【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

鏑木 うりこ

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9 ワシ、お手紙を拒否る

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「すみません、これを預かって参りました」

「誰から?」

 手紙を持ってきた女生徒がいる。差出人が誰なのか聞いてみるのは普通だろう?

「神子のカズハ様です」

 神子から手紙で呼び出されるイベントなんてあったっけ?ないな。

「神子様からお手紙を貰う必要性を感じませんので、受け取れません。お持ち帰りください」

「え!?」

 女生徒はびっくりするけれど、考えてみてよ。振られたヤツが振られる原因になったヤツからのお手紙を受け取るか?普通。破いて捨てないだけ良心的だろう?

「う、受け取っていただかないと私、困ります!」

「そうなんだ。私は受け取りたくないから、受け取って貰えなかったって言って持って帰ると良いよ」

 おかしなことを言ってはいないぞ。教室がざわりと揺れた気がするがまあこの程度なんてことはない。腹芸は磨かねばならんよ、生徒諸君。

「こ、困ります……困ります!」

 この女生徒はカズハの取り巻きの一人だしね。

「私も困っているよ、名前も知らない女性にしつこくされて。そろそろ授業だろう?君も教室に帰りなさい。学園は勉強も大切にしないといけないからね」

「ううっ……」

 手紙を持って女生徒は自分の教室に戻って行った。うん、それでいい。私だって孫を虐められて腹が立っているんだ。やり返すときはやりかえすぞ。

「……まあ、確かにカレリオ様が神子からの手紙を拒否したっていいよな」

「そうよね、殿下を奪った神子からの手紙……ふつう読みたくないわよね」

 そういう事だ。この事件はうすーく学園に広がるだろう。でもそれでいいのだ、何故、カレリオが神子を好かねばならない?嫌って当然だろう?その日の授業は何事もなく終わりそうだったのだが、お昼ご飯を食べて帰ってくると机の上に手紙が乗っている。

「リドリー」

「はい、カレリオ様」

 リドリーが手紙を拾うが差出人も宛先も書いてはいない。ただ、私の机の上に乗っていただけだ。

「誰のものか分かりません」

「そうだな、教授が入ってきたら落とし物として届けるように」

「分かりました」

 また少しだけ教室は揺れたが、そのまま教授に提出した。

「カレリオ様の机の上に乗っておりましたが、誰のものか分かりませんので、封を切りません。このクラスの物かと思いますが、取得物としてお預かり願えませんか?」

 教授も少し困った顔をしたが、

「この手紙に心当たりのある者は?」

 当然このクラスにはいない。手紙を運んだ女生徒も、神子も隣の隣のクラスなのだから。

「……仕方がない、手掛かりがあるかもしれん。開けてみるか……」

 封も簡単にはがれるものだったので、教授は皆の目の前で封を切った。

「……今日の放課後、裏庭で待つ……差出人はない……一体誰だ?バンドール、君の机の上にあったんだろう?心当たりは?」

がもし私宛だとしても何故裏庭に呼び出されなければならないのでしょうか。用事があるなら聞きますが、人気のない所への呼び出しなど何か恐ろしい気がしますね」

 あー……神子が悪役令息のカレリオに裏庭に手紙で呼び出されるイベントがあったわ。逆じゃないか?まあゲームの内容が狂ってきてるのならそれはそれで都合がいい。鉱山が遠ざかっている気もする!

「……教室では話せない内容とでも言うのだろうか……まあこの手紙は預かって置く、さあ、授業を始めるぞ」

 誰が裏庭なんか行くか、確か裏庭でカレリオが神子を平手打ちし、殿下に近づくな!と言う奴だ。そして赤く腫らした頬をセブスト殿下に見つかり

「な、なんでもありません……僕が、悪いんです……」

 と、神子は涙ながらにいい、抱きしめあう……だったな?勝手に抱きしめあったらいいだろうに……巻き込まないで欲しい。

 恙なく授業を終わらせ、リドリーを連れて寮に帰った。久しぶりに足を踏み入れた寮はとてもきれいで驚いた。ワシが通っていたころとは比べ物にならーん!ついでに部屋もきれいで驚いたぞ。

「大旦那様、こっちに使用人の部屋もあります」

「リドリー。カレリオと呼びなさい。部屋で大人しくしているからお前も必要なものがあれば買い出しに行っていいぞ。ほれ、金はワシ持ちじゃ」

「やった、カレリオ様太っ腹!」

 寮の下には購買があるからな。リドリーとて自由に買い物もしたいだろう。

「あ、湿布と栄養剤も買ってきてくれー。腰が痛い」

「あはは!分かりました!」

 椅子に長時間座っているのは腰に負担がかかる!頑張れワシ、孫の為に頑張るんじゃ!

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