困りになるのではありませんか……? ダニエル様が我がレーゼン子爵家に婿入りする為の婚約でございましたでしょう……? いくら伯爵家のご令息でも、三男ではとの事での私との婚約ではございませんでしたか?」
私が忙しく仕事をしていると、いつもならば絶対に近づいてこない執務室にダニエル・クロムウェル伯爵子息がやって来ていつも通りの小馬鹿にした態度でそう言い放った。
ダニエルからは顔を合わせるたびに、嫌味や文句を言われたが、今回の言葉に対しては聞き流すことはできなかった。
何せこの婚約は10年以上も前にお父様がクロムウェル伯爵から無理やり押し付けられた婚約だったからだ。我が家の都合……私の気持ちなどまったく考慮されずに、初めて顔を合わせた時はもう婚約が決まっていた。しかし弱小子爵家であるレーゼン家に拒否など許される訳もなく、更にお父様が失踪してから長年クロムウェル家の後援を受けていては断ることなど出来るはずもないものだった。
そしてこのレーゼン家の跡取りは長女の私。その私との婚約を破棄するなんて、ダニエル様は一体何を考えているのか……だけれどもその答えはダニエル様の後ろをついてきた妹のユリシアと、義母であるサリーさんの嫌らしいニヤニヤした顔で更に気持ち悪くなった。
「あらぁ~何の問題もないわよ、お姉様。だってダニエル様は私と結婚するんですもの」
「……え?」
「だからー! お姉様との婚約は破棄して私の婚約者になってくださるのよ、ね! ダニエル様ぁ」
語尾を上げた媚びる口調で妹のユリシアがダニエル様の腕にしなだれかかる。なんて品のない破廉恥な振る舞いだろうと思ったが、ダニエル様は満更でもない様子で鼻の下を伸ばしている。
「ああ、ユリシアは可愛らしいなぁ! パトリシアにもこういう可愛らしい所があれば僕に捨てられずに済んだのに。きちんと反省してもらいたいな」
「何をいってらっしゃるの……?」
私との婚約を破棄し、妹のユリシアと婚約を結ぶ……? 私が死んだ訳でもないのにそんなことをすれば、社交界のいい笑い者になるし、我が家も後ろ指をさされることになる。そんなこと普通の貴族なら絶対にやらないのに、どうしてそんなことを。
「何の問題もないわよぉ?だってこの家の跡継ぎはユリシアになるんだもの。旦那様が失踪して10年になる、そうしたら正式に認められるのよねぇ、家督相続。この家はユリシアが継げばいいの」
「そんな……」
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