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44 ワシ、そんな役目ごめんこうむりたい
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「あ、あの殿下。ワシは家に……」
「何か嫌な事でもありましたか?あったなら直しますからいて下さい!」
「いや、あの……」
「お願いします!」
あの日から殿下はぴったりワシにくっついている。と言うか、ワシに自由が全くない!
「あの、だからと言って……やり過ぎでは……」
ワシはカレリオより少し背が高い。小さい方ではないワシを膝の上に抱え込んで離さない。
「駄目ですか?」
「うっ」
お願いする時はきゅーんと鳴きそうなあの犬みたいな目で見てくる。賢しいかな、こやつは!
「おはようございます殿下、ダグラス様。今日のご予定ですが……」
「……」
最初のうち、ワシを離さない殿下を見てギョッと目をむいていた侍従やメイドももう驚かない。それどころか殿下に頼みにくいお願いをする時にはワシに言って来るのだ。
「あ、あの……この案件なのですが……」
チラチラとワシの顔色を伺いながら殿下の予定を言うな!
「断る」
「そこを何とか!」
だからワシに言うな!
結局
「あのぅ……殿下、侍従殿もああ申されておりますし……」
「ダグラス様が王都で人気のケーキを私と一緒に食べてくれるなら良いですよ!」
「いや、ワシはケーキは胸焼けがするのであまり……」
「ケーキですねっ!すぐに用意して参りますっ!!」
侍従殿は大急ぎでケーキを買いに人を手配したようだ。そう言うのは本当にやめてほしいのだが。何でワシが殿下にお願いせねばならんのだ?そしてなんでワシがケーキを食わねばならんのだ……。
その殿下に割り振った仕事にワシは何の関係も無かろうて……。
「すまんな、バンドール翁……いや、もう翁ではないな……なんじゃ、何と呼べば?」
「は、はあ……」
陛下にまで言われてしもうた。
「知っての通り、今やセブストはこの国で一番強くてのう……二番手がファルマン騎士団長の息子のトレヴァーなのだが……まあアレはセブストと仲が良いから……」
止める事が出来る者がいないのだと言う。殿下が強くなってしまったのは、まあ原因の一端はワシにあるので、致し方ない、のか?
「セブストを!宜しく、頼む!」
つまり、何とか操れ、と言っておられるのか……このジジィに!
「は、はあ……」
どうしろと……。
「ダグラス様の身分に関しては、来年にも私と結婚しますので、問題ないでしょう?不甲斐ないながらも次期王の兄ですから、領地の一つでも賜れればと思っています」
にこにこと陛下の前でもワシからピッタリ離れないセブスト殿下はそんな事を口にする。
ワシのせいで王太子ではなくなったからな……これも殿下に強く出られぬ原因なのだが、こればかりは心の底から申し訳ないと思う。
「それなんじゃが……やはりセブストを王にと推す声が多くてのう……」
「ほう……?」
そう来たか。
「何か嫌な事でもありましたか?あったなら直しますからいて下さい!」
「いや、あの……」
「お願いします!」
あの日から殿下はぴったりワシにくっついている。と言うか、ワシに自由が全くない!
「あの、だからと言って……やり過ぎでは……」
ワシはカレリオより少し背が高い。小さい方ではないワシを膝の上に抱え込んで離さない。
「駄目ですか?」
「うっ」
お願いする時はきゅーんと鳴きそうなあの犬みたいな目で見てくる。賢しいかな、こやつは!
「おはようございます殿下、ダグラス様。今日のご予定ですが……」
「……」
最初のうち、ワシを離さない殿下を見てギョッと目をむいていた侍従やメイドももう驚かない。それどころか殿下に頼みにくいお願いをする時にはワシに言って来るのだ。
「あ、あの……この案件なのですが……」
チラチラとワシの顔色を伺いながら殿下の予定を言うな!
「断る」
「そこを何とか!」
だからワシに言うな!
結局
「あのぅ……殿下、侍従殿もああ申されておりますし……」
「ダグラス様が王都で人気のケーキを私と一緒に食べてくれるなら良いですよ!」
「いや、ワシはケーキは胸焼けがするのであまり……」
「ケーキですねっ!すぐに用意して参りますっ!!」
侍従殿は大急ぎでケーキを買いに人を手配したようだ。そう言うのは本当にやめてほしいのだが。何でワシが殿下にお願いせねばならんのだ?そしてなんでワシがケーキを食わねばならんのだ……。
その殿下に割り振った仕事にワシは何の関係も無かろうて……。
「すまんな、バンドール翁……いや、もう翁ではないな……なんじゃ、何と呼べば?」
「は、はあ……」
陛下にまで言われてしもうた。
「知っての通り、今やセブストはこの国で一番強くてのう……二番手がファルマン騎士団長の息子のトレヴァーなのだが……まあアレはセブストと仲が良いから……」
止める事が出来る者がいないのだと言う。殿下が強くなってしまったのは、まあ原因の一端はワシにあるので、致し方ない、のか?
「セブストを!宜しく、頼む!」
つまり、何とか操れ、と言っておられるのか……このジジィに!
「は、はあ……」
どうしろと……。
「ダグラス様の身分に関しては、来年にも私と結婚しますので、問題ないでしょう?不甲斐ないながらも次期王の兄ですから、領地の一つでも賜れればと思っています」
にこにこと陛下の前でもワシからピッタリ離れないセブスト殿下はそんな事を口にする。
ワシのせいで王太子ではなくなったからな……これも殿下に強く出られぬ原因なのだが、こればかりは心の底から申し訳ないと思う。
「それなんじゃが……やはりセブストを王にと推す声が多くてのう……」
「ほう……?」
そう来たか。
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