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その夜のために
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木立をようやく抜けると、開けた視界に草原が見える。いつしか晴れていたはずの空は曇っていた。草原の向こうはなだらかな丘になっており、はるか向こうに掘り返された土の色がうっすらと見える。畑だろう、そう確信すると、俺は草原を畑に向かって駆ける。草を踏むのではなく蹴り飛ばすようにして、一面の緑を横断する。程なく走ったところで、彼らも、森から抜け出し、草原に降り立ち、こちらに向けて駆けてくる。着地の足音は数えて五つあった。草原に足を踏み入れてから弓矢は飛んではこなくなった。どうやら得物を換えたらしい。大方彼らは、目的こそ知らないものの、俺を取り逃がしたくはないのだろう。それまで一段として動いていた五人のうち左右に一人ずつが離れ、気取られぬよう回り込んでくるようだ。草原の中では足音は消す事はできるが、草の擦れる音はどうあっても消すことはできない。俺はその音を聞き、五人の位置をつかみつつ、囲まれぬように草原を動く。しかし、森の中では追うのがやっとであった彼らだが、どうやら草原を主戦場とする者どもであるらしい。森の中とは段違いの速さで、気がついたら横に並ばれてしまっていた。横目で見ると、左右にその二人の男が視界に映る。彼らはどちらも、緑色の外套に身を隠し、遠いのでよく見えないが、黒く平たい短剣を持っているようだ。このまま村に向かって進んだとしても、このように追いつかれてしまっては逃げようがない。
俺は覚悟を決めなければならなかった。そして、畑が、草原に程近い、丘の縁にたどり着くと、俺はそこで立ち止った。
「ハインリヒさん、どうして、ここで止まるんですか!」
少年は驚きのあまり叫んだ。それに対して私は、うるさい、お前には、もう関係のないことだ、とだけ返した。
そして、それまで抱きとめていた左腕の力を抜いて、少年が離れるのを待つ。
しかし、少年は俺から離れずに、しがみついたままだ。
「何をしている、彼らがそこまで迫ってきているのが、お前にも聞こえるだろう。」
そう言うが、少年はしがみついた姿勢のまま動かない。少しだが、その力が強まったようにすら感じられる。
「俺から離れろ、小僧。馬鹿なことはよせ。」
俺がそう声をかけると、少年はすすり泣き始めた。体を震わせるそのさまは、冬の寒さに凍えているようにも見える。
あの日、もし、俺が出会ってなければ、この少年は本当に死んでしまったのだろうか。
もし。もし俺とは、全く違う、人間の姿をした人間であったなら。
そして、人が当然持つであろう良心を持っているのであったなら。
この少年は救われていたのではなかったか。
黒い短剣は迫ってくるごとに、その剣に染み付いた臭いをより濃くしてゆく。
濃密な血の臭いである。その臭いが濃すぎるがゆえに、俺は彼らの位置が、見ずとも分かった。
「小僧。お前は若く、弱い。だからこそ、お前は生きなければならない。
弱い事は、それ自体は恥じる事ではない。乗り越えようとする気概が、人の定めを分けるのだ。
だから、生きろ。」
すすり泣く声の狭間に、嫌だ、と聞こえたような気がした。
少年は、朝には俺の外套を嫌っていたが、昨夜にはその中で眠りについていた。
出会った頃には、化け物呼ばわりする俺の顔も、最近は怒ると容赦なく攻撃するようになった。
炉辺で話す俺の話は、最初は彼にとって子守唄でしかなかっただろうが、最近は何か変わった様子を見せ始めた。
俺がこの姿になって、もう百年は経っただろうか。
一人で居るのは、もう慣れたが、それは心の部分を切り落としていただけなのだと、少年と暮らすうちに、気づいてしまった。
人と共に生きる事を、まだ幸福と思っている自分を昼には呪い殺したくなる一方で、夜になれば、炉辺で昔話をしている自分が居る。
今まで、この獣の身を呪って生きてきたのに、少年は俺の姿を受け入れてしまった。
そして、少年は、今、何が起ころうとしているのか、知っていても尚、俺から離れようはしないのだ。
その事が、余計俺の心を引き裂いた。
血の臭いは、すぐそこまで迫って来ていて、あと歩幅にして三歩有るか無いかである。
俺は決断して、しがみついた少年の肩を左手で掴み、そのまま引き剥がし、放り投げた。
そして、呆然とする少年に背中を向けると、三人の狩人が、こちらに駆けてきているのが見える。
背後の狩人は、やはり勝機と見て取ったのか、上段に構えて切りかかる。臭いで分かった。
身を翻し、鎧もないその脇腹に、まず回し蹴りを浴びせる。そして体制を崩した格好のそのまま、奥の草叢に蹴り込んだ。
そのとき、狩人の手から短剣がこぼれたので、それを拾い、またもや背後から襲う二人目の狩人の短剣を振り返りざまに受ける。
狩人の顔が見えた。まだ年若い男で、俺の顔を見ると肌の色が青白くなった。
