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我、知る

33 我と邪神

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 リジーは何も感じない真っ黒な世界に漂っている。時たま巨大な手がリジーの体を掴んで上に引き上げる。

「あ……」

 その時は意識が戻るのだが、苦しい。

リズレット、我を受け入れるのだ

「嫌だ」

強情だな。いつまで持つのだ?

「助けが来るまで」

来るのか?助けなど。こんな深い闇の中に!来る訳がない。

「クロードのしつこさは異常だぞ、あやつが諦めるとは思えん」

では助けて貰えない体にしてやろう

「やめろ!っ!あっ!」

 ゴリゴリと中を抉られて、また闇の中に落とされた。



リズレット、女がいる。犯して殺そう。

「だめだ、女性には優しくしろ」

何故だ?あんなに弱い生き物、好きにしていいだろう?

「女性は弱いように見えてとても強いのだぞ?そんな事も知らんのか、お前は阿呆だな」

阿呆ではないわ!早く我の前に膝をつけ!

「断る」

 いつまで持つのかな?

「いつまでもだ。うぅんっ!」

 また 闇へ落ちる。


リズレット、赤子がうるさい。捨てようぞ

「知らんのか、赤子は泣くのが当たり前じゃ。ついでに糞を垂れるのも仕事じゃ」

そんなものはいらん、獣の餌にしよう

「我とて赤子であった時はうるさく泣いて糞を垂れておったわ。お主もそうであろう。自分は良くて人はならんとは傲慢じゃ」

我は赤子であった時などないわ

「いーや、絶対あるね」

うるさい!黙れっ

「はっ!大声を出しても無駄じゃぞ?我はお前が怖くないからの!」

黙れ!だまれ!

「ふは!笑いが出てしまうわ!」

黙れっ!

「ひっ!やめっ!うぐっ」

 闇に沈む。


リズレット 奴隷がおるぞ?お前の優しさとやらで助けてやれ

「むやみと助けて良いものではないわ。奴隷とて口がきけるのだ。どうしたいかきかねばならん」

奴隷だぞ!好きにすれば良いのだ!

「何かあって奴隷になったのであろうよ。我は言葉が喋れるのでな?学があるのじゃ。お主、やはり阿呆じゃの」

阿呆に阿呆と呼ばれなくないわ!

「確かにな!ふふっ!」

黙れ!リズレット!

「やめ……きゃんっ!」

闇へ。



「まだ邪神はリズレットを食い尽くしていないのか!」

 魔王城の魔王の間には御簾が下されており、その奥にリズレットが横たわっていた。
 まだリズレットの心が残っているらしく、たまに声が聞こえてくる。

 前回はすぐに食い尽くされ、破壊と死にしか興味がない邪神は扱い易かったのに。
 元父の参謀は舌打ちする。リズレットが残っているうちに外に出して何かあっては面倒だ。全て邪神に成り代わってから、世界を蹂躙したい。

「邪神さえ完全復活すれば勇者など、恐るるに足りんのに!」

 更に苛立たしいのは勇者どもはこの包囲網を狭めて来ている。いずれ城に攻め入るだろう。

「小賢しいリズレット!贄に捧げてなお、わしの邪魔をするのか!わしの手駒の分際で!!」

 憎い、憎い!憎い!リズレット、お前が憎い!!


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