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50 俺、考えてること顔にでてるか?
「それはまだ生きているか」
「それ、なんて言うな!こいつの名前はフィンって言うんだ」
聞いたことがあるような声が後ろからして、その感じの悪い奴は誰なのか顔を見てやろうと振り返った。
視界は大体真っ黒だった。
フィンの離れは半分吹き飛んでいて青空が見える。真っ青な空と真っ黒な体のコントラストに目が痛い。
「おい、お前。体を俺に寄越せ」
「はは、私は死ぬんだろうけど、幻覚が見えるタイプの毒だったのかな?真っ黒なドラゴンが見えるよ、リクト」
話は噛み合ってないし、説明もいろいろ足りないだろうが、フィンの死は目前だ。きっと死んでしまってはできない何かが必要なんだろう。
「フィン、幻覚じゃない。こいつは黒竜イスファーン。こいつの望みを叶えるか?」
フィンは目を見開いた。騎士団が必死で行方を探していたイスがなぜかここに居る。そしてフィンの体を欲しいと言った。それが今分かる、事実。
「……差し上げましょう。黒竜」
「ありがたく。対価は何が良い?」
二人の会話は短い。寸暇も惜しいとはこのこと。
「ワフウハンバーグ……」
「それはリクトが叶える。我、黒竜に望むことを述べよ」
惜しい時の間だが、フィンは目を閉じ、そして口を開いた。
「私の元婚約者の女性を良き方向へ」
「委細承知」
そうして、口を笑みの形にしたフィンをばくり、と音付きで頭から丸ごとイスは食べてしまった。
その場にフィンであったのもは、ベッドの上の残った微かな温もりだけだった。
真っ黒なドラゴンがほんの少し口を開ける。そこからフィンの魂らしき靄が漏れ出てきた。
それは俺の周りをふわりと一周してから、ゆっくり上へ上がっていく。立ち止まりも、振り返りもしないでただ上へ。
「もう、未練も何もないんだろうな」
「あるのはワフウハンバーグへの執着だけかもしれん」
ああ、家はあのハンバーグレストランのチェーン店の側だと良いな。あの独特のプレートに入った奴が良いぞ。300グラムは軽いかな?ドリンクはいちご牛乳がオススメだからな……。
青空を見上げていると、途中から光が差した。なんだっけ?あれは天国への梯子とか言われてる自然現象だっけ?雲の隙間から太陽光が細く何本も差すやつ。
でも空は雲一つない快晴だ。ああ、神様の野郎が気を利かせて回収してくれたんだな。
死ねなんていってごめん。頑張って働いてね。
俺はしばらくフィンの魂を見ていた。
「ほんで、なんでフィンを食ったんだ?この人食いドラゴン」
「人の体を手に入れるためだ。転生なんて神に頭を下げないと無理だって分かったからな」
しゅるしゅると音を立てて巨大な竜の体から人間サイズにイスは変化した。見上げなくていい分楽になった。
「はあ?意味がわからん」
「まあ、人間を丸ごと食ってその体を使うって所だ。折角ならお前が涎を垂らして美味そうだっつってた奴が良いだろう?」
「おま、見てたのか!」
「たまたまだ」
こいつ悪趣味だな!しかし、そんなんで良いんだろうか?とも思う。食われてしまったフィン。まず助からなかったし、苦しみから逃れられた点では良かったのか?