隙を逃さず、開いた腹にまた蹴りを入れ、草叢に叩き込む。
駆け出してゆく足音が聞こえる。先ほど倒した狩人は、腹を蹴られた痛みにまだ呻いている。少年の足音が遠くなってゆく。もうあのような無垢なものには、きっと出会えないだろう。
だが、生きてさえ居てくれれば、俺はそれで良い。
「まず若い者を送ったか。」
少年の前では刀傷沙汰は避けてきたが、最後まで俺はそれを通した。
少年は丘を下って滑り落ちてゆく。そこから先は畑があり、村がある。
少年はどこかの家に拾われるだろう。
ああ、俺でなくとも良かったのだ。救われていたのは、彼ではなく、彼と共にいる俺一人だったのだ。
差し伸べる手さえあれば、少年はそれを取るだろう。
ただ、それだけの事だ。
残りの三人が、またも真ん中と左右に分かれて俺に向かってくる。
正面と左の男はそれなりに業を積んでいるが、右側の男は、それなりの手だれの雰囲気をしている。
三人はみな長剣を提げている。俺の手には血に染まった短剣一つ。
どう考えても部が悪い。
彼らが三方向から奇襲を仕掛けてきたとき、俺は暢気に、考えていた。
もし俺が死んだら、果たして彼らは、少年を追わずに止まるだろうか。
少年は、あのまま逃げて、生きてくれるだろうか。
俺のそばでなくていい。誰かのそばで、人間としての幸せとやらを手にしてくれるなら、俺は、もう十分だ。
俺はお前と出会って、変わったように思う。
よく喋るようになった。よく笑うようになった。
怒ることもあった。物思いに沈む事もあった。
そのようにして、昔のように、人間らしく在れた。
お前と出会ったことは、業罰ではなかった。
ただ俺が、その人間らしい幸せの中にずるずると居残っていたから、自ら背負った業罰が、やけに暗く、重く思えたのだ。
理解されず、容認されぬ。
どこに行けども安住できず、かつての同族に屠られることを恐れる。
その一方で、許されたいと言う子供じみた願いだけは、心の隅に残ってしまう。
怪物になりきれぬまま、怪物という役目を引き受けた、そのわが身の醜さ、浅ましさよ。
少し前までは当たり前であった事が、当たり前だとする事で耐えられないと叫ぶ自分を抑えていたことであった。
お前と出会って、それに気づいてしまった。
その一点では、お前と出会わなければ、良かったと思う。
ハインリヒさんは、ぼくを草むらに投げ飛ばすと、そのまま背後に迫った男に回し蹴りを浴びせる。ナイフを振り下ろされるよりも、その動きは早く、つむじ風が吹いたように見えた。一人目の男を蹴り倒し、そして続けて二人目の男の剣を受け、ひるんだ男を蹴り倒す。ハインリヒさんが、戦うところを、ぼくはこのとき初めて見た。ハインリヒさんが倒した二人の男が倒れている。一人はお腹を抱えてうずくまり、うめき声を上げている。もう一人は、失神したのか、声が聞こえない。すると、うめき声を上げている男が、おもむろにぼくの座り込んだ足に手を伸ばしてきた。ぼくは驚いたが、喉元まで迫り上がった声を押し殺して、立ち上がる。そして、ハインリヒさんの背中を見やる。
初めて出会ったときには、怪物にしか思えなかった。気を許せば食われてしまうだろう、とも考えた。しかし、いつまで経っても、この人はぼくを食おうとはせずに、かえって、ぼくに優しくするばかりで、それをどこか不気味に思ったりもした。しかし、時間が経つと共に、この人は、その行動に添った人であったことがだんだん分かってくる。面白くないくらい純朴な性格をしていることが分かってくると、ぼくは警戒するのも馬鹿らしくなった。そしてかえってこの人にちょっかいを出して、怒ったりしないだろうか、と探りを入れることを楽しみとした。その頃からだろう。ハインリヒさんの言葉がちゃんと聞こえるようになった。薄っぺらい言葉を並べて、人間らしく振舞っているようだったその声が、しっかりした意味を持って聞こえてくるようになったのだ。
この人は、姿はどうであれ、人間なんだ。そう実感した。
ハインリヒさんの背中は、今は、ひどく頼りなげに映る。曇り空のせいか、暗い影を落としているように見える。
その景色を目に収めて、ぼくは振り返り、草原の向こうに見える畑と村を見やる。ハインリヒさんの言葉を思い返す。生きろ、とそう言われた。ゆっくりと、足を一歩だけ、踏み出す。生きろ、という言葉をよすがにして一歩、また一歩と、歩き始める。足を踏み出すたびに、離れたくないという願いが、動こうとする心を引き裂く。
けれど、ぼくは生きろと言われたのだ。立ち止まる訳にはいかない。ぼくは、とうとうぼくの心の一部を、ハインリヒさんの傍に引きちぎって捨ててゆくことにした。そして、その痛みをかき消そうとするように、一目散に駆け出した。視界がすぐにかすんで見えなくなる。斜面に差し掛かると、ちょっとした段差で転んでしまう。それでも、立ち上がって、涙を拭って、走らなければならない。追っ手に捕まったりしたら、ハインリヒさんが作ってくれたチャンスが無駄になってしまう!
