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社畜と入れ替わった闇暗殺者の私と同期の話
1 ここは?
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静かに目を開けなかった。辺りの様子がまったく違うことに気がついたからだ。まず音。静かでありざわめきに満ちている。おかしい、私は確か闇ギルドの自室で仮眠を取っていたはずだ。サファイアにも近寄らないよう言い聞かせてほんの少し目を閉じたはずなのに。とても柔らかい寝具の上で熟睡していたようだ。
熟睡なんてなんて恐ろしいことをしてしまったのか。どこから誰が狙っているかもしれないというのに!昔と違って命を脅かされることは少なくなったが、ゼロではない。用心こそが自分を守る最大の盾なのに……!
近くに人の気配がないことを確認してからゆっくり目を開ける。もし、目の前に気配を殺し切った暗殺者がいても対応できる、そんな速度で。
しかし、私の予想を覆してここには誰もいなかった。見慣れない物がたくさん積み上げられた部屋。その中で目を引く光を放つ平たい何か。
「……私……?」
その煌々と明るい……後で徹に教えて貰ったが、パソコンの画面に映し出されている私しか知らないはずの情報。私がマラカイト・凛莉である事実。
一体何処の凄腕の情報家に嗅ぎつけられたのかとたっぷり冷や汗をかいたが、ここでやっと周囲の異常性に目をやることができた。
「ここは、どこだ……? 私は一体」
自分の部屋とまったく違う空間に一歩も動けず座り込んでしまった。
鳴る音、私は知らないがこの体の持ち主は正体を知っていて、すまほとかいう物らしい。出なければ色々面倒らしいのだが、私が出たらもっと面倒なことになるだろうと思う……怖い。とても柔らかい寝具を被って耳を塞ぐ……どうすればいい?どうしたら良いか何も分からない。
音に怯えながら過ごしていると窓の外は火が傾き夜の帳が下りてくる。
「……太陽はここでも落ちるんだな……夜なのになんて明るいんだ」
窓の外も人が大勢いて姿格好も私の知るものとまったく違う……ああ、一体どうしたら良い?情報が知りたい、そう思った時に浮かんで来たのはすまほを見れば良いという思い。
「すまほ……」
今は静かな小さなモノ。そっと持ち上げて、操作はなんとなく体が覚えている。検索をすれば……表面に触ろうとした瞬間、タイミング良くかかってきた着信に応対してしまった。
「もしもし? 谷口か? 無断欠勤だって何かあったのかーー」
「あっ……」
心配するその声につい私は助けを求めてしまっていた。
「あ……た、助けて、くださ……」
「谷口?! 分かったすぐ行く。一度切るぞ」
「あっ」
迂闊!誰とも分からない人間に助けを求めるなんて!いや、でも確か……このすまほとはよく分からないが顔認証とかいうやつで、これを覗き込めば使えるようになる。そして通話履歴を見れば誰と会話したのか分かる……この体が覚えている。
「間島、徹……仕事の仲間、ムカつくけど悪い奴じゃない……」
この体がこの人なら何とかなるかもしれないと判断したんだろう。
「ここはどこなんだ、そして私は誰と入れ替わったんだ?」
黒いすまほの表面に見えた顔は生来の私のものではなかった、混乱がますます深まるばかりだ……頼む、間島という人よ、私の味方になってくれ!
熟睡なんてなんて恐ろしいことをしてしまったのか。どこから誰が狙っているかもしれないというのに!昔と違って命を脅かされることは少なくなったが、ゼロではない。用心こそが自分を守る最大の盾なのに……!
近くに人の気配がないことを確認してからゆっくり目を開ける。もし、目の前に気配を殺し切った暗殺者がいても対応できる、そんな速度で。
しかし、私の予想を覆してここには誰もいなかった。見慣れない物がたくさん積み上げられた部屋。その中で目を引く光を放つ平たい何か。
「……私……?」
その煌々と明るい……後で徹に教えて貰ったが、パソコンの画面に映し出されている私しか知らないはずの情報。私がマラカイト・凛莉である事実。
一体何処の凄腕の情報家に嗅ぎつけられたのかとたっぷり冷や汗をかいたが、ここでやっと周囲の異常性に目をやることができた。
「ここは、どこだ……? 私は一体」
自分の部屋とまったく違う空間に一歩も動けず座り込んでしまった。
鳴る音、私は知らないがこの体の持ち主は正体を知っていて、すまほとかいう物らしい。出なければ色々面倒らしいのだが、私が出たらもっと面倒なことになるだろうと思う……怖い。とても柔らかい寝具を被って耳を塞ぐ……どうすればいい?どうしたら良いか何も分からない。
音に怯えながら過ごしていると窓の外は火が傾き夜の帳が下りてくる。
「……太陽はここでも落ちるんだな……夜なのになんて明るいんだ」
窓の外も人が大勢いて姿格好も私の知るものとまったく違う……ああ、一体どうしたら良い?情報が知りたい、そう思った時に浮かんで来たのはすまほを見れば良いという思い。
「すまほ……」
今は静かな小さなモノ。そっと持ち上げて、操作はなんとなく体が覚えている。検索をすれば……表面に触ろうとした瞬間、タイミング良くかかってきた着信に応対してしまった。
「もしもし? 谷口か? 無断欠勤だって何かあったのかーー」
「あっ……」
心配するその声につい私は助けを求めてしまっていた。
「あ……た、助けて、くださ……」
「谷口?! 分かったすぐ行く。一度切るぞ」
「あっ」
迂闊!誰とも分からない人間に助けを求めるなんて!いや、でも確か……このすまほとはよく分からないが顔認証とかいうやつで、これを覗き込めば使えるようになる。そして通話履歴を見れば誰と会話したのか分かる……この体が覚えている。
「間島、徹……仕事の仲間、ムカつくけど悪い奴じゃない……」
この体がこの人なら何とかなるかもしれないと判断したんだろう。
「ここはどこなんだ、そして私は誰と入れ替わったんだ?」
黒いすまほの表面に見えた顔は生来の私のものではなかった、混乱がますます深まるばかりだ……頼む、間島という人よ、私の味方になってくれ!
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