ただイスファーンの力があればフィンは死なずに済んだのでは?と思う。
しかしイスファーンはフィンの体が欲しいと言った。体をイスファーンに取られたら、フィンが生きていられる訳がない。
そしてそこまで考えてしまうと次にこう思うんだ。そもそも毒を盛ったのはイスファーンじゃないのか?と。俺は疑いの目をイスに向けてしまう。
「リクト、先に言っとくが何も言わずにフィンとか言う奴を食うことくらい俺には簡単にできたんだからな?」
「あ、そっか」
気を使ってくれたんだな!お前良いやつじゃん。
「それ、なんて言うな!こいつの名前はフィンって言うんだ」
聞いたことがあるような声が後ろからして、その感じの悪い奴は誰なのか顔を見てやろうと振り返った。
視界は大体真っ黒だった。
フィンの離れは半分吹き飛んでいて青空が見える。真っ青な空と真っ黒な体のコントラストに目が痛い。
「おい、お前。体を俺に寄越せ」
「はは、私は死ぬんだろうけど、幻覚が見えるタイプの毒だったのかな?真っ黒なドラゴンが見えるよ、リクト」
話は噛み合ってないし、説明もいろいろ足りないだろうが、フィンの死は目前だ。きっと死んでしまってはできない何かが必要なんだろう。
「フィン、幻覚じゃない。こいつは黒竜イスファーン。こいつの望みを叶えるか?」
フィンは目を見開いた。騎士団が必死で行方を探していたイスがなぜかここに居る。そしてフィンの体を欲しいと言った。それが今分かる、事実。
「……差し上げましょう。黒竜」
「ありがたく。対価は何が良い?」
二人の会話は短い。寸暇も惜しいとはこのこと。
「ワフウハンバーグ……」
「それはリクトが叶える。我、黒竜に望むことを述べよ」
惜しい時の間だが、フィンは目を閉じ、そして口を開いた。
「私の元婚約者の女性を良き方向へ」
「委細承知」
そうして、口を笑みの形にしたフィンをばくり、と音付きで頭から丸ごとイスは食べてしまった。
その場にフィンであったのもは、ベッドの上の残った微かな温もりだけだった。
真っ黒なドラゴンがほんの少し口を開ける。そこからフィンの魂らしき靄が漏れ出てきた。
それは俺の周りをふわりと一周してから、ゆっくり上へ上がっていく。立ち止まりも、振り返りもしないでただ上へ。
「もう、未練も何もないんだろうな」
「あるのはワフウハンバーグへの執着だけかもしれん」
ああ、家はあのハンバーグレストランのチェーン店の側だと良いな。あの独特のプレートに入った奴が良いぞ。300グラムは軽いかな?ドリンクはいちご牛乳がオススメだからな……。
青空を見上げていると、途中から光が差した。なんだっけ?あれは天国への梯子とか言われてる自然現象だっけ?雲の隙間から太陽光が細く何本も差すやつ。
でも空は雲一つない快晴だ。ああ、神様の野郎が気を利かせて回収してくれたんだな。
死ねなんていってごめん。頑張って働いてね。
俺はしばらくフィンの魂を見ていた。
「ほんで、なんでフィンを食ったんだ?この人食いドラゴン」
「人の体を手に入れるためだ。転生なんて神に頭を下げないと無理だって分かったからな」
しゅるしゅると音を立てて巨大な竜の体から人間サイズにイスは変化した。見上げなくていい分楽になった。
「はあ?意味がわからん」
「まあ、人間を丸ごと食ってその体を使うって所だ。折角ならお前が涎を垂らして美味そうだっつってた奴が良いだろう?」
「おま、見てたのか!」
「たまたまだ」
こいつ悪趣味だな!しかし、そんなんで良いんだろうか?とも思う。食われてしまったフィン。まず助からなかったし、苦しみから逃れられた点では良かったのか?
ただイスファーンの力があればフィンは死なずに済んだのでは?と思う。
しかしイスファーンはフィンの体が欲しいと言った。体をイスファーンに取られたら、フィンが生きていられる訳がない。
そしてそこまで考えてしまうと次にこう思うんだ。そもそも毒を盛ったのはイスファーンじゃないのか?と。俺は疑いの目をイスに向けてしまう。
「リクト、先に言っとくが何も言わずにフィンとか言う奴を食うことくらい俺には簡単にできたんだからな?」
「あ、そっか」
気を使ってくれたんだな!お前良いやつじゃん。
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すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。