ハインリヒさんの言葉が、立ち止まろうとする心を、突き動かす。まるで、心臓がもう一つあるみたいに思える。まるで、ハインリヒさんの言葉が、もう一つの心臓になったみたいだ。ぼくの心臓が早鐘を打っていても、言葉が鼓動を生み出して、前に進ませてくれる。
それが不思議で、嬉しい反面、とても悲しかった。
畑のすぐそばまで来たとき、そこに畑を耕している人影が見えた。
駆け寄ってみると、顔を上げて、その人はこちらを見た。
どこか見覚えのある顔だった。男の人だ。
その人はぼくを見ると、呆然とした顔をして、時間が流れた。
ぼそり、とその人は言葉を呟く。
「ヤヌア」
そう聞こえた。すぐにその人はぼくに駆け寄ってくると、粋なりっ抱きしめてきて、その言葉をしきりに繰り返した。
どうやら、ヤヌア、というのは誰かの名前らしい。
聞き覚えがあるような、ないような。
ぼくには記憶がなかった。
あの冬の日の前からが、すっぽりと抜け落ちて、いる。
おじさん、誰、とぼくが言うと、お前の父親だ、と言った。
ぼくはそれを聞いて、またその人の顔を見たけれど、この人だとは思えない。
勘違いしているのだろう。
去ろうか、と思ったそのとき、男が声をかけてきた。
「一人できたのか。ここまで。」
ぼくは、ハインリヒさんの事を思い出さなければならなくなり、足元の地面が急に抜けたようなひどい気分になった。
何とか搾り出して、違うと答える。
「誰と来たんだ。」
男はまくし立てて言う。興奮しているようだ。
ハインリヒさん、と何とか搾り出す。嘘は言いたくなかった。あの人が他人だなんて、嘘でも口にしたくなかった。
すると、男は奇妙な事を口にした。
「今どこにいる、御礼をしなくては。」
疲れていたはずの心臓がひときわ大きく高鳴った。
それから、置き去りにしてきた気持ちがよみがえってくる。
ぼくは自分でぼろぼろと涙を流しているのを気づいていたが、拭うことをしなかった。
それよりも、伝えるべき事が山ほどあったのだ。
俺は三つの方向から振り下ろされる刃を、右の刃を短剣で受けたが、それ以外は何もできずに受けた。
一つは胸を、一つは肩を深くえぐった。
そして、俺は力なく、草むらに倒れる。倒れた衝撃だけで意識がなくなってしまいそうになった。それだけ傷が深いのだろう。
体が冷えてゆく。命がその炎を弱めてゆく。望みも、欲望も、絶望も、それらがすべて、草原に赤く流れてゆく。
この光景は、どこかで見たことがある。そう思いを切れそうになる意識の中働かせようとすると、手だれの右の男が口を開いた。
「お前のせいで、われわれの村は、荒らされ、すむものもいなくなり、このように盗賊まがいのことをする羽目になったのだ。
魔物よ。お前の主に伝えるがよい。われわれはお前を必ず冥府に送ってやる、と。」
「何だ、それは。」
とっさに、声が出てしまう。口を動かし声に出す事が、これほど命を費やすとは、思わなかった。しかし、か細い言葉でも、男は聞き届けたらしい。
恐ろしい事を聞いたらしく、その声は震えていた。自分の刃に正義を乗せて陶酔した者ほど、狼狽える姿は目も当てられない。
痛みというものの後には、冷たい眠りが待っているようで、俺は次第に眠くなり、男の言葉も良く聞こえなくなった。
眠りに入ろう。俺はそう願った。これ以上、体から伝わる痛みに耐えるのは、消えゆく意識を恐れるのは、叶わなかった願いを描くのは、できない。
果てのない旅路に、魂が、疲れたのだ。
報われない事に、心が、耐えられなくなったのだ。
夢の中ならば、せめて、もう少し、救いのある景色が見たいものだ。
匂いがする。血と,草と、汗の臭いを濃縮したような、それは、少年の嫌がる臭いだ。
慣れたはずの臭いだ。けれど、我慢ならない臭いだ。この臭いには、目的はない。
自然にそうなり、後で効果が付属されたに過ぎない。これは、ともすれば、俺の臭いだ。
自分でも、我慢が利かないときがある。今は、その時であった。
あまりの臭さに、目を開く。
やけに狭い。
草の緑が見えない。
