【完結】尻神様が降臨なされた。BL世界を何周もする俺の尻はミラクル!

鏑木 うりこ

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10周目 「何も持たない」魔王

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「おにいぢゃん……」

「うわ、どうしたのよ」

 俺の夢の中に妹が生前の姿で立って泣いていた。俺の目から見えるから、俺自身の姿は見えないはずなのに、俺も生前のサラリーマン姿でいる。

「推しの死に耐えられましぇん……うう、グスグス……」

「推しってジェリフ?」

「うん……銀髪の時の精霊ジェリフ。優しくて癒しの天使と一緒に暮らして最強の時の番人と愛を紡ぐ予定だったのに……ううー!ぐすんぐすん」

「もしかして、ずーっとこの調子なの?」

 ジェリフが砂になって消えたのは俺が生まれてまもなくだから、10年間?!何してんの!!

「そうだよ!ここ10年ずっとこうだよ!みんな!」

「みんな?!」

 はぁ?!妹だけじゃないのか!馬鹿か!それこそジェリフが可哀想じゃないか!あいつはおっかない奴だったけど、こうなる事は望んでなかったろ!

「お兄ちゃん!どうしても皆、立ち直れないの!お願い、私達を助けて!!」

「はあ?意味が分からん!俺に何が出来んだよ、ジェリフはもう……」

「そこは!そこは!私達、神だから!お願い、お兄ちゃん!ジェリフをお願いーーー!」

「いや待て!ぎゃ!」

 俺は妹にアイアンクロー、右手で思いっきり頭を掴まれて、ギリギリと締め上げられる。

「いてぇ!いてててて!離せ!」

「待って、もうちょっと!良し、行ってきて!!」

 俺の望み通り、妹は手を離してくれたが、ついでに尻を蹴られた。

「うわっ!なにす……うわぁーーー!」

 俺の前には何も無かった。まるで崖の上から突き落とされたような形で俺は落ちてゆく、夢なのに!

「ぎゃーーー!あの馬鹿妹ぉーー!ぐきゃっ!」

 ドズン!と尻から着地して、尻が割れるかと思ったが、そこは一面銀色の砂に覆われた場所だった。

「なんじゃこりゃ?」

 辺りを見回しても砂、砂、砂。砂しかない。銀の砂と言えば消えたジェリフしかないが。

「ま、まさかこの砂の中からジェリフを探せって言うんじゃないだろうな!」

《せいかーい!大丈夫よ!お兄ちゃんにはお尻があるじゃない!》

 大体の人に尻はあると思いますが。

《ほら、お尻撫でたさでもう右手が集まってきたじゃん》

「は?!」

 尻周りの砂地を見ると、砂地からにょっきり人の手が生えていて、俺の尻を撫でている!ひぃ!普通に怖い!そしてくすぐったい!

「ま、待て!お前ら砂から手だけ復活させて尻を撫で回す奴が推しなのか?!10年も泣き暮らした推しがこんなのなのか!?」

《顔が良い》

「は……」

《ジェリフは、顔が良い。それが、全て》

 馬鹿みたいに神々しい声が響き渡りやがった!

《どんぶり飯3杯はいける顔!それがジェリフよ!お兄ちゃん!!》

「意味が、意味がわからーーん!」

 俺は叫んでみたが、砂から生えた手は尻を撫で回すし、妹の高笑いは聞こえるしで有耶無耶になってしまっていた。

 あの妹のアイアンクローが、俺の中から、あの記憶だけをすっぽり抜き出していた事に全く気が付かなかったんだ。



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