【完結】僕とファイさんの恋愛事情。月と僕と貴方の世界。

鏑木 うりこ

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36 僕は死にかけで天使に出会った

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 キシャルティオ王子。だいぶ昔に捨てた名前だ。

「キース、逃げて。貴方だけでも。今がチャンスよ、こんな鳥籠から逃げ出す機会はもうない。貴方は貴方の好きに生きるのよ」

「母さん!」

「行って!それが貴方の母さんの願い」

 焼け落ちる城、その火の手は閉じ込められひっそり生きる事を余儀なくされた僕達の小さな家にも襲いかかってきた。

 母上。いや、母さん。城の下働きだった母さんが王様の気まぐれで召し抱えられ、僕と言う子供を産んでしまった。
 僕が女の子だったら、問題は少なかったし、正妃様が男子を産めば問題もなかった。何と正妃様の子供は全て女子、男子は側妃様が産んだ俺より5つ下の子供が一人のみ。あと全て女子だった。

 女子には王位継承権がない。

 僕達親子は監視下に置かれた。雨霰のような虐め。僕は王子になんかなりたくなかった。王位継承権も要らないと言ったのに、僕達は自由にはなれなかった。
 そして王城は燃え、僕は一人で逃げ出した。

 母さんが色々教えてくれたし、父親なんて一欠片も思った事がない王様が気まぐれで寄越した金目のものは全て持たせてくれたので、なんとか食いつないできた。
 それでも街から街へと転々と逃げ回った。何処にいても追われている気がして休まる事が無かった。

 とうとう運悪く、移動中の馬車が魔物に襲われた。

「うわああーー!」

 皆、散り散りに逃げ、僕も死を覚悟した。魔物に噛まれた傷は深くて、血がいっぱい流れている。あまり良い人生じゃなかった、目を閉じようとしたら

「おい、お前。死ぬのか?」

 天使が目の前にガラ悪く座り込んでいた。背中から羽はないけど、目の色は金色と紫と言う色違いに、水色の長髪が綺麗だった。

 一目惚れって本当にあるんだ、と思った。死ぬ前にこんな綺麗な人?を好きになれて良かった、僕の人生は捨てたもんじゃ無かったなぁと神に感謝したけど、天使はその整った唇からとんでもない提案をしてきた。

「なあ、お前。もう死ぬんだろ?なら、お前の残りの命、俺にくれや」

 僕の命が欲しい?この天使が?良いよ、僕はもう何も未練もないし、人体実験でもなんでも。
 天使は無造作にポーションを僕にぶっかける。あっという間に傷が塞がってしまった!これなに?!噂の冒険者とかが持ってるエクストラポーションとかそういうの??なんかめちゃくちゃ高くて平民なら一年遊んで暮らせるとか言うやつ??

「立てんだろ?行くぞ」

 ここで死ぬ予定だった僕はノロノロだけど、自分の足で立ち上がる事が出来た。そのまま翼のない天使について行くと、物すごくぐちゃぐちゃの酷い隠れ家に案内された。天使はお片づけは苦手のようだ。

 そして

「わりぃんだけど、俺とヤってくんねぇ?」

 って服を脱ぎ始めたもんだから、僕はほっぺをつねった。けれど、その人はごちゃごちゃで汚いベッドに素っ裸で転がって

「あー男の体だからなー。どうしたら良いんだ?なんかジェル?あ!尻ん中洗わねえとやばい奴?!なんかその辺の補正かかってねぇかなー。いやでも、確かにケツから出るもん出るしなー」

 ちょっとトイレ行ってくるわ、とか言っていなくなった。僕が逆のほっぺをつねりあげていると戻って来て

「もし、腫れたら薬やるから、ちょっとまず呪いの変質が可能か試したいんだ。挿れてくれ」

 と、こっちにテロテロ光ったお尻の孔を向けられた時、僕の中で色んな物が弾け飛んだね。そりゃ盛大に。僕って結構ケダモノだったんだよ、知らなかった。

「あっ!馬鹿!やっ!初めてなんだから!痛い!痛い!!」

「あっ!あっ!す、すご、凄い!凄いです!ああ!!凄いいいーー!」

「やめろ!馬鹿っ!痛い!変質のっ!あっ!やっ!やん、やっ!あっーーー!」

 僕の初めてはファイさんでファイさんの初めては僕だったけど、

「てめ!この、阿呆!!」

 無茶苦茶に突っ込んで中に出し、嫌がって捻る体を押さえつけてやりまくった。もう出るのものが無くなってぐったり気絶をして……目が覚めたら、思いっきり殴られた。

「痛いぃーー!天使が殴ったぁ!」

「天使じゃねーし!俺の名前はファイだ!」

「僕はキースです、ファイさん」

 僕達の出会いは僕にとっては最高だった。

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