そして、壁がある。
ここは、誰かの家の中、だろうか。
視線を横にずらそうとすると、近くに暖炉の火が燃えているのが分かった。
俺は、なぜかベットに寝かされている。ご丁寧に枕も、布団さえ掛けてある。悪い冗談だと思った。まだ、夢の中なのだろうか。さすがに、このような夢を最後に見ようとは、我ながら、あきれたものだ。
誰の家なのだろう、と視線を這わせていると、どこからか、寝息が聞こえる。
少年の寝息だと、すぐに分かった。
ふと、ドアをノックして、誰かが入ってきた。
誰だ、と言うと、気がつきましたか、と返してきた。
声は男であった。
見えにくいなら暖炉に行きましょう、と言って、その男は暖炉の前の椅子に座った。
暖炉の炎に照らされた男の顔はどこか、少年の顔に少し似ている。
「私は、ハヌアと言います。ヤヌアの父です。」
少年の名前が、ヤヌアと言うのか、と聞くと、男は、ええ、と答えた。
本物の父親と言う存在に、出会う事になろうとは、考えもしなかった。夢であるために、都合の良い妄念が形を得たのやもしれぬ。
体を起こそうとすると、男があわてて制止する。
傷が開いてしまう、と言った。
布団を剥がして中を見ると、刀傷を受けた胸と肩に丁寧に包帯が巻かれていた。傷を見た途端、思い出したように痛みが稲妻のように走り、私はこれが現実であることを認識する。
なぜ、ここまでする、と聞くと、恩義ですから、と男は答えた。
「ヤヌアの恩義です。礼を言うなら、ヤヌアに言ってやってください。彼が、あなたを恩ある人と言ったから、私はそのようにしたのです。」
「俺が、恐ろしくはないのか。」
「恐ろしくないと言えば嘘になります。けれども、現に息子が帰ってきた以上、その返礼をしなくては、一人の親として示しがつかない、というものでしょう。」
俺は、まだ、狩人たちの追撃を頭の中にまざまざと思い返す事ができる。それと、目の前のこの男は、まるで別の世界の人間に思えた。
俺は、再び、体を起こそうとする。ハヌアと言う男の静止を聞かず、自由な片腕を使って何とか上半身だけ起き上がる。
少年は、顔や腕にいくつもの切り傷や擦り傷をつけている。草原で転んだのだろうか。
そして、俺の右手をしっかりと握ったまま、足元に倒れるようにして眠っている。
その頭を、撫でてやる。力任せに、ではなく、起こさないように注意しながら。
「ありがとうよ、ヤヌア。」
結局、俺はそう言うことしかできなかった。
後の言葉は、流れ始めた涙にさらわれて消えてしまったからだ。
「死んでもいい、と言ったのです。ヤヌアは」
ハヌアは、そう言って席を立つ。
「あなたのためなら、たとえ凍え死んでしまってもかまわない。
生きていたって、楽しくない。あなたが、生きる事を教えてくれたんだ、と。
あなたが、草むらに倒れていたとき、ヤヌアはずいぶん泣きました。虫の息で、私はもう助からないと言いました。ヤヌアは、それでもあなたを助けようと昼も夜も村中を走って、初めて会う村人たちに、涙ながらに叫び、包帯と薬を集めたのです。
ヤヌアがそうまでして助けたい人ならば、どうして私は傍観していられましょう。」
ハヌアは、こう言い残して部屋から去っていった。
「あなたは、必要とされているのですよ。そのことに自覚を持ったらどうです。ハインリヒさん。」
俺は、暖炉を見やる。
そこには、普段の焚き火よりの大きな火が燃えている。
使われる薪は太く、質も高いのだろう。
「どれ、一つ、昔話をしてやろう。
遠い遠い、百年前の事だ。」
俺は昔話を語り始める。ヤヌアはもう深い眠りについていて、静かに寝息を立てている。
俺は、語ることがあまり得意ではない。
だが、次はヤヌアを寝かせないようにするつもりだ。
明日、ヤヌアが目覚めた、その夜を、退屈なものにしてはならない。
俺はいつになく意気込んでいた。
俺は覚悟を決めなければならなかった。そして、畑が、草原に程近い、丘の縁にたどり着くと、俺はそこで立ち止った。
「ハインリヒさん、どうして、ここで止まるんですか!」
