【完結】ゲームで死んで救いのないクソったれな世界で魔王になる

鏑木 うりこ

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28 救いの手

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 俺は恐る恐る黒い箱に手を伸ばして触れた。ウルズとスクルドに止められるかと思ったけど、二人は腕を組んだまま見ているだけだった。

「あ……」

 黒い箱が開いて、中から小さな人影の映像が映し出された。その人影の顔は分からない。多分顔はどうでも良かったんだろう。
 音が、声が再生された。

「魔王……アッシュ。いや、中村悠馬さん、ですよね。俺はメイク魔王の立ち上げに関わったメンバーの一人、上田と言います」

 そこから始まった上田さんの話に俺は涙するしかなかった。

 やはり俺は現実で死んでいた。予想通り、衰弱死だった。数少ないゲーム仲間の書き込みをたまたま見た上田さんが会社の人間と共に死んだ俺を見つけてくれた。

「もう少し早ければ、と悔やみました」

 俺の体はまだ腐敗しておらず、きれいなままだったらしい。

「そこから俺は中村さんのゲームデータから情報を入手しました。そしてあなた方がゲームなのか、なんなのか……その世界に囚われている事を知ったんです」

 そして有志を募って解析に明け暮れたらしい。専業はいない、給料も出ない。でも上田さんはゲームを作った人間として責任を取りたかったんだそうだ。

「俺と数人でメイク魔王のデータを洗い直しました……でも洗っても洗っても不可解な現象が起き続ける、説明ができないんです……メイク魔王の世界が意志を持ち、自分達を守ろうとしているかのような変革が起こっているんです。特に勇者が強すぎるのが典型になります。何故、魔王に倒されるために設定した勇者があんなに強いのでしょう?書き換えても書き換えても勇者は弱くなりません、どうやっても魔王は勇者に勝てないんです……ゲームと矛盾しているんです」

 俺は上田さんの言っている意味が分からなかった。世界が意志を持ち勇者を強くした?次々と送り込まれてくるプレイヤー魔王を始末するために世界が勇者を強くしたって言っているのか……?分からない、意味が分からない。

「データが勝手に書き換えられるんです……この中村さんのデータもどんどん書き換えられています。俺が現実からアクセスする時もどんどん障害が出て……入れなくなって行くんです、メイク魔王はどんどん我々の手から勝手に離れて、独自進化をしているとしか思えないんです」

 ゲームが、進化……?分からない、意味が分からない。

「私もきっとアクセスできなくなるでしょう。中村さんに直接会って、話を聞いて……現実にあなたの声を届けたかった、他の囚われた魔王達を助けてあげる手伝いをしたかった。でも、いつここに来れなくなるか分からない以上、メッセージだけでも伝えることを選びました。このボックスの中にプログラムを入れてあります。最初に流した「能力偽装」プログラムの進化版と「同族喰い」です。勇者に倒れされるしか死ねない魔王を……同意があれば喰ってしまう事が出来ます。多分「喰え」ば「喰われた」方の魔王は死を迎えることができるでしょう。その世界から解放されるはずです」

 ……そう、それが欲しかったんだ……。俺達魔王に救いの手段を俺達の手で。

「私は次はこの世界の来れないかもしれない……だから中村さん、貴方に託します。あなた以外の魔王にアクセスする方法を私達は知らないからあなたに託すしかないのです……あなたの魂に救いがあることを祈って……」

「……ありがとう、上田さん……受け取ったよ」

 俺のステータス画面の非アクティブだった「同族喰い」はアクティブ状態に変わっていた。




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