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50 地下にあったモノ(アデレード視点

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「ここです。ここを破壊してください」

「は、はい」

 仕方がなくダグラスの指示に従って執務室の壁の一角を槌で殴ると、崩れ、下へ降りる階段が現れた。

 冷たい冷気と気持ちの悪い臭いがしてくる。

「うっ!」「ぐぅっ!」

 ダグラスに付き従っている神官が膝をつく。

「酷い瘴気だ。中はよっぽどですね。行きますよ」

 この中に入ろうと思うのは、流石としか言えない。埃の溜まった汚い階段を慎重に慎重に降りていく。
 気持ちが悪かったが、ダグラスが行くのに私が居ないのは負けた気もするし、私の知らない所で何か仕掛けられても困る。

 しばらく降りていくとダグラスですら息を飲んだ。

「これは……酷い」

 中は魔獣や幻獣の剥製と……人間の死体とで埋め尽くされていた。

「呪術の類いですね。たくさんの殺しをした人間を贄に何かを作り出そうとして失敗し、放置されたようです」

 こんな気持ちの悪い物が我が家の地下に眠っていたとは。さしもの私も青くなる。

「浄化します!皆の者、陣を!」

「はい!」

 神官達が呪文を唱え、ダグラスは神に祈る。

「我らが偉大な主神オーディナルよ!」

 ふん、そうしていると敬虔な信徒に見えるから不思議なものだ。私は流石に門外漢だ。少し離れた所から、神聖な魔法が組み上がって行くのを見ていた。

「大司教様!本体です!」

「人間……?!複数人だな……動物も沢山取り込まれている?」

「魔獣や、聖獣なども?」

「暴れるぞ!」

 部屋の真ん中にある真っ黒な物体は手足のような物を伸ばして、神官達を薙ぎ払った。なんだあれは……化け物か!

「白の縛鎖を打て!」

「檻だ!」

 私は元来た階段を戻る事にした。あんなものが巣くっていたとは、全く予想外だが専門職に任せるとしよう。ダグラス・シトリー、あいつに借りを作ってしまったようで釈然としない。安いからと言って安易な物件に手を伸ばしたのが失敗であったか。なんとか大人しく帰ってくれれば……むしろあの化け物と相打ちになってくれれば……ため息をついて結果を待つしかなかった。


「これは複数の人間を食い合わせているようです」
「この屋敷で何人もの剥製技師が行方を断っているらしいです」

「なるほど、有象無象問わずたくさんの魂を糧として、邪神でも呼び出そうとしたのか……断罪の槍を!」


「我らが偉大なる主神!汝の敵を撃つ、白き光の槍を貸し与えたまえ!」

 ドスドスと黒い闇に白い光が突き刺さり、雄たけび、呻き声が聞こえるが、神官たちは必死で立ち向かう。

「問題ない!何百年も凝り固まった怨嗟であるが、元の呪術が失敗している!祓い続ければよい!」

「はい!大司教様!」

 闇はどんどん砕けて行っているようだった。

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