少年は驚きのあまり叫んだ。それに対して私は、うるさい、お前には、もう関係のないことだ、とだけ返した。
そして、それまで抱きとめていた左腕の力を抜いて、少年が離れるのを待つ。
しかし、少年は俺から離れずに、しがみついたままだ。
「何をしている、彼らがそこまで迫ってきているのが、お前にも聞こえるだろう。」
そう言うが、少年はしがみついた姿勢のまま動かない。少しだが、その力が強まったようにすら感じられる。
「俺から離れろ、小僧。馬鹿なことはよせ。」
俺がそう声をかけると、少年はすすり泣き始めた。体を震わせるそのさまは、冬の寒さに凍えているようにも見える。
あの日、もし、俺が出会ってなければ、この少年は本当に死んでしまったのだろうか。
もし。もし俺とは、全く違う、人間の姿をした人間であったなら。
そして、人が当然持つであろう良心を持っているのであったなら。
この少年は救われていたのではなかったか。
黒い短剣は迫ってくるごとに、その剣に染み付いた臭いをより濃くしてゆく。
濃密な血の臭いである。その臭いが濃すぎるがゆえに、俺は彼らの位置が、見ずとも分かった。
「小僧。お前は若く、弱い。だからこそ、お前は生きなければならない。
弱い事は、それ自体は恥じる事ではない。乗り越えようとする気概が、人の定めを分けるのだ。
だから、生きろ。」
すすり泣く声の狭間に、嫌だ、と聞こえたような気がした。
少年は、朝には俺の外套を嫌っていたが、昨夜にはその中で眠りについていた。
出会った頃には、化け物呼ばわりする俺の顔も、最近は怒ると容赦なく攻撃するようになった。
炉辺で話す俺の話は、最初は彼にとって子守唄でしかなかっただろうが、最近は何か変わった様子を見せ始めた。
俺がこの姿になって、もう百年は経っただろうか。
一人で居るのは、もう慣れたが、それは心の部分を切り落としていただけなのだと、少年と暮らすうちに、気づいてしまった。
人と共に生きる事を、まだ幸福と思っている自分を昼には呪い殺したくなる一方で、夜になれば、炉辺で昔話をしている自分が居る。
今まで、この獣の身を呪って生きてきたのに、少年は俺の姿を受け入れてしまった。
そして、少年は、今、何が起ころうとしているのか、知っていても尚、俺から離れようはしないのだ。
その事が、余計俺の心を引き裂いた。
血の臭いは、すぐそこまで迫って来ていて、あと歩幅にして三歩有るか無いかである。
俺は決断して、しがみついた少年の肩を左手で掴み、そのまま引き剥がし、放り投げた。
そして、呆然とする少年に背中を向けると、三人の狩人が、こちらに駆けてきているのが見える。
背後の狩人は、やはり勝機と見て取ったのか、上段に構えて切りかかる。臭いで分かった。
身を翻し、鎧もないその脇腹に、まず回し蹴りを浴びせる。そして体制を崩した格好のそのまま、奥の草叢に蹴り込んだ。
そのとき、狩人の手から短剣がこぼれたので、それを拾い、またもや背後から襲う二人目の狩人の短剣を振り返りざまに受ける。
狩人の顔が見えた。まだ年若い男で、俺の顔を見ると肌の色が青白くなった。
隙を逃さず、開いた腹にまた蹴りを入れ、草叢に叩き込む。
駆け出してゆく足音が聞こえる。先ほど倒した狩人は、腹を蹴られた痛みにまだ呻いている。少年の足音が遠くなってゆく。もうあのような無垢なものには、きっと出会えないだろう。
だが、生きてさえ居てくれれば、俺はそれで良い。
「まず若い者を送ったか。」
少年の前では刀傷沙汰は避けてきたが、最後まで俺はそれを通した。
少年は丘を下って滑り落ちてゆく。そこから先は畑があり、村がある。
少年はどこかの家に拾われるだろう。
ああ、俺でなくとも良かったのだ。救われていたのは、彼ではなく、彼と共にいる俺一人だったのだ。
差し伸べる手さえあれば、少年はそれを取るだろう。
ただ、それだけの事だ。
残りの三人が、またも真ん中と左右に分かれて俺に向かってくる。
正面と左の男はそれなりに業を積んでいるが、右側の男は、それなりの手だれの雰囲気をしている。
