【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華

文字の大きさ
28 / 28

こういうことになりました

しおりを挟む
 ナムーリ国の者は捕らえられた。

 私は王宮にくるように言われたが面倒なので屋敷に戻っている。
 どうやらこの茶番劇のシナリオを書いたのは陛下らしい。父は片棒を担いだ訳ね。長い物には巻かれなきゃならないから仕方ないけど、娘を囮にってどういう訳なの?

 屋敷に戻ると母の声が聞こえていた。
「離縁しますわ。実の娘を囮にするような血も涙もないような人と一緒には暮らせません」
 母はいつも穏やかなだけに怒ったら怖い。父はきっと土下座でもしているんだろうと思い部屋に入るとまさに土下座中だった。
「お母様、離縁などしなくても大丈夫ですわ。私はこのとおりピンピンしております」
 母は涙目で私に抱きついてきた。
「ヴィヴィ~。良かった~」
 私は絶賛土下座中の父に上から話しかけた。
「お父様、囮にするなら最初から言っておいて下さいませ」
「ヴィヴィ、すまない。ヴィヴィを誘拐すると情報が急に入ってきたんだ」
「メイドや騎士を入れ替える時間があるなら私に話ができたはずです」
 私は父を見下ろしたままで話を続けた。
「王太子の婚約者になったばっかりにこんな目にあうのなら、もう結婚はいたしません」
 そう吐き捨てるように言い、自分の部屋に引きこもった。

 その頃、王宮では国王陛下が父と同じ目にあっていたらしい。国王陛下は王妃様とアイク様から責め立てられ、やはり父と同じように土下座していたそうだ。


 あれから5年経った。私は大公妃として、ぐーたら暮らしている。

 あの後、私はアイク様が囮計画を知らなかったと知った。アイク様は自分が王太子だったことで私を危険な目に合わせたことで心を痛めたらしい。そして自分に何も知らせなかったことに対して怒り、国王になってもそんな家臣と一緒に国を治めることなどできないと王太子を辞めた。

 国王陛下や宰相の父は必死で止めたが、アイク様は意外と強情で周りの声を一切聞かなかった。
 まぁ、でも王妃様は味方で、アイク様が廃嫡したあとの事を全て取り仕切り片付けてくれた。
 そして、アイク様に代わって王弟殿下が王太子となった。もちろん国王の器ではないので王妃様の傀儡の国王になる。フィル兄様はあの時の罰なのか? 新王太子の側近として毎日こき使われている。
 王太子妃にはナムーリ国の第3王女のエリザベス様に落ち着いた。エリザベス様は王弟殿下のちょっと歪んだ寵愛を受けてはいたが、特に迫害されたり、傷つけられたり、薬や魔法で精神がおかしくなっているわけではないので表に出すことになったそうだ。

 私たちの結婚式は王弟殿下とエリザベス様にお譲りする事になった。
 エリザベス様は他国の王女なので王妃教育はいらないかと思ったが、王妃様が納得できるレベルではなかったので朝から夕方まで王妃教育でしごかれ、夕方から朝までは王弟殿下にご寵愛されているのでヘトヘトだったが、今はなんとか王太子妃としてがんばっている。
 しかし、公の場に出る時以外は、足元には足枷、首には首輪がつけられている。王弟殿下の趣味なのだろう。


「ヴィー、またここにいたのか? 風邪をひくよ」
「おかあさま、かぜひきましゅよ」
 大公邸の中庭のガゼボで本を読んでいた私をアイク様と息子のフランが呼びにきた。
 あの時、王太子を返上したアイク様は大公になった。結婚する気などもうなかったが、大公妃は王太子妃とは違いぐうたらできると両親や国王陛下、王妃様に説得された。今は最低限の社交の場に顔を出せばいいだけだ。
 結婚してからは前世の記憶をフル回転し、色んな情報をアイク様に伝えて、大公家の領地や経営する商会に貢献して繁栄の一端をになっている。
 私はちょこちょこ口を出すだけ、あとはのんびりゴロゴロしている。

 いっときは王太子妃になり、また忙しい日々をおくることを受け入たが、やっぱりぐうたらできる生活ができてよかったなぁと、今ではナムーリ国の皆さんに感謝している。
 もちろんその後、エリザベス様とも仲良くしている。愛されすぎているエリザベス様を見ていると気の毒になるが、まぁうちも見る人が見るとあまり変わらないらしい。
 大公様は奥様を溺愛するせいでお屋敷に閉じ込めていて、表にださないと噂されている。その噂のおかげでぐうたらできているので有難や有難やだ。
 
 今思えば、デビュタントの一年は本当に濃い一年だった。あれがあったから今があると言っても過言ではない。
 アイク様は良き夫であり、良き父だ。もうすぐふたり目の子供も生まれる。
 だれも私をぐうたら大公妃などとは思わないだろう。

 私はこれからも私らしくぐうたら生きていきたい。もちろんただのぐうたらではなく、ちゃんとやることはやっているぐうたら大公妃としてね。

〈了〉
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜
恋愛
 ここセントール王国には一風変わった習慣がある。  それは王太子の婚約者、ひいては未来の王妃となるべく女性を決める際、何人かの選ばれし令嬢達を一同に集めて合宿のようなものを行い、合宿中の振る舞いや人間関係に対する対応などを見極めて判断を下すというものである。  要は選考試験のようなものだが、かといってこれといった課題を出されるという訳では無い。あくまでも令嬢達の普段の行動を観察し、記録し、判定を下すというシステムになっている。  そんな選ばれた令嬢達が集まる中、一人だけ場違いな令嬢が居た。彼女は他の候補者達の観察に徹しているのだ。どうしてそんなことをしているのかと尋ねられたその令嬢は、 「お構い無く。私は王妃の座なんか微塵も興味有りませんので。ここには野次馬として来ました」  と言い放ったのだった。  少し長くなって来たので短編から長編に変更しました。

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...