搾取された令嬢、今度は幸せになる。あの人の親愛が溺愛に変わったんです。

鏑木 うりこ

文字の大きさ
57 / 58

57 サプライズは好かれないって

しおりを挟む
「つまみ出せ」
「はっ!」
「ちょ、ちょっと! 離しなさいよっイヤッ痛い、痛いっ!」

 飽き飽きしたといった表情の陛下の指示の元、とうとうジュリアナは衛兵達に囲まれて、両腕を押さえつけられた。

「本当にバーグ家はのようだな……だが、肝に命じろ。コレをと呼んでやるのは曲がりなりにもセラフィーナを養育してきたからの温情だということを。これ以上はない」
「ひっ……わ、分かりまし……た」

 真っ青な顔のバーグ伯爵は力なく首を垂れた。

「お、お父様、助けて痛いわっ! どうして私がこんな目にっ! こういうのはセラフィーナの役目じゃないっ私は悪くない、何にも悪くないのにっ!」

 ジュリアナが泣こうが喚こうが屈強な衛兵達には通用しない。助けを求めたバーグ伯爵も引きずられてゆくジュリアナの後をとぼとぼとついていく。

「私はセラフィーナより優れているの! セラフィーナより美しいの! だからセラフィーナより私、私なの! 私は選ばれるべき人間なの! 離して、離してーー!」

 派手なドレス姿が扉の向こうに消えるまでジュリアナは喚き続けていた。ジュリアナはどうしてあんなに私を蔑むんだろう……思い当たる理由がない。ただ、ジュリアナは前世のことを完全に思い出すのではなく、なんとなく体感的に認識していた……だから前世で蔑みの対象だった私を無条件で自分より格下としていたのかもしれない。私は聖良という人間ではなくセラフィーナとして生きているというのに、ジュリアナはジュリアナと樹里との区別ができていなかったんだろう……。
 それにしてもジュリアナはこれからどう生きていくんだろうか。王妃殿下、国王陛下にも嫌われ、社交界への出入りも禁止されてしまった。ということは令嬢としての価値はまったくのゼロ、いやマイナスだ。ジュリアナを擁護なんてしようものなら、その家ごと社交界からの鼻つまみ者として扱われるだろうし。ライオットとの婚約もナシになったようたったけれど、平民と結婚するにしても少し裕福だったり学がある人は絶対にジュリアナには近づかない。王家から嫌われているなんて、この国で暮らしていくには問題がありすぎる。

 響いていたジュリアナの声が小さくなり、消えていく頃に王妃殿下はため息をついた。

「さて、セルシオール様。いかがなさいますの?」
「えっと……義姉上」
「私と陛下はセラフィーナを虐めている性悪を一人排除いたしました。今、この場でセラフィーナの心を理解せず苦しめている性悪がまだおりますわよ……勘違いなさらないでね? あちらのセネギー子爵やファルマ・カレウスのような小物でないわよ。もっと根本からセラフィーナを苦しめている性悪よ」

 ギロリ、そんな音が聞こえてきそうな王妃殿下の視線の槍に突き刺されたセルジオ先生は額に汗を書きながら小さく呻いている。

「そ、その性悪は……私のことですよね? 義姉上」
「ええそうね、分かっていれば宜しいのよ。そちらのモルガット子爵やルンド子爵もそれなりに悪いけれどね。お二人とも何故ここまでセラフィーナに秘密にしたのかしら? セルシオール様がそれとなく身分が高いとお伝えしておくべき所よね?」

 矛先が変り、伯父様とお祖父様、そしてルンド子爵も冷や汗をかいている。

「そ、それはあのう……今まで苦労してきたセラフィーナが王弟であるセルシオール殿下に見初められ、婚約者になれるのであれば……その、喜ばしい事だと思いまして……驚きと喜びを倍増するには突然教えた方が……その、いいかと」
「まっ! 信じられませんわっ」

 なんて事なんでしょう……伯父様もお祖父様もいわゆるサプライズを仕掛けたって事ですか? 前世でもそうだったけれど、サプライズとかフラッシュモブとか嫌いな人って結構多いんですよ……。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

もうすぐ帰って来る勇者様と私の結婚式が3日後ですが、プロポーズされていないといくら言っても誰も信じてくれません

まつめ
恋愛
3日後に村をあげての盛大な結婚式がある。それはもうすぐやって来る勇者様と自分の結婚式。けれど勇者様は王都の聖女様と結婚すると決まっている。私は聖女様の代わりに癒し手として勇者様を治療してきた、だから見事魔王を打ち破って帰って来た時、村人達は私が本物の聖女だと勘違い。私がいくら否定しても誰も聞いてはくれない。王様との謁見を終えてもうすぐ勇者様が村に帰って来る。私は一度も好きだと言われてないし、ましてや結婚しようとプロポーズも受けていない。村人達はお祭り騒ぎで結婚式の準備は加速していく。どうしようと困っているのに、心の奥底で「もしかしたら……」と大好きな勇者様が自分を選んでくれる未来を淡く期待して流されてしまう私なのだった。どうしよう……でもひょっとして私と結婚してくれる?

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

この雪のように溶けていけ

豆狸
恋愛
第三王子との婚約を破棄され、冤罪で国外追放されたソーンツェは、隣国の獣人国で静かに暮らしていた。 しかし、そこにかつての許婚が── なろう様でも公開中です。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

悪役令嬢は高らかに笑う。

アズやっこ
恋愛
エドワード第一王子の婚約者に選ばれたのは公爵令嬢の私、シャーロット。 エドワード王子を慕う公爵令嬢からは靴を隠されたり色々地味な嫌がらせをされ、エドワード王子からは男爵令嬢に、なぜ嫌がらせをした!と言われる。 たまたま決まっただけで望んで婚約者になったわけでもないのに。 男爵令嬢に教えてもらった。 この世界は乙女ゲームの世界みたい。 なら、私が乙女ゲームの世界を作ってあげるわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。(話し方など)

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

処理中です...