三人はみな長剣を提げている。俺の手には血に染まった短剣一つ。
どう考えても部が悪い。
彼らが三方向から奇襲を仕掛けてきたとき、俺は暢気に、考えていた。
もし俺が死んだら、果たして彼らは、少年を追わずに止まるだろうか。
少年は、あのまま逃げて、生きてくれるだろうか。
俺のそばでなくていい。誰かのそばで、人間としての幸せとやらを手にしてくれるなら、俺は、もう十分だ。
俺はお前と出会って、変わったように思う。
よく喋るようになった。よく笑うようになった。
怒ることもあった。物思いに沈む事もあった。
そのようにして、昔のように、人間らしく在れた。
お前と出会ったことは、業罰ではなかった。
ただ俺が、その人間らしい幸せの中にずるずると居残っていたから、自ら背負った業罰が、やけに暗く、重く思えたのだ。
理解されず、容認されぬ。
どこに行けども安住できず、かつての同族に屠られることを恐れる。
その一方で、許されたいと言う子供じみた願いだけは、心の隅に残ってしまう。
怪物になりきれぬまま、怪物という役目を引き受けた、そのわが身の醜さ、浅ましさよ。
少し前までは当たり前であった事が、当たり前だとする事で耐えられないと叫ぶ自分を抑えていたことであった。
お前と出会って、それに気づいてしまった。
その一点では、お前と出会わなければ、良かったと思う。
ハインリヒさんは、ぼくを草むらに投げ飛ばすと、そのまま背後に迫った男に回し蹴りを浴びせる。ナイフを振り下ろされるよりも、その動きは早く、つむじ風が吹いたように見えた。一人目の男を蹴り倒し、そして続けて二人目の男の剣を受け、ひるんだ男を蹴り倒す。ハインリヒさんが、戦うところを、ぼくはこのとき初めて見た。ハインリヒさんが倒した二人の男が倒れている。一人はお腹を抱えてうずくまり、うめき声を上げている。もう一人は、失神したのか、声が聞こえない。すると、うめき声を上げている男が、おもむろにぼくの座り込んだ足に手を伸ばしてきた。ぼくは驚いたが、喉元まで迫り上がった声を押し殺して、立ち上がる。そして、ハインリヒさんの背中を見やる。
初めて出会ったときには、怪物にしか思えなかった。気を許せば食われてしまうだろう、とも考えた。しかし、いつまで経っても、この人はぼくを食おうとはせずに、かえって、ぼくに優しくするばかりで、それをどこか不気味に思ったりもした。しかし、時間が経つと共に、この人は、その行動に添った人であったことがだんだん分かってくる。面白くないくらい純朴な性格をしていることが分かってくると、ぼくは警戒するのも馬鹿らしくなった。そしてかえってこの人にちょっかいを出して、怒ったりしないだろうか、と探りを入れることを楽しみとした。その頃からだろう。ハインリヒさんの言葉がちゃんと聞こえるようになった。薄っぺらい言葉を並べて、人間らしく振舞っているようだったその声が、しっかりした意味を持って聞こえてくるようになったのだ。
この人は、姿はどうであれ、人間なんだ。そう実感した。
ハインリヒさんの背中は、今は、ひどく頼りなげに映る。曇り空のせいか、暗い影を落としているように見える。
その景色を目に収めて、ぼくは振り返り、草原の向こうに見える畑と村を見やる。ハインリヒさんの言葉を思い返す。生きろ、とそう言われた。ゆっくりと、足を一歩だけ、踏み出す。生きろ、という言葉をよすがにして一歩、また一歩と、歩き始める。足を踏み出すたびに、離れたくないという願いが、動こうとする心を引き裂く。
けれど、ぼくは生きろと言われたのだ。立ち止まる訳にはいかない。ぼくは、とうとうぼくの心の一部を、ハインリヒさんの傍に引きちぎって捨ててゆくことにした。そして、その痛みをかき消そうとするように、一目散に駆け出した。視界がすぐにかすんで見えなくなる。斜面に差し掛かると、ちょっとした段差で転んでしまう。それでも、立ち上がって、涙を拭って、走らなければならない。追っ手に捕まったりしたら、ハインリヒさんが作ってくれたチャンスが無駄になってしまう!
