百合綴り『それで、いい』~美月と紗良~

大山田

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第二十二話:サイコロのお告げ

 朝の光が差し込むホテルの部屋。
 美月は、ふかふかのベッドの上で、観光案内所でもらったパンフレットを広げた。
 街の地図、観光スポット、イベント情報……それは、まるで二人の新しい未来の地図のようだった。

「どうする? 自分で選ぶ? サイコロで選ぶ?」

 美月がそう尋ねると、紗良は少し考えた。その表情は、少し真剣で、しかしどこか楽しそうだった。

「サイコロで選ぶっ!」

 パンフレットには、ちょうどその日に開催される花火大会の情報が載っていた。

「花火、こい! 花火、こい!」

 紗良は、両手でサイコロを包み込むようにして振った。
 その祈るような仕草は、もう、何かに怯える「ひな鳥」ではなかった。
 自分の未来を、自分の力で切り開こうとする、小さな冒険者のようだった。

 コロコロ……
 小さなサイコロが、パンフレットの上を転がり、止まった目は「6」。

「六番……隣町の漁港だね」

 美月が言う。

「花火でもいいんだよ?」

 美月は、少しだけ花火への未練があった。
 しかし、紗良は首を振った。

「ダメ。サイコロはお告げだから」

 その言葉は、サイコロの目に運命や希望を見出そうとする、紗良の無邪気さから発せられた。
 美月は、その純粋さが自分の心を温かくすると同時に、少しだけ、怖くなった。この無邪気な信頼を、自分がいつか裏切ってしまうのではないかと。

「じゃあ、漁港に行こうか」

 荷物をまとめて、チェックアウト。
 駅のホームで電車を待ちながら、紗良は窓の外を見ていた。

「漁港って、魚の匂いするかな?」

「たぶんね。あと、潮の匂い」

「それも、ちょっと楽しみ」

 電車が来て、ふたりは乗り込む。
 窓の外を流れる知らない景色。
 ガタン、ゴトン、という電車の揺れが、二人の体を、子守唄のように優しく揺らしていた。

 知らない街へ。
 サイコロが導いた、次の場所へ。
 美月は、この旅がいつまでも終わらないことを、心の中で静かに願っていた。
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