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51 それって食えるんだ?
「き、貴様!何者だ!」
俺がぼんやりと空を見上げていると後ろから剣を構えた騎士が一人叫んでいる。ああ、名前は知らないが顔は今日見たな。今日の見張りの騎士、こいつからいつもの食材を受け取って料理して食ったら毒だったっけ。
何者も何も、人間の姿になってもイスはイスだ。真っ黒い髪に気持ち悪いくらいキンピカに光る目。背は高くて態度がとても偉そう。体つきもしっかりしていて……ありがたいことに服を着ている。偉いぞ、イス。
さっきまで黒い竜のいた場所に、こんな男が立っていたらそりゃあの黒竜がこの人間になったと普通考えるだろう?あーそれともなにか?あんまりに予想外なことが起きるとパニックを起こして認めたくない!ってなっちゃうあれか?そうならまあ悪いがそういうことなんで、というしかないな。
それにしてもこんな非友好的な態度を取られているのに、イスが黙ってるなんて。一体どうしたのかな?と顔を覗き込むと何か考え込んでいるように見える。
「イス?何者かと聞かれているけど?どうした?腹でも痛いのか?」
まるっと毒物のフィンを食ったから腹でも壊したんだろうか?あり得る。
「リクト、今俺をバカにしただろう?後でお仕置きしてやる。今、フィンの記憶を食っている所だ、少し待て」
「記憶って、食えるんだ」
そっちに驚いたぞ。
「フィンは馬鹿正直に記憶まで置いて行ったからな。いろいろあったほうが楽だから使わせてもらうさ。ふぅん、少し前のフィンは相当頭が悪かったんだな。そりゃ弟に乗っ取られるだろうよ、なんて甘ちゃんだ!」
「フィンは……そうだな、甘い奴だったな。でもその優しさは全部悪いとは思わないぞ……ここでくだらないことをやっていたけれど、結構……楽しかった」
「……フィンも楽しかったようだな。お前と煤で真っ黒になって馬鹿笑いしている記憶はきれいに色がついている。勉強なんかの記憶は灰色だし、教師の顔も覚えていないのか真っ黒だ」
そうか、フィンも楽しかったか……暇でつまらなかった毎日が少しでも楽しくなっていたなら俺も嬉しい。今度はもう少し上手く生きて、お前の優しさが認められる世界に誕生できるといいな。
「き、貴様らーー!」
騎士が腰の剣を抜いてイスに飛び掛かって行った。
「俺はお前が好きではない」
一瞥しただけのイスは腕を組んだまま、また目を閉じた。きっとフィンの記憶を消化しているんだろう。でも代わりに人間にはないはずのぶっとい尻尾がひゅうんと空を切り、飛び掛かって来た騎士の胴を思いっきり横殴りする。
「ぐわっ!!」
ものの見事に騎士の体は飛んで行って、元フィンの住んでいた屋敷の残骸に盛大に叩きつけられる。そう、フィンの屋敷は竜の爪で引っかかれたのか、食べられたのか、半分以上がくりぬかれたように無くなっていて、瓦礫が積んである状態だった。
イスは玄関から入るって言葉を知らない奴だったんだな。変な所から登場しないで貰いたいな。
俺がぼんやりと空を見上げていると後ろから剣を構えた騎士が一人叫んでいる。ああ、名前は知らないが顔は今日見たな。今日の見張りの騎士、こいつからいつもの食材を受け取って料理して食ったら毒だったっけ。
何者も何も、人間の姿になってもイスはイスだ。真っ黒い髪に気持ち悪いくらいキンピカに光る目。背は高くて態度がとても偉そう。体つきもしっかりしていて……ありがたいことに服を着ている。偉いぞ、イス。
さっきまで黒い竜のいた場所に、こんな男が立っていたらそりゃあの黒竜がこの人間になったと普通考えるだろう?あーそれともなにか?あんまりに予想外なことが起きるとパニックを起こして認めたくない!ってなっちゃうあれか?そうならまあ悪いがそういうことなんで、というしかないな。
それにしてもこんな非友好的な態度を取られているのに、イスが黙ってるなんて。一体どうしたのかな?と顔を覗き込むと何か考え込んでいるように見える。
「イス?何者かと聞かれているけど?どうした?腹でも痛いのか?」
まるっと毒物のフィンを食ったから腹でも壊したんだろうか?あり得る。
「リクト、今俺をバカにしただろう?後でお仕置きしてやる。今、フィンの記憶を食っている所だ、少し待て」
「記憶って、食えるんだ」
そっちに驚いたぞ。
「フィンは馬鹿正直に記憶まで置いて行ったからな。いろいろあったほうが楽だから使わせてもらうさ。ふぅん、少し前のフィンは相当頭が悪かったんだな。そりゃ弟に乗っ取られるだろうよ、なんて甘ちゃんだ!」
「フィンは……そうだな、甘い奴だったな。でもその優しさは全部悪いとは思わないぞ……ここでくだらないことをやっていたけれど、結構……楽しかった」
「……フィンも楽しかったようだな。お前と煤で真っ黒になって馬鹿笑いしている記憶はきれいに色がついている。勉強なんかの記憶は灰色だし、教師の顔も覚えていないのか真っ黒だ」
そうか、フィンも楽しかったか……暇でつまらなかった毎日が少しでも楽しくなっていたなら俺も嬉しい。今度はもう少し上手く生きて、お前の優しさが認められる世界に誕生できるといいな。
「き、貴様らーー!」
騎士が腰の剣を抜いてイスに飛び掛かって行った。
「俺はお前が好きではない」
一瞥しただけのイスは腕を組んだまま、また目を閉じた。きっとフィンの記憶を消化しているんだろう。でも代わりに人間にはないはずのぶっとい尻尾がひゅうんと空を切り、飛び掛かって来た騎士の胴を思いっきり横殴りする。
「ぐわっ!!」
ものの見事に騎士の体は飛んで行って、元フィンの住んでいた屋敷の残骸に盛大に叩きつけられる。そう、フィンの屋敷は竜の爪で引っかかれたのか、食べられたのか、半分以上がくりぬかれたように無くなっていて、瓦礫が積んである状態だった。
イスは玄関から入るって言葉を知らない奴だったんだな。変な所から登場しないで貰いたいな。
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