ハインリヒさんの言葉が、立ち止まろうとする心を、突き動かす。まるで、心臓がもう一つあるみたいに思える。まるで、ハインリヒさんの言葉が、もう一つの心臓になったみたいだ。ぼくの心臓が早鐘を打っていても、言葉が鼓動を生み出して、前に進ませてくれる。
それが不思議で、嬉しい反面、とても悲しかった。
畑のすぐそばまで来たとき、そこに畑を耕している人影が見えた。
駆け寄ってみると、顔を上げて、その人はこちらを見た。
どこか見覚えのある顔だった。男の人だ。
その人はぼくを見ると、呆然とした顔をして、時間が流れた。
ぼそり、とその人は言葉を呟く。
「ヤヌア」
そう聞こえた。すぐにその人はぼくに駆け寄ってくると、粋なりっ抱きしめてきて、その言葉をしきりに繰り返した。
どうやら、ヤヌア、というのは誰かの名前らしい。
聞き覚えがあるような、ないような。
ぼくには記憶がなかった。
あの冬の日の前からが、すっぽりと抜け落ちて、いる。
おじさん、誰、とぼくが言うと、お前の父親だ、と言った。
ぼくはそれを聞いて、またその人の顔を見たけれど、この人だとは思えない。
勘違いしているのだろう。
去ろうか、と思ったそのとき、男が声をかけてきた。
「一人できたのか。ここまで。」
ぼくは、ハインリヒさんの事を思い出さなければならなくなり、足元の地面が急に抜けたようなひどい気分になった。
何とか搾り出して、違うと答える。
「誰と来たんだ。」
男はまくし立てて言う。興奮しているようだ。
ハインリヒさん、と何とか搾り出す。嘘は言いたくなかった。あの人が他人だなんて、嘘でも口にしたくなかった。
すると、男は奇妙な事を口にした。
「今どこにいる、御礼をしなくては。」
疲れていたはずの心臓がひときわ大きく高鳴った。
それから、置き去りにしてきた気持ちがよみがえってくる。
ぼくは自分でぼろぼろと涙を流しているのを気づいていたが、拭うことをしなかった。
それよりも、伝えるべき事が山ほどあったのだ。
俺は三つの方向から振り下ろされる刃を、右の刃を短剣で受けたが、それ以外は何もできずに受けた。
一つは胸を、一つは肩を深くえぐった。
そして、俺は力なく、草むらに倒れる。倒れた衝撃だけで意識がなくなってしまいそうになった。それだけ傷が深いのだろう。
体が冷えてゆく。命がその炎を弱めてゆく。望みも、欲望も、絶望も、それらがすべて、草原に赤く流れてゆく。
この光景は、どこかで見たことがある。そう思いを切れそうになる意識の中働かせようとすると、手だれの右の男が口を開いた。
「お前のせいで、われわれの村は、荒らされ、すむものもいなくなり、このように盗賊まがいのことをする羽目になったのだ。
魔物よ。お前の主に伝えるがよい。われわれはお前を必ず冥府に送ってやる、と。」
「何だ、それは。」
とっさに、声が出てしまう。口を動かし声に出す事が、これほど命を費やすとは、思わなかった。しかし、か細い言葉でも、男は聞き届けたらしい。
恐ろしい事を聞いたらしく、その声は震えていた。自分の刃に正義を乗せて陶酔した者ほど、狼狽える姿は目も当てられない。
痛みというものの後には、冷たい眠りが待っているようで、俺は次第に眠くなり、男の言葉も良く聞こえなくなった。
眠りに入ろう。俺はそう願った。これ以上、体から伝わる痛みに耐えるのは、消えゆく意識を恐れるのは、叶わなかった願いを描くのは、できない。
果てのない旅路に、魂が、疲れたのだ。
報われない事に、心が、耐えられなくなったのだ。
夢の中ならば、せめて、もう少し、救いのある景色が見たいものだ。
匂いがする。血と,草と、汗の臭いを濃縮したような、それは、少年の嫌がる臭いだ。
慣れたはずの臭いだ。けれど、我慢ならない臭いだ。この臭いには、目的はない。
自然にそうなり、後で効果が付属されたに過ぎない。これは、ともすれば、俺の臭いだ。
自分でも、我慢が利かないときがある。今は、その時であった。
あまりの臭さに、目を開く。
