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20 早まったかもしれない

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「今後もこうやって……話すくらいは出来ますか?」
「出来たらいいなって思ってる」
「俺も」

 この台詞を最後に中身が凛莉師匠の俺と間島が波打って、姿見が普通の鏡に戻った。もう入れ替わることはできなさそうだけれど、凛莉師匠と俺の間には切れない縁の糸が細く繋がっていて、また話は出来る気がする。

「早まった気もするなあ……」

 そのまま後ろに倒れてベッドに転がった。俺はゲームでマラカイト・凛莉というキャラクターが好きだった。むしろ推しているといっても過言ではない。そんな推しが幸せそうに笑ってたんだ……俺の顔でだったけど。推しの幸せを願わないヤツがいるか?いねえよな……だからつい……。

「早まったかなあ……」

 ごろりとベッドの上で寝がえりを打つと目の前にごろん、と転がって添い寝して来るディルド……。

「やっぱ早まったんじゃね!?」

 そして思考の残り香のように、姿見からぽつりと凛莉師匠のとんでもねえ呟きが届いた。

「ところでナルミ、オモチャはオモチャだねぇ……恋人のアレは凄いよぉ……癖になっちゃう」
「くそーー! やっぱり早まった! 師匠だからって許さねえーー!!」

 あんなしおらしかったのは一体なんだ!?演技か? 演技が入ってたのかああああッ!やっぱり中身は凛莉師匠だったっことか?!

「ホント、どうしよ……」

 とはいえ、入ってた中で一番細いのを掴んでみた。細いとはいえなんか凄くてドキドキしちゃう……。

「てぇかこれ全部、凛莉師匠ってば試したのかな……エロ過ぎだろぉ」

 ホントもうあの人は一体ナニを何処まで追求してたんだ?!




「……」

 マークの朝は簡単な朝食で始まる。パンに牛乳、そしてチーズを食べる時もあれば、奮発してソーセージを食べる時もある。お金がない訳じゃない。何せ凛莉師匠の財産は数えきれない金貨に埋もれるくらいだから。でも初級治癒術師ならばこの程度の生活というものを頑なに守っているからこうなのだ。

「……治癒術」

 手を当てた所がぽうっと少し暖かくなって少し残っていた違和感を消してくれた。まさか自分にかけることになろうとは……。

「それにしても……」

 なんていうか結構良かった……一番細いのじゃ飽き足らず中くらいのにまで手を出して、つい腹の奥がしくしくと痛んだ……それも治癒術で回復したけど。朝が来て大変なものを咥え込んだまま寝落ちしていたので、慌てて宝箱の中にしまい込み、こうして朝食を取っている……誰かが近づいた気配がないから大丈夫、大丈夫……。
 でも腹の奥にあったモヤモヤは晴れたし、欲求不満が少し解消されて気分が良い……誰にも迷惑をかけていないし、べ、別に構わないよな、使ったってさ!

「幸せなら、それでいいか……」

 はあ、と大きくため息をついて、今日のルーティンに向かう。マークは街をうろうろするのが仕事みたいなものだからね。
 アレは例の宝箱に大事にしまって厳重に鍵をかけた!
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