やけに狭い。
草の緑が見えない。
そして、壁がある。
ここは、誰かの家の中、だろうか。
視線を横にずらそうとすると、近くに暖炉の火が燃えているのが分かった。
俺は、なぜかベットに寝かされている。ご丁寧に枕も、布団さえ掛けてある。悪い冗談だと思った。まだ、夢の中なのだろうか。さすがに、このような夢を最後に見ようとは、我ながら、あきれたものだ。
誰の家なのだろう、と視線を這わせていると、どこからか、寝息が聞こえる。
少年の寝息だと、すぐに分かった。
ふと、ドアをノックして、誰かが入ってきた。
誰だ、と言うと、気がつきましたか、と返してきた。
声は男であった。
見えにくいなら暖炉に行きましょう、と言って、その男は暖炉の前の椅子に座った。
暖炉の炎に照らされた男の顔はどこか、少年の顔に少し似ている。
「私は、ハヌアと言います。ヤヌアの父です。」
少年の名前が、ヤヌアと言うのか、と聞くと、男は、ええ、と答えた。
本物の父親と言う存在に、出会う事になろうとは、考えもしなかった。夢であるために、都合の良い妄念が形を得たのやもしれぬ。
体を起こそうとすると、男があわてて制止する。
傷が開いてしまう、と言った。
布団を剥がして中を見ると、刀傷を受けた胸と肩に丁寧に包帯が巻かれていた。傷を見た途端、思い出したように痛みが稲妻のように走り、私はこれが現実であることを認識する。
なぜ、ここまでする、と聞くと、恩義ですから、と男は答えた。
「ヤヌアの恩義です。礼を言うなら、ヤヌアに言ってやってください。彼が、あなたを恩ある人と言ったから、私はそのようにしたのです。」
「俺が、恐ろしくはないのか。」
「恐ろしくないと言えば嘘になります。けれども、現に息子が帰ってきた以上、その返礼をしなくては、一人の親として示しがつかない、というものでしょう。」
俺は、まだ、狩人たちの追撃を頭の中にまざまざと思い返す事ができる。それと、目の前のこの男は、まるで別の世界の人間に思えた。
俺は、再び、体を起こそうとする。ハヌアと言う男の静止を聞かず、自由な片腕を使って何とか上半身だけ起き上がる。
少年は、顔や腕にいくつもの切り傷や擦り傷をつけている。草原で転んだのだろうか。
そして、俺の右手をしっかりと握ったまま、足元に倒れるようにして眠っている。
その頭を、撫でてやる。力任せに、ではなく、起こさないように注意しながら。
「ありがとうよ、ヤヌア。」
結局、俺はそう言うことしかできなかった。
後の言葉は、流れ始めた涙にさらわれて消えてしまったからだ。
「死んでもいい、と言ったのです。ヤヌアは」
ハヌアは、そう言って席を立つ。
「あなたのためなら、たとえ凍え死んでしまってもかまわない。
生きていたって、楽しくない。あなたが、生きる事を教えてくれたんだ、と。
あなたが、草むらに倒れていたとき、ヤヌアはずいぶん泣きました。虫の息で、私はもう助からないと言いました。ヤヌアは、それでもあなたを助けようと昼も夜も村中を走って、初めて会う村人たちに、涙ながらに叫び、包帯と薬を集めたのです。
ヤヌアがそうまでして助けたい人ならば、どうして私は傍観していられましょう。」
ハヌアは、こう言い残して部屋から去っていった。
「あなたは、必要とされているのですよ。そのことに自覚を持ったらどうです。ハインリヒさん。」
俺は、暖炉を見やる。
そこには、普段の焚き火よりの大きな火が燃えている。
使われる薪は太く、質も高いのだろう。
「どれ、一つ、昔話をしてやろう。
遠い遠い、百年前の事だ。」
俺は昔話を語り始める。ヤヌアはもう深い眠りについていて、静かに寝息を立てている。
俺は、語ることがあまり得意ではない。
だが、次はヤヌアを寝かせないようにするつもりだ。
明日、ヤヌアが目覚めた、その夜を、退屈なものにしてはならない。
俺はいつになく意気込んでいた。
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